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14-3 記憶の潮

記憶が現実の形を取る。


どうか、じっくり感じてみてください。

 冥潮を離れてから、もうすぐ二週間が経とうとしていた。


 毎日が同じだった。


 海。風。ロープの軋む音。水手たちは同じ動作を繰り返す——ロープを引く、帆を調整する、甲板を磨く、補修する、食べる、眠る。太陽は左から昇り、右へ沈む。その間に、新しいものは何ひとつなかった。


 あたしは舷側に座っていた。膝の上には水珠。甲板では帕夫が自分の影を追いかけてぐるぐる回っている——一回、二回、三回——やがて目が回り、その場に突っ伏して、尻尾をぴくぴくと二度ほど震わせた。


 前方に海鳥が何羽いるか、数えてみる。


 一羽。


 たった一羽だ。


 それは長いこと飛んでいたが、やがて東へカーブを描いて消えていった。


 今や、海鳥すら見えなくなった。


 ……


 「何が起きたの!?」


 艾琳の声が船室の方から爆発するように響いた——普段のあのキャピキャピとした元気さではない、本物の緊迫感。彼女は甲板に飛び出し、杖を握りしめ、目を凝らしてあらゆる方向を見回した。


 その後ろから凡スが続いてくる。


 すべての水手たちが振り返って彼らを見た。整理して怪訝な顔をする——甲板では何も起きていない。海はいつもの海。風もいつもの風だ。


 だが、凡スもついてきている。彼が理由もなく艾琳のドタバタに付き合うはずがない。彼まで出てきたということは、間違いなく——


 あたしは膝の上の水珠にそっと手を触れた。


 温度が違っていた。


 いつもより熱い。火傷するほどではない——何かの中身が活性化しているような熱さだ。まるで水珠の中の水が、速度を上げて流動しているような。


 太陽のせいだろうか。


 違う気がする。


 艾琳は船首まで駆け寄った。体全体を前傾させ、手すりに手をかけ、背伸びをして前方を見つめる。風が彼女の髪を旗のようになびかせていた。


 「魔力だ」凡スがあたしの隣に歩み寄り、平淡な声で言った。


 「非常に膨大な」


 艾琳と比べると、彼はまるで別の生物のように冷静だった。


 「魔力以外に、何か感じたか?」亞倫がいつの間にか隣に来ていた。


 「いいえ」凡スは首を振った。


 「だが、遠くからでもはっきりと感知できる。前方のあの領域に、何かがあるらしい」


 魔力。それはいったいどんな感覚なのだろう。


 あたしは水珠を見下ろした。それはやはり、普段より温かい。


 「まさか、海竜王?」あたしは尋ねた。


 「いや。まだ奴の縄張りには入っていない」亞倫は顎に指を当て、前方の海面を見つめながら言った。


 答えは出ない。凡スにしても魔力の量を感知できるだけで、その源を特定することはできなかった。


 「この魔力、なんだかすごく奇妙な感じがするの——」艾琳が船首から戻ってきた。少し息を弾ませていたが、その目は輝いている。


 「既知のどんな法陣とも生物とも違う。でも、すごく新鮮」


 言い終えると、彼女は甲板に直接座り込んであぐらをかき、杖を膝の上に横たえて目を閉じた。


 「行こう、邪魔をするな」凡スがあたしの袖を引いた。


 あたしたちは数歩離れた。


 少し歩いたところで、亞倫が足を止めた。


 彼の唇が動いていた——きわめて微かに、まるで自分を納得させるかのような動きだった。


 「まさか……」


 「何?」あたしには聞こえた。


 彼はあたしを見た。そして笑った——何かを思い出したような、少し不確かな笑みだった。


 「それは記憶だ」


 「記憶?」


