第15章:乱戦 (The Battle)
「俺のジャケットが台無しじゃねえか!」舞い散る水飛沫が収まる中、ナジョがムカイを睨みつけて怒鳴った。
「無計画に突っ込めとは言っていない!」ムカイが鋭く言い返す。
部屋の隅、モトが体当たりで突き破ろうとしている扉の向こう側で、スカイにはその声が聞こえていた。彼は猿轡越しに、出せる限りの大声を振り絞った。
ムカイが弾かれたように首を向ける。
広大な洞窟の反対側には、六人の暗殺者が立ち、こちらを見据えていた。静かに。あの王でさえ彼らと直接対峙することを避けたのだ。つまり、彼らが『桁違いに危険である』と想定することだけが、唯一の安全な前提だった。
一歩でも間違えれば、誰かがスカイの命を奪う。ムカイの思考は完全にロックされ、空回りし、いかなる決断にも着地できずにいた。
その時、モトが全体重を乗せて後方へ身を投げ出した。
バキィッ!
扉が粉砕される。モトは木片と土埃の雲を巻き上げながら、スカイのいる部屋へと転がり込んだ。彼は立ち上がりながら、すでに服の埃を払い始めている。
ムカイは、扉があったはずのぽっかりと空いた空間を呆然と見つめた。
洞窟の反対側からそれを見ていたアリシアが、わずかに小首を傾げる。「任務を最優先したってわけか」彼女は誰にともなく呟いた。「腹の座ったガキだね」
床に縛り付けられたまま荒い息をつくスカイが、モトを見上げた。「どうして、来てくれたんだ?」
モトは微笑み、制服の埃を払った。「良い方の双子に、何かあっちゃ困るからな」
部屋の向こうで、ムカイの表情に何か鋭いものが走り、そして消えた。
アリシアが姿勢を正す。「お前たち三人――重要な奴らは捕獲しな。残りは殺せ」
カンゲツ、シフィソ、そしてアリシアは動かない。他の三人の暗殺者が前進を始めた。
シェウの顔から血の気が引く。
「待て」シフィソの目がナジョを捉えた。「あれはジニンビの孫じゃないか?」
「それがどうした」ナジョが言い放つ。
アリシアの顔に満面の笑みが広がった。「また金の成る木が増えたね。そいつも生かしておきな」
前進していた暗殺者の一人が足を緩める。「じゃあ……殺していいのはあの女だけか?」
シェウはすでに動いていた。背中合わせで縛られたままの手を素早く動かし、自らのロープを解く。そして床を這うように移動し、モトの戒めを解き、次にナジョのそれを解いた。
「ビビる必要はない」モトが言う。「俺たち、今はエリート校の生徒だからな」
「クラスの底辺じゃ、何の慰めにもならないわよ」シェウが返す。
「違いない」モトはニヤリと笑った。「ムカイがいてくれて助かったぜ」
「おい」ナジョが指の関節を鳴らす。「俺の存在を忘れてねえか?」
「ふざけている場合か!」ムカイの声が裏返った。「早くここから脱出を――」
「奴らが大人しく帰してくれるわけないだろ」モトが構えを取る。「だから」
ナジョの目に炎が宿った。「頭蓋骨をカチ割る時間だ」
最初に動いたのはナジョだった。稲妻の残像。速く、一直線に。打撃のたびに激しい火花が弾ける。モトは最も近い煙の影に滑り込み、洞窟の狭い空間を利用して敵の懐に潜り込んだ。シェウは突風による押し出しで三人目を牽制し、スカイのそばから離れない。
ナジョの相手は土の能力者だった。男が両手を地面に叩きつけると、天井が軋み、岩の塊が落下し始める。ナジョは踏ん張ってそれに耐えようとした――だがその瞬間、足元の床が鋭く隆起し、彼は大きく横へよろめいた。暗殺者が冷笑を浮かべる。
ナジョは、まだ崩れ落ちてくる天井を見た。そして、それを操作するために突き上げられている暗殺者の両手を見て――あえて、そのまま天井を落とさせた。
男の腕が、落ちてくる岩の重量を支えようと反射的に上へ伸びる。胴体がガラ空きになった。ナジョは雷を極限まで纏わせた拳を、男の鳩尾に深々と突き刺した。男は「くの字」に折れ曲がり、崩れ落ちた。
洞窟の反対側では、モトが自身と相手の間に高密度の煙幕を張り巡らせていた。敵の大振りな最初の一撃を躱し、暗殺者を洞窟の壁へと激しく叩きつける。的確で素早い蹴りの連撃、そして顔面への鮮やかな回し蹴りでフィニッシュ。
ナジョが仕留めた土の能力者が吹き飛んできたのは、全く同じタイミングだった。それがモトの相手を巻き込み、二人の暗殺者が同時に地面に沈む。
アリシアは片眉を上げてそれを見ていた。「分かるかい、シフィソ。私が強い奴らをスカウトする理由はこれさ。標的が、脅しだけで屈するようなヤワな相手じゃなかった時のためだよ」
「私が出ましょうか?」シフィソが提案する。
「いや」彼女は横目を見た。「ゲヘン(Gehen)のお手並み拝見といこうか」
