15-2 治し損ない
まるで手がかりのない調査。果てしなく広がる珊瑚。では、まだ皆を試そうとするものは、ほかに何でしょう?
あたしは、匂いで目を覚ました。
白礁にずっと溜まっていた、骨の層の下からじわじわ滲んでくるような腐臭じゃない。
今度のは、もっと近い。
鼻先で何かがそのまま腐っているみたいな近さだった。
あたしは跳ね起きた。耳が先に後ろへ倒れる。手はもう腰の小刀に触れていた。背中に当たる黒礁石は、夜の冷たさをまだ残していて、その冷たさで頭が少しはっきりした。
朝だった。
海風が白礁の方から吹いてくる。湿った冷たい塩気と、掘り返したばかりの腐泥の匂いを運んで。
起き上がって最初に見えたのは、艾琳だった。
彼女は昨日のあの小さな珊瑚の前にしゃがみ込み、ぴくりとも動かない。
あそこには、昨日まで少しだけ色があった。
本当に、ほんの少しだけ。
昨日の午後、艾琳は古き霊語で清い水を呼び、珊瑚の表面の黒泥を少しずつ洗い流した。あたしは薄めた薬草水を裂け目に垂らし、里克と奧布里は外側のまだ流れのある海水を、小さな礁溝へ引き込んだ。
珊瑚がすぐに生き返ったわけじゃない。
でも、縁のところに、ごく淡い青が浮いたのをあたしは見た。傷口の脇に新しく伸びる柔らかい肉みたいな色だった。
今は、それがない。
珊瑚の塊はそのまま崩れ落ち、灰黒色の腐泥になっていた。鹿角みたいだった枝は全部柔らかくなって絡み合い、表面に小さな泡を吹いている。
その泡が破れるたび、匂いが鼻へ飛び込んでくる。
あたしはしばらく、その塊を見ていた。
昨日は、確かに効いていた。
少なくとも、そう見えた。
「何をした?」
声が背後から飛んできた。
深海から引き上げたばかりの石みたいに冷たい声だった。
振り向くと、海靈の衛兵がもう黒礁の縁に立っていた。二叉戟の先は、あたしと艾琳を向いている。
鰭は開いていた。灰青色の鱗は朝の光を硬く返している。白目のない黒い目には、昨日みたいな嘲りはなかった。
怒りだけ。
それから、別の匂いも。
汗。
海靈も汗をかく。
塩気と腐臭に紛れて、ほんの少しだけ。でも、あたしには分かった。
こいつ、怖がっている。
「昨日は、まだ少し生命の気配が残ってたの。」艾琳がゆっくり立ち上がった。声は軽い。
「私はただ——」
「ただ何だ?」
海靈の衛兵が遮る。
二叉戟が半寸だけ前に出た。
「ただ、もっと早く腐らせただけか?」
扎卡が一歩前へ出る。
凡スの手が弓囊を押さえる。
萊克斯、里克、奧布里の手も、それぞれ腰の刀へ落ちた。
火はとっくに消えていて、黒礁の上には冷たい灰しかない。風があたしたちの間を抜けるたび、白い粉が低く這った。地面に張り付いて進む霧みたいだった。
汗の匂いがさらに濃くなる。
水手の汗。
扎卡の汗。
あたし自身の汗。
この海靈の衛兵は、難癖をつけてあたしたちを殺したいわけじゃない。
本気で、あたしたちがこの白礁をさらに悪くしたと思っている。
そっちの方が、かえって嫌だった。
ただ殺したいだけなら、まだ単純だ。
「分からない。」あたしは言った。
海靈の眼がさらに冷える。
「分からない?」
「そう。」
あたしは吐き気を堪えながらしゃがみ、小刀の先で灰黒色の泥を少し掬った。
泥は刀先に絡みつき、ゆっくり糸を引く。
その先を、海靈に見せる。
「もしあたしたちが壊したなら、上から先に腐るはず。」
崩れた珊瑚の縁を指した。
「でも見て。上は砕けてるだけ。腐ってるのは下。これ、下から上へ壊れてる。」