 「お前が思い出すんじゃない」彼は言った。


 「あれが——お前に思い出させるんだ」


 「あれって?誰が?」


 「分からない。遥か古代の英雄か。何のためにそんなことをするのかもな」


 言葉が途切れた、その時——


 「空だ!見ろ!」


 水手の声が船尾の方から響いた。普通の叫び声ではない——声のトーンがいきなりオクターブ上がったような悲鳴だった。


 あたしはその声につられて上を向いた。


 影。


 空に影があった。


 巨大な。円い。落下してくる。


 石ころ——ではない。巨岩だ。空の半分を覆い隠し、頭上から影を落としながら叩きつけられてくる。船の全体がその影にすっぽり収まるほどの大きさだ。


 「恐れるな!」亞倫の声。大きく、よく通る声だった。


 だが、誰も聞いていなかった。


 あるいは——聞こえてはいても、体が言うことを聞かなかった。


 あたしの足はすでに動いていた。手で腰帯の袋を抱え込み——中には水珠がある——それから身を低くして、舷側になすりつくように縮こまった。本能だ。考える暇もなかった。


 甲板上の誰もが同じことをしていた——しゃがみ込む者、マストにしがみつく者、ロープの影に飛び込む者、地面に直接這いつくばって頭を両手で抱える者。


 巨岩の影が覆いかぶさってきた。空気の中に圧迫感が生じる——まるで耳の中に何かが押し込まれるような感覚。


 そして——


 何も起きなかった。


 衝突も。破裂も。音も。


 巨岩は甲板を通り抜けた。煙のように散ったのだ。


 あたしはしゃがんだままだった。手はまだ袋を抱え、心臓が激しく脈打っている。


 数秒経って、ようやく一人の人間が身を起こした。きわめて緩慢な動作だった。


 さらに数秒後、二人目が立ち上がった。


 全員がお互いを見合わせる。誰も喋らない。


 「幻影だ」亞倫の声が再び響いた。今度は叫び声ではなく、通常の音量だった。


 「すべては幻影。人を傷つけはしない」


 克萊吉恩がマストの上から顔を出した——彼もさっきはしがみついていたのだ。


 「亞倫。これは何だ」


 「『**記憶の潮**』だ」


 「ここには、みんなの心の深奥にある記憶が現れる」


 「よく味わうがいい」


 ……


 あたしがようやく立ち直った瞬間。


 甲板の空気が変わった。


 温度ではない——密度だ。まるで目に見えない何かが満たされていくような。そして——


 「珂拉。薬草の汁を無駄にしてはいけないよ」


 この声——。


 あたしの身体が凍りついた。


 恐怖による硬直ではない。もっと心の奥深い場所が、触れられたのだ。


 「このようにして集めるんだ」


 おばあちゃん。


 彼女はあたしの目の前にいた。甲板にしゃがみ込んで——いや、そこはもう甲板ではなかった。彼女がしゃがむ地面は土になり、傍らには数株 of 鉄線草 (Wait! "數株 of 鉄線草" -> "数株の鉄線草")

 彼女はあたしの目の前にいた。甲板にしゃがみ込んで——いや、そこはもう甲板ではなかった。彼女がしゃがむ地面は土になり、傍らには数株の鉄線草が生い茂り、手には石臼を持って何かをすり潰していた。


 同じだ。


 まったく同じだった。


 荒れた掌。薄いタコのできた指の関節。石臼を回す時の、手首のあの独特の角度——角度が違えば、薬効が散ってしまうと彼女は言っていた。


 彼女はあたしを見なかった。


 ただ自分の作業を続けている。まるであたしが隣にいることすら気づいていないかのように。あの日に戻ったかのようだった——ある日の午後、小屋の隙間から木漏れ日が差し込み、彼女の手の甲を照らしていたあの時に。


