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13-2 籠

黑稻相癸です。第二節。


この黒い霧、どうにも不吉な空気を漂わせていますね。皆さん、どうか気をつけて。

 目だけではない。


 すべての感覚が狂っていた。


 音が変わった——四方八方から聞こえてくるロープのぶつかる音、水手の足音、波が船体を叩く音、それらすべてが水の層を隔てて伝わってくるようだった。こもった、柔らかい、輪郭のぼやけた音で、まるで誰かが世界全体を一枚の布で包んでしまったかのようだった。


 鼻はもっと酷い。


 あのこもった匂いは漂ってきたのではない——注ぎ込まれてきたのだ。狭すぎる空間に押し込められたかのように、空気そのものが固体に変わり、重量と粘性を持ち、皮膚を圧迫し、鼻腔に押し入ってくる。錆びた銅の匂い。腐敗した酸化物。そして、あたしには名前の付けられない別の何か。


 それから、あたしは別のものを嗅ぎ取った。


 甲板にいる、すべての人の恐怖。


 一人のではない——全員のものが、同時に湧き出してきたのだ。汗腺の変化、副腎から分泌されるもの、心拍数が上がった後に毛穴から放出されるあの酸っぱい匂い。十数人の恐怖が混ざり合い、何かの鍋が沸騰しているようだった。


 船全体が熱を帯びている。


「冷静を保て!」


 克萊吉恩の怒声が霧を突き抜けた。


 その声が落ちた瞬間——


 白い光。


 世界全体が照らされた。内側から光ったのだ、霧そのものが発光している——目に刺さるほど白く、すべての影を焼き尽くすほど白く。


 そして消えた。


 雷鳴はない。


 だがその瞬間——あの一秒にも満たない白光の中で——全員が見た。


 一つの輪郭を。


 霧の中。船から大体二百歩のところ。


 巨大な。黒い。不規則な輪郭。白光の中で、それは切り抜かれた穴のようだった——周囲は明るく、そこだけが暗い。光がそこに行き着くと呑み込まれてしまうかのように暗かった。


 それはあたしたちに向かってきているわけではなかった。


 移動してはいるが、方向は逸れている。何かのルートを巡回しているかのようだった。


 そして世界はまた暗くなった。


 ……


「モルモトス(莫爾莫托斯)。」


 二つの声。


 ほぼ同時。


 亞倫は舷側に。克萊吉恩は船尾に。


 二人の口が同じ瞬間に、同じ名前を吐き出した。


 あたしは気づいた。だが今、それが何を意味するのか考えている時間はなかった。


 また一つの白光。


 無音の。


 今度はその輪郭の位置が違っていた。


 それはあたしたちの方を向いていた。


 稲妻が消えた。暗闇が戻る。


「船首を回せ——今すぐ——全員身を低くしろ——」


 克萊吉恩の声が変わった。いつものような大きく開けっ放しの怒声ではない——張り詰め、押し殺され、引き絞られすぎた弦が振動しているかのようだった。


 命令ではないようだ。


 自分自身に言い聞かせているかのようだった。


 水手たちが動く。暗闇の中では声と触覚だけが頼りだ——ロープが緩められ、また引き絞られる音、帆布の羽ばたき、舵輪が回る時の鈍い軋み音。


 また稲妻。


 それはもっと近くなっていた。


 さっきは二百歩。今は百歩。


 その瞬間の白光の中で、あたしはさらに多くを見た——


 身体は船一隻よりも広い。完全な形体ではなく、何らかの腫れ上がった、寄せ集められたようなものだった。暗紫色の筋肉と灰白色の壊死組織が混ざり合い、表面には絶えず蠢く瘤状の突起がびっしりと覆っている。両側には何かがあった——非対称で、曲がりくねった、まるでへし折られた後にまた生えてきた二本の大鎌のようなものが。