海靈の衛兵は武器を下ろさなかった。
でも、目は一度だけ刀先へ落ちた。
見た。
見てくれるなら、まだ完全に斬り合いにはなっていない。
里克も近づいてきて、しゃがみ込んだ。
「この娘の言う通りだ。」
刀の背で崩れた縁を押し広げる。
「昨日触ったのは外側だ。今日腐ってるのは根の底。薬草水が染みて焼けた形じゃねえ。」
艾琳の指先が、少し白くなるまで力んでいた。
「昨日かけたのは毒じゃない。」彼女は低く言った。
「水よ。とてもきれいな水。」
海靈の衛兵が鼻で笑った。
「泡みたいな約束だ。」
あたしは、危うく口を開くところだった。
喉まで出かかった。
じゃあ、お前たちはここを守って、何か一つでも守れたのか。
でも、その言い方は亞倫すぎた。
亞倫は、こういうことを言ってもそのあとを収めるだけのものを持っている。
あたしにはない。
その時、凡スが口を開いた。
「今ここで俺たちを殺してもいい。」
全員が彼を見る。
凡スは火の届かない位置に立っていた。顔は平らで、張りつめる前の弓みたいだった。
「そのあと、お前に残るのは、腐り続ける珊瑚だけだ。」
海靈の衛兵が彼を睨む。
凡スは目を逸らさない。
「それが嫌なら、先に進ませろ。」
助けを求める声じゃない。
冷たい濡れ石を相手の掌へ戻して、お前が自分で持てと言っているみたいだった。
風が一瞬止まる。
遠くで海水が礁の端を打った。音は低い。喉の奥からようやく絞り出したような呼吸に似ていた。
長い沈黙のあと、海靈の衛兵は二叉戟を引いた。
「もう一度でもやったら。」
彼は言う。
「お前たちを海へ投げ込む。」
心の中で思う。
もともと海の上なんだけど。
でも言わなかった。
あたしの口はたまに本気であたしを殺しにくる。今日はまだ生きていたい。
あたしたちは昨日の珊瑚を、もう一度調べ直した。
艾琳が死んだ珊瑚の欠片を一つ拾い、掌に乗せる。石と思えないくらい軽い。縁は粉っぽく、風が吹くだけで細かく崩れた。
「珊瑚って、一つの生き物じゃないの。」彼女が言った。
あたしは眉を寄せた。
「どう見ても、一つにしか見えないけど。」
艾琳は首を振る。
目の下には、うっすら青い影が落ちていた。昨夜、よく眠っていないのが見て取れる。
「中に、とても小さな命がたくさん住んでる。ふだんは一緒に生きてるの。珊瑚は住みかを与えて、その子たちは光と養分を留めてあげる。」
あたしは彼女の掌の上の白い欠片を見る。
「じゃあ今は、その中の連中が逃げたってこと?」
「逃げたか。」
艾琳は一拍置いた。
「死んだか、ね。」
声はとても軽かった。
この白礁そのものに聞かれたくないみたいに。
里克がそばで白灰を一つかみ掬い、指の間からさらさらと落とした。
「魚もいねえ。小虫もいねえ。草の切れ端もねえ。」
彼は低く呟く。
「綺麗すぎるほど飢えてる。」
あたしは腐泥のそばへしゃがみ込み、鼻の奥を刺す臭いを我慢していた。
飢えて死んだものなら、見たことがある。
乾く。
痩せる。
空になる。
冬を越せなかった小獣みたいに、腹は骨へ張りつき、毛並みから艶が消える。
でも、ここは違う。
底が湿っている。
こもっている。
黒い。
獣皮袋の中へ長く押し込められた傷口みたいだった。中身はとっくに腐っているのに、外から見ているやつは、まだ日が当たっていないだけだと思っている。
あたしたちは荷をまとめ、さらに奥へ進んだ。
白珊瑚。
黒泥。
灰粉。
砕ける音。
長く歩いても、見えるものは変わらない。白珊瑚、黒泥、灰粉、砕ける音。