 あたしは膝をついた。


 膝が甲板に触れる。だが、土に触れているかのように感じられた。


 彼女の動作を見つめる。数回すり潰し、止め、中の薬草をひっくり返し、またすり潰す。


 あたしは手を伸ばした。


 彼女の袖に触れたくて。


 指先がすり抜けた。


 何も触れられなかった。


 「今回は俺と一緒に帰るんだ——俺たちの商会を立ち上げるぞ!」


 背後の声が、すべてを打ち砕いた。


 歓声。どこからともなく響く、数十人の歓声——だが甲板には明らかにそんなに多くの人間はいない。


 おばあちゃんが消えた。


 土も、鉄線草も、石臼も霧散した。


 甲板が戻ってきた。


 あたしは木板の上に跪いていた。手は宙に浮いたままで、指先が触れているのはただの空気だった。


 「……珂拉」亞倫の声が隣から聞こえた。


 「大丈夫か?」


 あたしはうつむいた。


 「砂が入っただけ」


 あたしは目をこすり、立ち上がった。


 船尾の方を見る。


 舵をとる位置に、人影が立っていた——克萊吉恩ではない。


 その人影は克萊吉恩よりも背が高く、肩幅も広かった。舵輪の背後に立つその姿は——まるでその場所が最初から彼のために用意されていたかのようだった。


 幻影だ。


 だが、その存在感は本物だった——ただそこに立っているだけで、人が自然と目を向けてしまうような、そんな何か。


 「今回の航海はよくやった!全員に褒美をやる!」


 歓声が再び響いた。今度はさらに大きかった。だがそれは甲板にいる水手たちの声ではない——記憶の中から響く、あの時の人々の歓声だ。


 凱斯。


 克萊吉恩の父親。


 克萊吉恩が話すのを聞いたことがある——「親父には、そういうものがあったんだよ、分かるだろ」。


 今、あたしはそれを見た。


 確かに違っていた。


 ……


 あたしは船室に戻って、帕夫の一家を見てみようと思った。


 下層へと続く階段の口まで歩いていき——


 足を止めた。


 下から声が聞こえてくる。


 「亞倫——どうすればいい」


 凱スの声だ。だが、さっきとは違っていた。


 さっき舵輪の背後に立っていた凱スの声は、開かれていた——まるで全員に向かって開け放たれた扉のように。


 今の声は閉じられ、低く抑えられている。他人に聞かせるべきではない何かが混じっていた。


 「自分でやるんだ。たとえ、フリだけでもな」


 亞倫の声だ。だが、着ている服が違っている——今の亞倫ではなく、もっと昔の姿。より若く、あるいは、より古い頃の彼だ。


 二つの幻影が下層甲板の通路に立っていた。凱スは壁に寄りかかり、腕を組んでうつむいている。亞倫は彼の向かいに立っている。


 「本当の指導者になる必要はない。ただ、そう見えるようにすればいいんだ」


 「ボロが出たらどうする」


 「その時は、どうすればいいか自然と分かるさ」


 あたしは階段の口に立ったまま。


 さっきまで舵輪の背後で意気揚々としていたこの男を見つめていた——壁に寄りかかる姿は、舵輪の背後に立っていた時の姿とは、まるで別人のようだった。


 あの意気揚々とした姿。


 あれは彼が毎日、練習して作り上げたものだったのだ。


 幻影が消えた。


 あたしは数段登り、甲板へと戻った。


 甲板の面々はそれぞれ自分の仕事に追われていた。誰も下層へ目を向けない。あの幻影が下の通路に現れたあの角度は——おそらく、あたしだけが見ていたのだ。


 克萊吉恩はマストの上にいて、こちらに背を向けたまま、何かを調整していた。


 彼は知らない。


 あたしはそこに立ち、克萊吉恩の背中を見つめた。


 「俺は親父のようにはいかない、まだまだだ」と彼が言っていたのを思い出す。


 おそらく、彼が思うほど遠くはない。


 だが、あたしが口を挟むべきことではない。


 ……


 それからの数日は、いたる所に幻影が現れた。


 甲板を歩いていると、突然誰かの記憶に踏み込んでしまう——麦畑、市場の角、開いた扉の奥にあるキャンドルの光。完全な情景ではなく、断片に近い。数秒もすれば消え去る。


 喜んでいる水手もいた。ある若い奴は何を見たのか、地面に座り込んで長いこと笑っていた——周囲の者が怪訝な目で見ているのも気にせずに。


 酷く落ち込んでいる者もいた。一人の水手は舷側に立ち、午後いっぱい無言のままだった。彼の側を通りかかった時、あたしはその匂いを嗅いだ——塩辛く、酸っぱく、まるで彼の胸の中で何かがゆっくりと溶け出しているかのような。


