14-4 海風
では、ほかの人たちはどうなのでしょう。
彼らは一体、何を見たのでしょうか。
どうぞお楽しみください。
翌日の夜。
あたしは何か食べるものはないかと食料庫を訪れた。扉を開けると、すでに扎卡が中にいた。
彼はひっくり返した木桶に腰かけ、手に半分残った黒パンを持っていた。あたしが入ってくるのを見ると、軽く頷き、隣の麻袋からもう一枚取り出してあたしに差し出した。
あたしはそれを受け取り、彼の隣に座った。
しばらく無言でかじる。食料庫は静まり返っていた。ランプの火が揺れ、二人の影を壁に落とし、船の揺れに合わせてゆっくりと動かしていた。
「扎卡」
「ん」
「何を見たのか、聞いてもいい?」
なぜだか自分でも分からなかったが、ただ気になったのだ。
彼はパンを噛み砕き、飲み込んだ。
「大したもんじゃない。ただの自分だ」
あたしは彼を見た。
彼の口元が少し動き、何か言いたげにしては、また引き込めた。そして、もう一度動いた。
「ごめん」あたしは言った。
「聞くべきじゃなかったね」
「いや」
彼はパンを膝の上に置いた。
「あの頃の俺は、いつもイライラしていた」
彼は一度言葉を区切った。
「まだ毛も生え揃っていなかった頃だ」
彼は鼻をこすった。
「些細なことで、親父と大喧嘩した。具体的に何で揉めたのかはもう覚えてない——まあ、うるさく干渉されるのが嫌だったんだろう」
「それから家を飛び出して、ずっと傭兵をやっていた」
彼の口調は淡々としていた。何度も何度も思い返し、その端々がすっかり丸くなってしまった思い出を語るかのように。
「後になってようやく知った。なぜ鉄頭がずっと俺についてきていたのか」
あたしは何も言わなかった。
「親父があいつを寄越したんだ」
彼の右手は無意識に左手首に触れた——そこには二つのものが巻きつけられている。擦り切れて切れそうな一本の古い紐、すなわち鉄頭の首縄。そして、瓦里克から貰った銅の記章。新旧二つのものが、並んで掛けられていた。
「強くなってから、初めて分かった」彼は言った。
「あんなふうに怒鳴り散らしたっていうのに、親父はそれでも俺を心配していたんだ」
「故郷へ帰ろうと思った時には——」
彼は言葉を止めた。
「もう、親父はそこにいなかった」
あたしの胃がキュッと縮んだ。
「おじさんは……?」
沈黙。
扎卡の指先が、あの古い首縄を弄った。何も喋らない。
あたしはその動作を見つめた。脳裏にはすでに、最悪の予想がよぎっていた。
やがて、彼は息を吐き出した。
「ああ——親父も傭兵として出稼ぎに出てたんだ。だから、あの時は会えなかっただけだ」
あたしは胸をなでおろした。
だが、それも束の間だった。
会えなかった。それは「無事である」ということではない。彼が故郷に帰った時には父親が不在で、二人は広い世界のどこかでお互いを求めながらも、未だに出会えていないのだ。
数秒の沈黙。
扎卡はパンを持ち上げ、また一口かじった。
「この航海が終わったら、一度故郷へ戻る」
少し間を置いて。
「あたしも」
彼は振り返ってあたしを見た。
起きて頷いた。 (Wait! "起きて頷いた" -> "そして、頷いた")
そして、頷いた。
それ以上は何も言わなかった。必要がなかった。
……
「え?二人とも、もう一緒に冒険しないの?」
艾琳の声が食料庫の入り口から響いた——いつの間に来ていたのか、おそらく最後の会話を盗み聞きしていたのだろう。
彼女の後ろには凡スがいた。凡スは最初にあたしと扎卡に視線を走らせ、それから艾琳を見た——『彼女が何を言うかは分かっているが、止めるつもりはない』という目だった。
二人は中に入ってきて、空いた場所に腰を下ろした。艾琳は麻袋の上にあぐらをかき、凡スは壁に寄りかかった。
「家族の様子を見に帰らなきゃいけないんだ」あたしは少し微笑んだ。
目元だけは笑っていない、形だけの微笑みだった。
「じゃあ、その後は?」艾琳がすかさず尋ねる。
あたしはパンを数回噛んだ。
「その時になってみないと分からない」
さらに数回噛む。
「この二年の冒険は、あたしにとってはすごく長かったから」
艾琳は口をわずかに開いた。
そして、閉じた。
彼女の表情が少し変化した——悲しんでいるのではなく、何かが腑に落ちたような顔だった。
精霊は七、八百年を生きる。二年という歳月は、彼女にとっては一ヶ月かそれ以下にすぎない。彼女はこれまで、「二年」という時間が、あたしや扎卡にとってどれほどの重みを持つのかを考えたこともなかったのだ。
彼女は、それに気づいた。
食料庫は数秒間、静まり返った。
「だが、この旅が終われば風息谷へ行かねば良らん」 (Wait! "行かねば良らん" -> "行かねばならん")
「だが、この旅が終われば風息谷へ行かねばならん」凡スが言った。慰めるためではなく、事実を述べるように。
「あそこの疫病はまだ解決していない」
艾琳はまだ地面を見つめていた。
「もし故郷で退屈したら——」あたしは言った。
彼女が顔を上げた。
「またみんなと冒険に出るかもしれないしね」
彼女はあたしを数秒見つめた。それから口元を微かに動かした——笑ったのではなく、何かを堪えているようだった。
あたしは立ち上がった。
「ちょっと潮風に当たってくる」
残りの半分になったパンを手に、食料庫を後にした。
……
甲板の上。
夜風が海の塩気を運んで吹いてくる。
空は澄み渡り、雲ひとつない。星々は、黒い布の上に小石をひとつかみぶち撒けたかのように密集していた。
あたしは舷側に寄りかかり、パンをかじりながら星を眺めた。
背後から足音が近づいてくる。
「この旅は、そもそもお前には向いていない」
凡スだ。
彼はあたしの隣まで来たが、手すりには寄りかからなかった。腕を組んだまま、直立している。
「どういう意味?」
「亞倫の奴だ」彼の口調は淡々としており、天気の雑談でもするかのようだった。
「あいつは立ち止まらない。何十年も、何百年もな」
彼の言いたいことが分かった。
「やれるだけやるさ」
彼は応じなかった。
「最初は、ただ外の世界が珍しいって思っただけだったんだ」あたしは言った。自分でもなぜこんなことを口にしたのか分からない。
「今は?」
彼は問い返した。
あたしは黙り込んだ。
米洛にも同じようなことを聞かれた。あの時も、あたしは答えなかった。
あたしが黙っているのを見て、凡スはそれ以上追及しなかった。
彼は星空を見上げた。数秒の間を置く。
「俺が森にいた頃は、外の世界の方が狭いと思っていた」
彼の声はきわめて静かだった。あたしに向けて言っているようには聞こえなかった。独り言のようであり、たまたまあたしが隣にいただけのようだった。
そして、彼は背を向けて立ち去った。
故郷では、こんなものは見られない。
この星の光も。数々の都市も。見たこともない風景や、想像もしなかった危険も。
あたしには時間がある。
だが、おばあちゃんは?