 あたしのたてがみがすべて逆立った。


 首の後ろから尾てい骨まで一気に逆立った。


 なぜならその形は——どの部分も一緒に生えているべきではないその形は——生きるために存在しているようには見えなかったからだ。


 人を怖がらせるためだけに存在しているようだった。


 暗闇が戻った。


 また閃光。


 それはもう後ろにはいなかった。


 船の左前方に。


 いつそこに着いたのか分からない。船は全速力で走っているのに、それは追う必要すら無いかのようだった——ただ違う位置に出現した。霧の中の距離というものが、それには意味をなさないかのようだった。


 ロープの音は止まらない。熟練の水手たちは依然として自分たちの仕事をこなしていた——帆を調整し、ロープを引き、身を低くする。手は止まっていなかったが、あたしは彼らの汗の匂いを嗅いだ。


「冷静になれ。」克萊吉恩の声がまた響いた。今度はさらに低く。


 ……


 そしてそれは船のそばに来た。


 近づいたのではない。到達したのだ。


 船上の微かな灯りがその一部を照らした——ほんの一部だけを。


 あの口。


 口の中の歯は歯ではなかった。様々な角度から乱雑に生え出たもので、長さも太さも方向もバラバラで、外側に反り返っているものもあれば、内側に曲がっているものもあり、半分折れたまま伸び続けているものもあった。歯の隙間からは粘り気のある、糸を引く暗色の液体が滴り落ちていた。


 あたしはそれを嗅いだ。


 それは恐怖の匂だった。人間の恐怖ではない——恐怖そのものの匂いだ。もし恐怖が物質であり、圧縮されて固体になり、それを太陽の下に放置して腐らせたとしたら、この匂いになるだろう。


 あたしの前には若い船員が立っていた。


 彼はあたしに背を向けていた。彼の肩が震えているのが見えた。それは抑えきれない恐怖、内側から外へと振動するような震えだった。彼の手は一本のロープを握りしめ、指の関節が白くなっていた。


 誰も武器を持っていなかった。


 誰一人として戦う姿勢を見せていなかった。


 あのもの——あの口——が彼に向かって傾き始めた。ゆっくりと。焦ることもなく、選び取るような態度で。


 一つの影が後ろから飛び出してきた。


 とても速い。音はない。


 片手が若い船員の後頸に落ちた——手刀。脊椎と頭蓋骨の境界を正確に断ち切った。


 若い船員の身体が崩れ落ちた。すべての支柱を抜かれたかのように、後ろへ倒れ込む。


 老水手が彼を受け止めた。片腕で彼の腰を抱え、後ろへ引きずる。


 あの口が止まった。


 あの巨大な、乱杭歯の並んだ口が、舷側から二歩と離れていない距離で止まったのだ。


 それから逸れた。


 猟犬が追跡していた匂いが突然途切れたかのように——その頭部全体が片側に逸れ、一瞬躊躇し、そして別の方向へと移動し始めた。


 若い船員は気絶した。


 彼はもう怖がれないのだ。


 ……


 老水手は気絶した人間を甲板の中央に引きずっていき、低い場所に置いた。


 あたしはその場に立っていた。


 手には帕夫の籠を抱えて。


 帕夫はその中でボールのように丸まり、全身の毛を逆立てて、身体を震わせていた。四匹の小松鼠は彼女の腹の下に潜り込み、ピクリとも音を立てようとしない。


 あたしの指は籠の縁を掴んでいた。とてもきつく。爪が編み目の模様に食い込んでいた。


 あの口が向き直った。


 あたしへ。


 速度は速かった。さっき若い船員を選んでいた時はまだ余裕があったが、今は無かった。それは真っ直ぐに向き直り、あの乱雑な歯が灯りの中で湿った光を反射し、口の中の粘液が幾本もの長い暗色の糸を引いていた。