 喜んだり落ち込んだりを繰り返し、何かに何度も持ち上げられては落とされているような者もいた。


 不満を口にする者も現れ始めた——「船を飛ばせ」、「ここを離れろ」、「もう見飽きた」。


 手の中の水珠は、普段より温かいままだった。その熱は数日経っても引かなかった。


 あたしはそれを捧げ持った。


 *あなたも、見ているの?*


 返事はない。


 だが、その温もりは消えなかった。


 ……


 その日の午後、あたしは甲板で竺靡恩を見かけた。


 彼は舷側に立ち、仕事をしていなかった。手には何も持たず、ただ立ち尽くして、宙のどこかを見つめていた。


 彼の表情は、悲しそうでもなく、嬉しそうでもなかった。


 あたしには名づけようのないもの——まるで、長いこと眺め続け、見慣れてはいるけれど、二度と戻れない場所を見つめているかのような。


 あたしは近づき、彼の視線の先を追った。


 一枚の紙。何かに支えられるように空中に浮いていた。そこには一本の木が描かれていた——いや、何本もある。炭でスケッチされた線は歪んでいて、子どもの手によるものだった。だが、その木々はきわめて真剣に描かれていた。すべての枝葉が先端までしっかりと引かれている。


 それは彼の記憶だ。


 竺靡恩は長いこと見つめていた。


 それが何か、あたしは尋ねなかった。聞く必要はなかった。


 彼は顔をこすり、居住まいを正すと、仕事に戻っていった。


 ……


 あたしも父さんと母さんを見た。何度も。


 最初は食料庫の中だった——あたしが入っていくと、父さんが隅に腰かけて木を削っていた。彼は木を削る時、いつも鼻歌を歌う。歌詞はなく、ただの旋律だ。子どもの頃、あたしはその隣に這いつくばって削るのを見たり、鼻歌を聴いたりするのが一番好きだった。


 二度目は甲板の上だった。母さんの後ろ姿だ。彼女は何かを洗っていた——服?布?よく見えない。だが、その腰の曲げ方、髪を耳の後ろに払う仕草——間違いなく彼女だった。


 あたしは近づかなかった。


 遠くから見つめているだけだった。


 幻影が消え去るまで。


 ……


 夜。


 船室に横たわる。帕夫は枕元で丸まり、子松鼠たちは彼女の腹の下にひしめき合っている。


 波の音。木板の軋み。


 冒険に出てから、一年以上が経っていた。


 部落の匂いを忘れかけていた。


 その考えに、あたしはハッとした。


 悲しくなったからではない。


 自分がその匂いを長いこと思い出していなかったことに、今さら気づいたからだ。土の匂い、炊煙、雨に濡れた草葺き屋根の匂い。


 あの頃は外の世界を見てみたかった。


 実際に見た。


 想像とは違っていた。


 思っていたより広く。危険で。複雑だった。


 出会った人は想像より多く、失ったものも想像より多かった。


 この航海が終わったら。


 一度、帰ろう。

お読みいただきありがとうございます。


もしあなたなら、そこに何を見るのでしょうか。


過去の伴侶でしょうか。家族と過ごした時間でしょうか。それとも、幼い頃によく遊んだ遊び場でしょうか。


記憶はときに優しく、ときに人をその場に立ち止まらせてしまうものです。


過去を懐かしむことはできます。けれど、歩き続けることも忘れずにいたいですね。


——次回、第四節「海風」

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