……
「何か悩み事か?」
今度は亞倫だった。
彼はあたしの隣の舷側に寄りかかった。いつの間に来たのかも分からなかった。
「冒険って、思ってたのとは違ったなと思って」
「どうした?」
「一度、帰りたいんだ」
彼はあたしを見た。驚きも、失望もなく、ただ見つめていた。
「家族のことか」
またこれだ。まるで心を見透かしているかのように。
あたしは答えなかった。彼はすでに察している。
「お前が納得して、楽しめるならそれでいい」彼は言った。
「行きたいところへ行けばいいさ」
彼にそう言われると。
かえって面白くなかった。
あたしがいようがいまいが関係ないかのようだった。この一年以上の道のりで、あたしが抜けようが、何一つ変わりはしないと言われているような。
彼は何かに気づいたのだろう——すぐに言葉を補った。
「お前の思っているような意味じゃない」
少し間を置いて。
「俺はお前の決断を支持する、という意味だ」
あたしは前方の海面を凝視した。
「引き留めてくれないの?」
その言葉が口から出た瞬間、あたし自身も呆然とした。思わず漏れてしまった言葉だった。だが、確かめたかったのも事実だ。
彼はすぐには答えなかった。
「お前が本当に去りたいのなら、俺には引き留められないよ」
彼の声は静かだった。あたしではなく、海を見つめている。
「分かっている。お前は強い。一度決めたことは必ずやり遂げる」
あたしは彼の横顔を見つめた。
あの幻影を思い出した。記憶の潮の中で、凱スが壁に寄りかかり、「どうすればいい」と彼に尋ねていたのを。あの、もっと若く、より古い姿の亞倫は、そこに立って一人の男に自信を与えていたのだ。
彼は何年、こんなことを繰り返してきたのだろう。
あたしには分からない。
しばらくの沈黙。
「だが——」
彼は顔をこちらに向けた。
「風息谷までは付き合ってくれるんだろう?薬草師」
口調は軽かった。命令でも、懇願でもない。まるで答えをすでに知っていて、ただあたし自身の口から言わせたいだけのようだった。
「うん」
彼は笑った。ほんの僅かに。
そして、あたしに視線を送ってきた——あまり深く考えるな、というような意味だろう。
彼は身体を起こし、立ち去った。
……
あたしは一人、舷側に立ち尽くした。
風が吹き抜ける。
考えてみれば——対岸に着いたとしても、さらに風息谷へ行かなければいけない。風息谷は大陸の反対側だ。また長い距離を歩くことになる。
だが、歩き始める前に、まずは対岸に辿り着かなければ。
温かく、毛むくじゃらの何かが、あたしの肩に飛び乗ってきた。
帕夫だ。
いつ船室から抜け出してきたのか分からなかった。
彼女は鼻をあたしの耳になすりつけた。それからあたしの肩に這いつくばり、尻尾を背中に垂らしたまま、ゆっくりと動かなくなった。
あたしは何も言わなかった。
そうして立ち続けていた。帕夫を肩に乗せたまま。
二人して、海を見つめていた。
お読みいただきありがとうございます。
珂拉が故郷へ帰る……!?
ご安心ください。だからといって、この物語がすぐに完結するわけではありません。本作は時間の流れを少し丁寧に描いているため、まだまだ長い冒険が続いていきます。もしかすると、展開がややゆっくりだと感じる方もいらっしゃるかもしれません。もし何かご意見やご提案がありましたら、ぜひ聞かせてください。
それにしても、二年ものあいだ外の世界を旅してきた珂拉は、本当にさまざまな出来事に出会ってきました。洞窟の蜘蛛、森の強盗、巨大な神樹、誘拐事件、鉄港での争い……その一つ一つが彼女を遠くへ運び、今の彼女を形作ってきたのだと思います。
皆さんは、珂拉が故郷へ帰ることを応援しますか?
この先も、どうぞご期待ください。
——次回、第五節「海はあなたを知らない」




