第16章:母の怒り (Mother's Wrath)
宮殿では、ダグラス王が片手を額に当て、もう片方の手をチェス盤の上に置いて座っていた。彼はクイーンの駒を一つ前へ進め、ことりと置いた。
その背後で、城から一筋の灼熱の稲妻が飛び立った。
洞窟の中。頭上から、あの水の円柱が粉々に砕け散った。
オリヴィアが天井を蹴り破って開けた大穴からは、灰色の空が柱のように差し込んでいた。彼女はその穴から一直線に落下し、部屋の中央に着地した。
一瞬、誰も動けなかった。
ムカイは身構えた。王の命令に背き、弟と同級生たちを暗殺者の巣窟へ引きずり込んだのだ。そして今、怒れる母親が目の前に立っている。
彼女は二人の息子を見つめ、二人を同時に強く抱き寄せた。
ムカイはその腕の中で硬直した。「……怒っていますか?」彼は、意図したよりもずっと小さな声で尋ねた。「父上の命令に背いたこと」
オリヴィアの抱擁は緩まなかった。「ええ、怒っているわ」温かく、揺るぎない声。「でも、あなたたちにじゃないわ」
彼女より先に、その音が到達した――国境の方角から猛スピードで接近してくる、水と力の巨大な奔流の音。
「結局、彼が彼女を寄越したってわけか」アリシアが静かに言った。もし彼女が許せば、それは『敬意』と呼べるような響きを帯びていたかもしれない。
シフィソはすでにポータルを開いていた。部屋の向こう側で、オリヴィアの瞳がアリシアを捉える――そこにあったのは本物の憎悪であり、同時に『なぜ今ここで彼女を殺せないのか』という冷徹な理解でもあった。アリシアはその視線を受け止め、焦る様子もなく、揺らめく空間の裂け目へと後ろ向きに足を踏み入れた。
彼女が完全にポータルを抜けた、その瞬間。オリヴィアが動いた。
彼女の蹴りが、シフィソの胴体を完全に貫通した。
彼が地面に倒れ伏すより早く、彼女はすでに反転していた。稲妻が第二の皮膚のように彼女の全身を包み込む。彼女は残りの暗殺者たちを、ひどく古い遺恨を晴らす人間の、あの研ぎ澄まされた効率性で次々と屠っていった。
ナジョとムカイは部屋の端に立ち尽くし、無言でその光景を見つめていた。
その混沌の中、カンゲツは煙と騒音を縫うようにして、誰の注意も引かずに死地からの脱出を図っていた。もう少しで抜け出せる。
その時、彼の両足から力が抜け落ちた。
洞窟の入り口の直前で、彼は地面に倒れ込んだ。冷や汗が顔を伝い、心臓の鼓動が不規則に跳ねる。血だ。また自分の血を使いすぎたのだ。
渦巻く煙を抜け、モトが追いついた。彼自身の怪我が歩みを遅らせていたが、逃がすほどではなかった。
カンゲツは彼を見上げた。「俺の負けだ。おとなしく捕まってやるよ」
「捕まる、だと」モトが静かに繰り返す。
メインルームの方から悲鳴が上がり、鋭い落雷の音が響き、そして静寂が落ちた。カンゲツはその音の方をちらりと見て、再びモトに視線を戻した。
「あそこのおっかないおばさんは、捕虜を取る気はなさそうだからな」彼は咳き込んだ。湿った、嫌な音が胸の奥で鳴る。「なあ、交渉しようぜ」
モトは彼を見下ろした。戦闘中のあの軽口を叩くような笑みはすでに消え失せ、肉体の限界を迎えて無理がきかなくなった彼の中にある、もっと純粋で誠実な部分が顔を出していた。
「アリシアは、誰にでも理由があるって言ってたな」とモトは言った。「お前を除いて、だ。お前はただ、人殺しが好きでここにいるだけだって」
モトはゆっくりと首を横に振った。
「俺は、あんまり人を裁くような真似はしたくない。でも……お前は、本物の悪党みたいだ。お前をこのまま世の中に放り出すわけにはいかない」
「悪党、ね」カンゲツは力なく笑った。「俺は自分の心の欲望に従ってるだけさ。それのどこが悪党なんだ? これ以上に純粋なことなんてないだろ」
モトは何も答えなかった。
「俺の故郷には、俺みたいな奴らがゴロゴロいる」疲労困憊にもかかわらず、カンゲツの目に計算高い光が戻った。「俺を見逃してくれ。いつかそこへ案内してやるからよ」
「お前がここから生きて出られる道は一つだけだ」モトの周囲で煙が濃さを増し、熱を帯び始める。「お前が、生き方を改められる場合だけだ」
微かな光がカンゲツの体の内側で灯った――彼の治癒能力が、遅々としてではあるが再起動し始めたのだ。彼は早口で言った。「ああ、そいつは約束できねえな。だが――」
「なら、これで終わりだ」
「待て――」
「聞く耳は持たない」
カンゲツの顔が歪んだ。彼の表情に変化が起きる――計算高い顔が剥がれ落ち、ひどく個人的な感情がそれに取って代わった。
「これだからエミール(Emir)の人間は、融通が利かねえんだよ」
モトの動きが、完全に止まった。
「お前の兄貴も同じだったぜ」カンゲツは口の端に微かな笑みを浮かべて呟いた。「まあ、あいつは少なくとも、最後まで喋らせてはくれたけどな」
煙の動きが止まった。
「……お前、今なんて言った?」
「おいおい。そっくりじゃないか」カンゲツの声が、意図的に、ゆっくりと低くなった。「アッシャー(Asher)を知ってる奴なら、数秒でピンとくるぜ」
モトは答えなかった。顔の表情こそ保っていたが、その奥底で何かが決定的にズレた。予測だにしていなかった言葉を叩きつけられ、必死に状況を再計算している人間の、あの微細な硬直。
「モト!」洞窟の奥から、シェウの声が響いた。
カンゲツはモトの顔を観察した。「俺の知り合いの中には、お前の兄貴を引きずり出すために、お前を餌にするような奴らがいる。俺を見逃せば、そいつらがお前に近づかないようにしてやるよ。お前のダチが、そういう厄介事に巻き込まれるのは……悲惨だろ?」
長い沈黙。
モトは洞窟の奥を振り返り、そして眼下のカンゲツを見下ろした。
「……行け」
カンゲツの顔に、満足げで下劣な笑みが戻った。彼は立ち上がり、すでに奥の壁の亀裂へと向かって歩き出していた。「またな。アッシャーによろしく言っといてくれ」
煙が晴れる前に、彼の姿は消えていた。
シェウが追いついた時、モトは一人、うつむいて立ち尽くしていた。
「逃げられたの?」彼女の声には、純粋な驚きが混じっていた。
モトは答えなかった。
彼女は一歩近づいた。「自分を責めないで。怪我をさせられなかっただけでも幸運だったわ」
メインルームの落雷の音が鳴り止み、洞窟は今や静寂に包まれていた。モトは薄い煙の中に立ち、カンゲツが消えた壁の隙間を見つめていた。
彼が頭の中で何を考えていようと、彼はそれを、決してシェウに見えない奥底へとしまい込んだ。