 空気中のあの匂いが、吐き気を催すほどに濃くなった。


 両手があたしの肩に落ちた。


「冷静になれ。」


 亞倫の声。あたしの後ろ。とても近い。口が耳元にあった。


「あれは恐れる者しか食わない。」


 分かっている。


 さっき見た。老水手が若い船員を気絶させたら、あれは去っていった。


 分かっている。


 だが、あたしの手は籠を離さなかった。


 離そうと試みた。


 自分に言い聞かせる——離せ。下ろせ。あたしは怖くない。あたしは怖くない。


 あたしは籠から手を離した。


 帕夫が籠の中でウウと一声鳴いた。


 あの口は去らなかった。


 それはまだそこにいた。あたしにもっと近づいた。


 なぜなら、籠から手を離すというその動作こそが——恐怖そのものだったからだ。


 あたしは彼女に何かあるのを恐れている。だから離す。だが、離すということが、あたしが恐れていることを証明している。


 掴んでいても怖い。離しても怖い。


 どうしようと怖いのだ。


 あの口が開いた。さらに大きく。


 もうあたしの頭上にあった。


 後頸部に痛みが走る。


 とても重い。


 世界が片側に傾いた。


 倒れていく中で、あたしの目はまだ見開かれていた——亞倫が手を引く動作が見えた。手刀。老水手と同じ位置。


 彼の目はあたしを見ていた。


 冷たいのではない。別の何かだ。この種の決断を何度も下しすぎてきた人間が、またもう一度下したというような。


「亞倫、あんた——」


 あの口が退いていく。


 あたしはその光景を抱えたまま、沈み込んでいった。


 ……


 ……


 ……


 天井。


 木の。釘の痕。ひび割れの中に錆の染みがある。


 船員室だ。


「珂拉、目が覚めたのね。」


 艾琳の声。


 右側から聞こえた。彼女はあたしの隣の木箱に座り、杖を壁に立てかけ、手の中で何かを揉みしだいている。


「ごめんね。試したんだけど、あの霧には魔法が効かなかったわ。」


 彼女の口調は謝罪ではない。試して、確認して、そして結果を述べるという口調だった。


 あたしはまだ状況を完全に把握していなかった。後頸部の痛みはまだ残っていて、こもったような、何かに押し潰されたような痛みだった。


 それから彼女は手を伸ばし、横から何かを取った。


 あたしの籠。


 帕夫が中から顔を出した。あたしを見ると、ウウと一声鳴き、体全体を這い出させてあたしの胸によじ登り、頭をあたしの顎の下にすり寄せてきた。


 四匹の小松鼠も続いて這い出し、チーチー鳴きながら帕夫の尻尾を伝って登り、あたしの首元に寄り集まった。


 あたしは手を伸ばして帕夫を撫でた。


 彼女の毛はまだ逆立っていた。まだ震えている。


 亞倫の声が頭の中に響いた。


*あれは恐れる者しか食わない。*


 それからあの光景——籠から手を離したあたし。あの口は去らなかった。もっと近づいてきた。


 あたしが起きている限り、あたしは帕夫に何か起きるのを恐れてしまう。


 あの恐怖はあたしにコントロールできるものではない。「冷静」という二文字で抑え込めるものではなかった。


 だから彼はあたしを気絶させたのだ。


 それが唯一の方法だったから。


 あたしは籠を受け取り、膝の上に置いた。帕夫はその中で丸まり、尻尾を籠の縁に載せ、目は半開きで、ようやく落ち着いたかのようだった。


 外はまだ霧だ。船員室の木板の隙間から外を見ても、何も見えない。


 船がどこに着いたのか分からない。あのものが去ったのかどうかも分からない。


 あたしは籠を少しきつく抱きしめた。


 それから、少し緩めた。

お読みいただきありがとうございます。


あの怪物……皆さんはどんな姿を想像しましたか?ああ、本当に残念なことに、私には画力が足りなくて、その恐ろしい姿をそのままの形でお見せすることができません。あれは本当に、心の底からゾッとさせるものでした。

でも、ひとまずは大事に至らなくてよかったですね。


——次回、第三節「主角」

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