カンゲツはすでに笑っていた。彼はアリシアの方へ身を乗り出し、彼女の太もものストラップから二本の指でナイフを抜き取った。「ちょっとこれ、借りるぜ?」
彼女はそれを黙認した。
ムカイはそのすべてを見ていた。学年トップの彼の計算では、この暗殺者たちは自分たちの手に負える相手ではないはずだった。――しかし、モトは煙と体術だけで一人を沈めた。(私が奴らを過大評価していたのか)。彼の視線がカンゲツに移る。(だが……こいつは違う)
ナジョが雷の矢のようにカンゲツへ突進する。
カンゲツは全く焦る様子もなく横へステップし、その動きのままナジョの力を受け流して軌道を逸らした。ナジョは床を滑り、アリシアの足元まで転がっていく。彼女はナジョの胸に足を乗せ、ジャケットを踏みつけて彼を床に縫い留め、そのまま静かに部屋の動向を見守った。
モトが拳を振るって飛び込む。カンゲツは、そのすべての打撃の周囲を舞うように動いた。慌てるでもなく、後退するでもない。ただ、すべての拳がどこに着弾するかを最初から知っているような恐ろしいほどの落ち着きで、わずかに身を躱し続ける。
「見覚えのある型だな」カンゲツが言った。「もう自分のものにしてるとは、感心するぜ」
モトが大振りのフックを放ち――それが捕らえた。
骨が軋むような鈍い感触と共に拳がクリーンヒットし、モトの拳の関節にカンゲツの血がべっとりと付着する。
「これで先読みはできねえだろ」モトが言う。
カンゲツが笑った。
「どうかな」
付着した血が、不気味に発光し始めた。
モトがそれを拭い去るより早く、それは起爆した。
ドォォンッ!!
鋭く暴力的な爆発がモトの腕を弾き飛ばし、強烈な耳鳴りを残した。
「気をつけな」部屋の反対側からアリシアが声を張る。「そいつは生け捕りだ。他の奴らは――あと二分したら、手加減をやめていい」
「了解だ、ボス」
シェウとスカイが左右からカンゲツを挟み撃ちにする。カンゲツが独楽のように回転した。ナイフの柄でスカイの頭部を打ち据え、全く同じ動作のまま、鋭い刃をシェウの首筋へ向けて薙ぎ払う。モトの位置からは届かない。
その時、床から一閃の雷が迸った。
アリシアに踏みつけられたままのナジョが、仰向けの姿勢から雷撃を放ったのだ。それはカンゲツのナイフに直撃し、彼の握りから武器を弾き飛ばした。
宙を舞うナイフを、モトが空中で掴み取る。そのままの勢いでカンゲツの顔面を切り裂いた。左頬に走る、深く綺麗な裂傷。カンゲツが咆哮を上げる。
彼はモトの手首を掴み、その肋骨に重い拳を叩き込んだ。そして、ナジョがアリシアの足元から無理やり身をよじって脱出した――ジャケットだけを彼女の足の下に残して――その直後。
カンゲツは、ナイフの刃に付着した自らの血を、ナジョの胸に乱暴に擦りつけた。
爆発が、ナジョを奥の壁まで吹き飛ばした。
ムカイは、ナジョが地面に叩きつけられるのを見ていた。その瞬間、彼の胸の奥で固く錠を下ろされていた『何か』が弾け飛んだ。
(私は学年トップだ。それなのに、恐怖で足がすくんでここに突っ立っている)
止める間もなく、一つの比較が彼の脳裏に浮かび上がった。恐怖に縛り付けられている自分自身と、彼の父親。そして、彼が『弱さ』という言葉を、まるで明確な定義があるかのように口にしていたすべての瞬間が。ムカイの顎がギリッとこわばった。
彼は洞窟の床の水溜まりから――先ほど自分が突入した際に残した、石の裂け目に溜まっている水から――水を一気に引き上げ、きらめく無数の短剣の列へと瞬時に形成した。
彼がそれを放つ。
カンゲツはニヤリと笑い、その短剣の雨の中を歩いて進んだ。一本一本が彼の体に新たな切り傷を作っていくのをあえて受け入れる。彼の体は、内側から熱を帯びない不気味な光を放ち始めていた。彼は両腕を大きく広げ、跳躍した。
「危ない!」モトとスカイが同時に叫んだ。
「『毒水沼』!!」ムカイが両掌を激しく打ち合わせた。
水の円柱がカンゲツを包み込み、凄まじい水圧の壁となって彼を閉じ込める。発光が消え、爆発は未然に抑え込まれ、血は周囲の液体の中へ溶け出していった。カンゲツは水の牢獄の中で息を止め、静止した。
部屋全体が、ふっと一息をついた。
その時。椅子に座るアリシアの声が、完璧に平坦なトーンで響いた。
「四」
円柱の中の水そのものが、発光し始めた。
「三」
水の壁越しに、カンゲツがゆっくりと、ひどく悠長に冷笑を浮かべるのが見えた。
「二」
血は溶けて消えたのではない。水全体に、拡散していたのだ。
「一」
凍りつくような死の静寂が、洞窟の隅々までを満たした。




