5-5 無声の崩壊
黑稻相癸です。第五節。
人は、希望があるから歩き続けることができます。
何百キロもの絶望を背負ってでも、その先に光があると信じれば。
……でも、もしその光が最初からなかったら?
あたしたちは廊下を後にした。
誰も振り向かなかった。だが全員が、心の中では振り向いたと思う。あの灰白色の体が暗闇の中に横たわっていた。まるでこの遺跡が自分から生やした一部分のように。
レノは速く歩いた。ふらつきながら。口の中でずっと呟き続けていた——
「もうすぐだ……少し待ってくれ……兄ちゃんがすぐ持ってきてやるから……」
彼は空気に話しかけていた。あるいは、もう聞こえない人に話しかけていた。
あたしはその後ろ姿を見ながら、胸がざわついた。狂ってる。みんな狂ってる。
「……本当に狂ってる」ドワーフが斧を引きずりながらあたしの隣を歩いた。斧の刃が地面を引っ掻き、擦れる音がした。その声にもう嘲りはなかった。ただ、疲れ果てた、諦めに似た重さだけがあった。
最後の扉。鍵はかかっていない。半開きだった。
レノが体当たりで開けた。
巨大な円蓋形の大広間。これまでどの部屋よりも広い空間だった——穹天井は高すぎて、夜光苔岩の光でも頂上が見えなかった。黴の匂いはなく、乾いた、ほのかな香りのある空気だった。とっくに廃れた薫香が、石壁の毛穴の中に何百年も残り、まだ完全には消えていなかった。
中央に、白玉の祭壇。
眩しいほど白かった。この暗い遺跡の奥深くで、あの白は汚れとは無縁に見えた——何らかの力がそこに働き、塵さえも寄せつけないでいるかのように。
祭壇の上に箱が置かれていた。
金色。宝石がちりばめられていた。暗闇の中で光を放っている——柔らかく、温かく、まるで呼吸しているような光だ。
美しすぎて、泣きたくなった。
「あそこに……」レノの声が裏返りそうになった。
「あそこだ!」
彼は飛びついた。転んだ。また立って走った。四つん這いで。
あたしたちも集まった。ザカでさえ息を呑んでいた。精霊アイラが柱に寄りかかり、顔に病的な赤みが一瞬走った。
「カイル……見てろよ……」
レノの震える手が、箱の縁に引っかかった。
カチャッ。
錠前が弾ける音。澄んでいた。雷のようだった。この静寂の大広間で、あの一音がこれまでの全ての戦闘、絶叫、崩壊よりも大きく響いた。
開けた。
固まった。
その後ろ姿が凍りついた。驚いての硬直ではない。あの——生命が根こそぎ抜かれたような硬直だった。
あたしも覗き込んだ。
空だった。
聖杯はない。薬もない。紙切れ一枚もない。灰があるだけだった。分厚く、何百年も積もった灰が。蓋が開いた気流の中でゆっくりと漂い散った——驚かされた亡霊の群れのように。
時間が止まった。
「……どこに?」アイラの声が夢うつつのようだった。
「何もないの?」
レノは答えなかった。手を入れて灰を掻き回した。一握り、また一握り。指の爪が金属の底を引っ掻いた。ジジジ。ジジジ。あの音は幽霊の鳴き声より聞くに堪えなかった。
「空だ……」ドワーフの手から斧が落ちた。ガシャン。彼はその場に座り込み、頭を抱えた。
「はっ……はははっ……空だ」
「嘘だ……嘘だ……」レノが壊れ始めた。箱を逆さにして振った。宝石を歯で噛もうとした。
「情報ではここだった……地図もここを示していた……」
彼は咆哮した。人間から出るべき声ではなかった——自分の喉ごと引き裂いたような声だった。
「なぜ空なんだ! 空である権利がこいつにはない!」
ドン! 金の箱が地面に叩きつけられた。宝石が砕け散った。欠片が亜倫の足元まで転がってきた。
「カイルがまだ待ってる……」レノは膝をついたまま、額を冷たい石段に押しつけた。涙と鼻水と血が渾然と混ざり合い、顔から白玉祭壇の台座に流れ落ちた。
「約束したのに……」
絶望が疫病のように空気に広まった。
アイラがずるずると床に崩れ、手の法杖がガタンと倒れた。ザカが振り向き、背後の石柱に拳を叩きつけた——石の一角が砕け、指の関節も裂け、血が滲んだ。
死よりも残酷な刑罰だ。希望を与えて、何百キロもの希望を背負わせてこれほど長く歩かせて、終点でこう告げる:全部嘘だった、と。
あたしは眩暈がした。吐き気がした。
亜倫を見た。
彼は俯いていた。足元の、金の箱から砕け飛んだ宝石の欠片を見ていた。泣かない。怒らない。恐ろしいほど平静だった。
「亜倫……」あたしの声が震えた。
「最初からわかってたの?」
亜倫が顔を上げた。目があたしを見ていた。でも同時に、遠い、彼しか行ったことのない場所を見ているようでもあった。
「知らなかった」
「じゃあなんで……一切驚かないの?」
亜倫が腰を折り、箱を拾い上げた。親指で表面の埃を払った。金属が指腹の下でもとの輝きを取り戻した——温かく、蜂蜜のような金色だ。
「見すぎたからだよ、珂拉」彼の声はとても静かだった。だが一語一語が石のように、あたしの胸に重く打ちつけた。
「この世の**奇跡**のほとんどは、開けてみれば……空っぽだ」
その瞬間、あたしには——崩れ落ちるレノよりも、彼の方が、ずっと心が痛かった。
お読みいただきありがとうございます。
あの白玉の祭壇と、金色の箱。
ファンタジー小説なら確実に奇跡が起こる場面ですが、この世界はそう甘くありません。
「この世の奇跡のほとんどは、開けてみれば……空っぽだ」
亜倫のこの言葉、彼がどれほどの空っぽな箱を見てきたのかを想像すると、胸が締め付けられますね。
彼らはどう立ち直るのか。
——次回、第六節「生きることの重さ」




