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第20章:水面下の炎 (Fire Beneath the Surface)

拍手が鳴り止んだ。ダグラス王が演壇から降りる。


だが、一組の視線だけがそこから動かなかった。


火のマスターであるグウェン(Gwen)。彼は、自分の望む結果を得られず、次にどう報復してやろうかと思案している男特有の、射抜くような鋭い眼差しでモトを直視していた。名前を呼ばれた時の胸の高鳴りが、モトの中で急速に冷えていく。


周囲を見回す。火の生徒たちもまた、彼を睨みつけていた。好奇心の目ではない。別の種類のものだ。細められた目。寄った眉間。声なき重圧が、群衆の中からモトを押し潰すように迫ってくる。


ザバァッ。

彼らの間に、水の壁がそびえ立った。


ムカイが壁の後ろで腕を組んでいた。「大人しくしろ」


ざわめきが止む。群衆は文句を垂れながらも後退した。大半の者は、王子に逆らう気はなかったからだ。大半の者は。


火の監督生、ジェイソン(Jason)が前へ出た。彼が片手を上げると、水の壁はジュッと音を立てて蒸気を吹き出し、数秒で完全に蒸発した。彼はそのまま歩みを進め、ムカイの鼻先まで詰め寄った。その声は、刃のように滑らかで鋭かった。


「親父さんに頼み込んで、お友達に枠を恵んでやってるのか? いいご身分だな」


それは正確に的を射抜いた。モトだけでなく、ムカイ自身に対しても。果たして彼らのうちの誰か一人でも、自らの実力で何かを勝ち取った者がいるのかという問い。ムカイの体が硬直し、顎がギリッとこわばる。


「そこまでだ」ジャンボ先生の声が広場を横切った。この手のいざこざなど見飽きている人間の権威で、歩み寄ってくる。「王の演壇の前で、監督生がいがみ合うなど言語道断だ」


ジェイソンはニヤリと笑って両手を挙げ、後ろへ下がった。ムカイはもう一瞬だけその場に踏みとどまり、やがて構えを解いた。


群衆が散り始める。


モトは、さほど遠くへ行く前にムカイに追いついた。「おい」一拍。「サンキューな。さっきの」


ムカイは目を逸らした。「父上の間違いだ。私から話をつけておく」


「やめろ」


その言葉の鋭さに驚き、ムカイが振り返る。


モトは彼の目を真っ直ぐに見返した。静かで、演技が一切ない視線。「これは、俺がここにいる資格を証明するための、一生に一度のチャンスなんだ。誰にも奪わせる気はない」モトは手を伸ばし、ムカイが再び背を向ける前にその手首を掴んだ。予想以上に力強い握りだった。「喧嘩の話をしてるんじゃない。王様は俺に、居場所を勝ち取るチャンスをくれたんだ。俺は絶対に引かない。お前が助けてくれるならありがたいが――お前にも、俺を止める権利はないぞ」


ムカイは長い間、モトを見つめた。モトの顔にある確信は、反論を許さない類のものだった。そもそも、反論など求めていなかったからだ。


「……悪くない演説だ」やがて彼は言った。その口角に、冷笑のわずか手前のようなものが浮かぶ。「だが、お前の対戦相手は短気で有名だぞ。その枠は本来、この学校の歴史上でもトップクラスの火炎耐性を持つ、彼のお気に入りの生徒に与えられるはずだったんだ」ムカイは一呼吸置いた。「お前は火の能力すら持っていない。あの試合に足を踏み入れれば、生きては出られないかもしれないぞ」


「随分とあいつに詳しいんだな」とモト。「だったら、俺とシェウの特訓に付き合えよ。残りの心配は俺がする」


その後に続いた沈黙には、確かな重みがあった。


そして、ムカイは頷いた。一度だけ、小さく、ほんの少し不本意そうに。「……分かった。これで貸し借りなしだ」


モトはニヤリと笑った。「乗ったぜ(Bet)」


モトが立ち去ろうと振り返る。その背中にムカイの声が飛んだ。「明日。朝五時。私の家だ」


モトは振り返らずに、気怠げに片手を上げた。「ああ。遅れるなよ」


ダグラス王は城の廊下を足早に進んでいた。アリトリがその歩調に合わせる。


デンガからの伝令が届いていた。マナセ王(King Manasseh)が帰還するという。予定より早い。それはつまり、彼の信頼を得るための繊細な工作が極めて順調に進んだか、あるいは、ダグラスがまだ知らされていない『何らかの変化』が起きたかのどちらかを意味していた。


「準備を始めよ」ダグラスは歩みを緩めずに言った。「彼は『継承の儀』の翌日に到着する。万事抜かりなく手配しろ」


作戦会議室では、グウェンが腕を組み、特定のどこを見るでもなく立ち尽くしていた。顎をこわばらせている。彼を取り巻く沈黙が、何よりも雄弁に彼の怒りを語っていた。


「なぜ、私の生徒を選ばなかったのですか」低く、抑制された声。怒鳴られるよりもずっと性質たちが悪い。「一割の力であったとしても、あの学校に私の生徒と比較になる者など一人もいないというのに」


「力だけの問題ではない」ダグラスは言った。「それから、忠告しておくぞ――やりすぎるなよ」


グウェンは何も答えなかった。視線を前に向けたまま、唇を一文字に固く結んでいる。


彼は、決して笑わなかった。


モトが到着する頃には、シェウの家の明かりは長く伸びた琥珀色に変わり、一日の終わりを告げようとしていた。彼女は昨日と同じ場所に座り、写真を見下ろしている。何度も手に取り、置き、また手に取ったことで、その縁はすでに擦り切れかけていた。


彼は静かに入室し、彼女の隣に座った。寄り添いつつも、彼女のスペースは奪わない絶妙な距離感。彼は少しの間その写真を見つめ、そして彼女を見た。


「少しは、落ち着いたか?」


少し間があった。「……なんとかね」と彼女。


二人は座っていた。光がゆっくりと移り変わる。家全体が、彼らを静かに包み込んでいた。


やがて彼は鞄から折りたたまれた通知書を取り出し、彼女に押し付けることなく、二人の間のクッションの上に置いた。


「俺たち、『継承の儀』に選ばれた」彼は低い声で言った。「今すぐ、どうこう言わなくていい」


彼女の視線が通知書に落ちた。

その瞬間、彼女の瞳に何かが鋭く光った。悲しみを切り裂くような、冷徹な焦点。「私は出ないわ」


「……なんだって?」


「王様とは、一切関わりたくない」彼女は写真を慎重に置いた。「王の言い分は辻褄が合わないわ。お父さん自身が、私に言ってたの。自分は絶対にそんなことはしないって」


「でも、なんで王が嘘をつくんだ?」


「まだ分からない」彼女の声は、今はもう震えていなかった。悲しみを底に沈め、その上に確固たる意志を乗せている。「お父さんが、私に顔も見せずに任務に出たのはこれが初めてだった。それに、彼らはどこへ派遣されたのかすら教えてくれない」彼女はモトの目を見た。「お父さんに何があったのか、私が突き止める。でも、あんたは出なさい。あんたがこのチャンスをどれだけ長く待っていたか、私は知ってるから」一拍。「ただ……気をつけてね」


モトはゆっくりと頷いた。


琥珀色の光がもうしばらくの間部屋に留まり、やがて、完全に薄暗闇へと沈んでいった。

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