たまに遠くから海水が打ち寄せ、その音が礁の隙間へ潜り込み、またゆっくり引いていく。その音は波じゃない。
呼吸だ。
奧布里の標識棒が、一本ずつ地に刺さっていく。
振り返ると、それらは白い粉の中へ斜めに立っていた。骨灰に突き刺さった棘みたいだった。
地形は変わらない。
変わっていくのは、人の方だった。
萊克斯は最初、海だの礁だの、靴底が削れるだのといちいち悪態をついていた。でも途中から黙った。ただ頭を下げて歩く。肩の防水袋が、だんだん低くなっていく。
里克の歩みも遅くなった。
たびたびしゃがんでは珊瑚を触り、水を嗅ぎ、礁溝を眺める。でも、もうあまり判断を口にしない。
奧布里の結び目は、だんだん増えた。すでに標識を打ったあとでさえ、振り返ってもう一つ結び足すことがある。縄を一周多く巻けば、帰り道が少しでも本物になると信じたいみたいに。
艾琳は口数が減った。
凡スはずっと彼女を見ていた。
止まれとは言わない。
扎卡の右腕は、また血が滲み始めていた。
匂いで分かる。
鉄の匂いはとても薄く、潮風に押しつぶされていた。でも、あたしの鼻は逃がさない。
あえて口にはしなかった。
扎卡も、あたしが嗅いだことに気づいている。
ただ右腕を斗篷の中へ少し隠した。
無駄だ。
でも、あたしも無駄じゃないふりをした。
海靈の衛兵は、ずっとついてくる。
時には、横の深い水の中を泳ぎ、顔半分と二叉戟の先だけ見せている。時には礁台へ上がってきて、黙ってしばらく歩く。もっと多いのは、礁の隙間へ消えたと思ったら、もう前方の水たまりから顔を出していることだった。
現れるたびに、顔色が悪くなる。
午後になって、とうとう堪えられなくなったらしい。
「二日歩いた。」
左側から声がした。
「何一つ直っていない。」
あたしは足元の白い枝の残骸を見た。
お前たちはここをどれだけ守っても、何一つ直せなかった。
その言葉は胸の中で一度転がり、それから噛み潰した。
本当に亞倫にはなりたくない。
少なくとも、こういう場所では。
艾琳が足を止め、彼へ向き直る。
「前に珊瑚が病んだ時は、どうしていたの?」
海靈の衛兵が彼女を見る。
「切る。」
「切る?」
艾琳が眉を寄せる。
「腐った部分を切る。汚れたものを追い出す。外から来たものは殺す。」
返事は短かった。どの言葉も海水に削られて、硬い縁だけ残ったみたいだ。
凡スが白礁の奥へ視線をやった。
「ずいぶん切り残したらしいな。」
海靈の鰭が、ばっと開いた。
あたしは反射的に、二人の間へ出た。
自分でも、なんで出たのか分からない。
たぶん凡スの今の一言が、本当に殴られそうなやつだったからだ。
たぶん海靈の方も、本当にやりそうだったからだ。
二叉戟の穂先が、胸の半歩手前で止まる。
刃先を見つめた。尾が固まる。凍ったみたいに動かない。
「こいつ、口が悪いんだ。」あたしは言った。
凡スが一度だけこちらを見た。
「でも、目はまだ使える。」
付け足す。
凡スはもうあたしを見なかった。
海靈の衛兵は、あたしを睨み続けた。胸が一度、大きく上下する。
やがて二叉戟を下げた。
「陸の魚。お前たちの口で、この海が救えると思うな。」
「あたしも思ってない。」
正直に言った。
「あたしの口は、だいたい面倒しか起こさないし。」
後ろで萊克斯が、ごく小さく鼻を鳴らした。笑いそうになって、慌てて飲み込んだ時の音だ。
その夜、あたしたちは少し高くなった黒礁で足を止めた。
そこには珊瑚がない。
白灰もない。
海水に削られて滑らかになった黒い石だけがあった。石の裂け目に、少しだけ塩が溜まっている。触るとざらついて、乾いた傷痂みたいだった。
萊克斯が防水布で風除けを作り、奧布里が縄をいくつかの石柱へ回して、小さな休める場所を固定した。潮が引いている間はいい。満ちたらどうなるかは分からない。
火は小さかった。
薪がないわけじゃない。
誰も、光を遠くまで広げたいと思わなかっただけだ。
火を囲んで乾糧を食べる。
固い。
噛むたび、長く放っておかれた船板でも齧ってる気分になった。欠片が歯の間に詰まり、少し湿気た酸味まである。
でも、腐臭はしない。
それだけで、食べられるものになる。
誰も話さなかった。
火の明かりが、顔を順番に照らしていく。萊克斯は顎に力が入っている。里克の目は昨日よりさらに深く落ち込んでいた。奧布里は俯いたまま結び目を確かめている。指先が擦り切れていても、声は出さない。
艾琳は火のそばで膝を抱えて座っていた。
凡スはその斜め後ろで矢尻を拭いている。動きは遅い。一つ一つ、きれいに拭き上げていた。
扎卡は石柱にもたれ、右腕を斗篷の下へ隠したまま、左手に持った乾糧をずいぶん長いこと噛まずにいた。
あたしは自分の手を見下ろした。
手のひらの皺の中に、黒泥がまだ残っている。
何度も洗った。
海水。
真水。
布で擦って。
爪で掻いて。
それでも落ちない。
あたしは草藥師だ。
この手は、血を止めるためのものだ。薬を塗るためのものだ。苦根草を、気絶しかけている誰かの口へ押し込み、一番きついところをやり過ごさせるためのものだ。
でもここには、止める血がない。
包む傷口がない。
薬を飲んでくれる病人もいない。
白礁全体が、あたしの目の前に横たわっている。
そのくせ、どこに口があるのかも分からない。
あたしは爪で手のひらを掻いた。
黒い跡はまだ残っている。
「今日はずっと、自分の手を見てる。」
艾琳が言った。
慌てて手を引っ込めようとした。
少し遅かった。
「そうだっけ?」
「そう。」
彼女は自分の乾糧を少し割って、あたしへ差し出した。
「自分が何か間違えたって、思ってる?」
すぐには答えられなかった。
火の明かりは小さく、遠くまでは届かない。白礁の姿は闇の中で見えないのに、匂いだけはずっとそこにある。見えない手が、一人一人の喉を押さえているみたいに。
「今までは、どこが傷ついてるか分かれば、何かしらできたんだ。」あたしは言った。
声は自分で思っていたより低かった。
「血を止める。熱を下げる。眠らせる。少しでも痛くないようにする。」
一度止まる。
「ここは違う。」
艾琳は火を見ていた。
「うん。」
それ以上は言わなかった。
たとえば「あなたはよくやってる」とか。
「きっと方法が見つかる」とか。
そういうことを言うのかと思っていた。
でも彼女は言わない。
ただ自分の水袋を差し出してきた。
「一口飲んで。唇が切れてる。」
受け取って、一口飲んだ。
皮革の匂いがした。
でも腐臭はしない。
それだけで十分だった。
火の反対側で、凡スが突然口を開く。
「今お前たちが考えてることは、手がかりじゃない。」
顔を上げた。
艾琳も彼を見る。
凡スは火の届かない場所に座っていた。矢尻が彼の手の中で一度回り、布でゆっくり拭われる。
「自責は手がかりじゃない。恐怖も違う。」
口調は相変わらず冷たい。
でも、今度は刺さり方が違った。
少し変な感じがした。
凡スは視線を上げ、艾琳を見た。
「昨日の呪文は間違っていない。」
艾琳が一瞬止まる。
凡スはすぐに目を逸らした。
「水も間違っていない。」
拭き終えた矢を、矢袋へ戻す。
「間違っていたのは、こいつがそれを受け取る状態じゃなかったことだ。」
あたしは眉を寄せた。
「どういう意味?」
凡スは少しだけ黙った。
「溺れかけているやつの口に、熱い汁を流し込んでも助からない。」
彼は言う。
「むせて死ぬだけだ。」
火が一度、跳ねた。
ひどい言い方だ。
でも、分かりやすい。
艾琳はゆっくり俯き、地面に積もった白灰を見た。
「つまり、私たちは与えた。」
「でも、向こうは受け取れなかった。」凡スが言った。
あたしは彼を見た。
凡スって、ただ言葉を射って、人に刺して、そのまま放っておくやつだと思っていた。
でも、今のは違う。
地面に突き立てた矢みたいだった。
傷つけるためじゃなく、こっちだと示すための。
里克が横で、急に手のひらで顔をこすった。
「だからか。」
小さく呟く。
「外の水を入れたら、上は戻らず、底だけひっくり返った。」
「壊れた溜め池みたいだ。」奧布里が低く言葉を継いだ。
「水を揺らしたら、泥が全部浮き上がった。」
海靈の衛兵は、黒礁の端に立っていた。
最初から最後まで、輪の中には入ってこない。離れもしない。
火の明かりは顔まで届かない。時々、二叉戟の先だけが冷たく光った。
彼は全部聞いていた。
でも何も言わない。
三日目、あたしたちはさらに奥へ進んだ。
白礁はまだ白い。
空も相変わらず、目が痛くなるほど明るい。
もう、自分たちがどこを歩いたのか分からなくなっていた。本当に通った場所なのか、ただそう見えるだけなのかも怪しい。標識棒は後ろに置き去りにされ、白灰は舞い上がっては落ちる。靴底が珊瑚を削る音は耳に残りすぎて、もう頭の中に住みついていた。
昼に近い頃、足元の音が変わった。
砕ける音じゃない。
鈍い音だ。
靴で踏むと、低くひとつ返ってくる。
本物の地面を踏んだみたいな感触だった。
あたしは立ち止まり、しゃがんで触れてみる。
ここの珊瑚は、触れたそばから灰になる感じじゃない。表面は硬く、ざらついていて、長く海に削られた骨板みたいだった。爪で引っ掻くと、白い筋が少し残るだけ。
萊克斯が長く息を吐いた。
「やっとまともに歩ける。」
里克は笑わなかった。
奧布里は結び目を打つ手を速める。
艾琳は周囲を見回し、指先を少し持ち上げていた。水の中にある何かの音を聴こうとしているみたいに。
凡スは弓を手に取った。
扎卡が止まる。
耳がゆっくり一度動いた。
それから、尾が低く落ちる。
「妙だ。」
全員が止まった。
誰も、どうして分かるのかなんて聞かない。
こういう場所で、扎卡が妙だと言ったら、まず信じた方がいい。
萊克斯が声を潜めた。
「何がだ?」
扎卡はすぐには答えなかった。
彼はしゃがみ込み、左手を地面に当てた。
あたしもしゃがむ。
手のひらを貼りつける。
硬い。
冷たい。
下に水の流れる音はない。
小さな生き物が動く気配もない。
でも、震動がある。
とても遅く。
一回。
もう一回。
何かが下で寝返りを打っているみたいな震えだった。
背毛が、一本ずつ立っていく。
扎卡が顔を上げる。
口が開いた。
「逃げ——」
最後まで言えなかった。
足元の地面が、膨らんだ。
白い硬礁が中央から裂ける。
轟。
地面ごと、ひっくり返された。
ご覧いただきありがとうございます。ですが、どうか心の準備を。
ここから、物語のテンポは一気に速くなります。なぜなら、地面が爆ぜたからです。
どうぞ第三節「屋身蟹」をお楽しみに。




