19-8 安寧の谷
白い霧に包まれた谷。
まるで生気がない……
こういうものは、あまり吸い込まないほうがよさそうです。
あたしたちは、ここに長く留まらなかった。
翌朝。
レノが朝食を食べ終えたばかりのところで。
アーロンが、風息谷の話を切り出した。
レノは器を片づけていた。
話の途中で。
手が止まる。
「駄目だ」
返事は早かった。
「今、あそこがどうなってるか誰にもわからない」
「俺たちが出る前から、息ができなくなった奴が大勢いた」
「もっと遅くまで残った奴は……」
そこで言葉を切った。
昨夜、ようやく少し戻った顔色が、また暗くなる。
アーロンは、表情を変えない。
「だから見に行く」
「行って何ができる?」
レノが彼を見る。
「あれは怪物じゃない」
「何かを斬れば終わる話じゃないんだ」
アーロンはうなずいた。
「知ってる」
それから。
あたしを見る。
「こっちには専門家がいるだろ」
……
あたしは横で食べていた。
気づけば、みんなこっちを見ている。
ザカまで手を止めていた。
口には、まだ半分のパン。
「……あたし?」
レノも、こっちを見る。
本当に少し考えたらしい。
「そうなのか?」
危うくむせるところだった。
アーロンは平然としている。
「少なくとも、お前たちは生きて帰ってきた」
レノの表情が少し緩む。
「お前と旅すると、そんなに面白い目に遭うのか?」
「死にかけてばっかりよ」
あたしが答える前に。
横からエイリンがぼやいた。
あたしはすぐうなずく。
まったくその通り。
レノが笑った。
アイラは反対側に座っている。
ずっと何も言わなかった。
レノが彼女を見るまでは。
「お前も一緒に行け」
アイラが顔を上げた。
「死ねって?」
「お前のほうが詳しい」
レノは言って。
また、こっちを見る。
「姉さんもいる」
「専門家もいる」
……
あたしは彼を見る。
彼もあたしを見る。
口元には、まだ少し笑いが残っていた。
わざとだ。
絶対わざとだ。
「大丈夫」
エイリンが、もう腕を伸ばしてあたしの首へ回している。
「コラって、すごいんだから」
あたしは押しのけた。
「昨日、キンクス食べようとしてたでしょ」
「聞いただけよ」
「食べられるかって」
「それも質問でしょ」
……
もういい。
結局、レノは本気で止めなかった。
ただ、今わかっている風息谷のことを、全部話してくれた。
たいした量じゃない。
みんなが離れてから。
誰も戻っていないからだ。
……
準備するものは、思ったより少なかった。
水。
保存食。
よく使う薬草を何種類か。
縄。
灯り。
物を入れる小瓶。
それから、たくさんの布。
布を何枚かに切り分けた。
全員に、鼻と口を覆わせる。
アイラは前に言っていた。
風息谷の病は、急に出るものじゃない。
最初は、ときどき咳が出るだけ。
疲れやすくなる。
胸が苦しい。
熱が出る人もいる。
出ない人もいる。
それからしばらくすると。
どんどん弱っていく。
最後には、数歩歩くだけで息が切れる。
一番おかしいのは。
最初は数人だったこと。
次は十数人。
そのあと、ほとんどの家から出た。
「長くいるほど、ひどくなる?」
あたしが聞く。
アイラはうなずいた。
「出ていった人は?」
「あのころ、長く離れた人はいなかった」
少し考える。
「商人ならいた」
「何日か滞在した商人もいたけど、具合が悪くなったって話は聞いてない」
ますます変だ。
本当に人から人へうつるなら。
商人だけ何ともないなんて、おかしい。
うつるまでが、ものすごく遅いのか。
それとも、人から来るものじゃないのか。
毒?
ありえないとは言えない。
でも、谷じゅうの人間が同じ毒にやられるなんて。
しかも、あんなに長く続く?
わからない。
……
最後の布をアーロンへ渡す。
受け取らない。
そこで気づいた。
もう自分で巻いている。
「何かわかったか?」
「少しだけ」
「毒か?」
あたしは彼を見る。
「知ってるんじゃないの?」
「知らない」
「お前が専門家だ」
……
布を握る。
そのまま口へ詰め込みたくなった。
でも我慢した。
「普通の病気っぽくないって思ってるだけ」
「うん」
「少しずつ溜まる毒かもしれない」
「うん」
「だから、とりあえず覆って」
アーロンはうなずく。
「さすが専門家」
……
本当に腹が立つ。
……
新しい集落から風息谷までは。
思っていたより近かった。
馬車は持っていかない。
必要なものだけ背負った。
朝に出て。
昼になる前には。
山道が下り始めた。
アイラがずっと先頭を歩く。
この辺りは、あたしたちよりずっと詳しい。
道に見えない場所でも。
一度も迷わない。
進むほど。
木が増えていく。
両側の山も、少しずつ迫ってくる。
風が弱くなった。
水気の匂いがする。
濃い。
湿った土。
苔。
腐った葉。
どれも、普通の匂いだった。
最後の坂を越えるまでは。
アイラが止まった。
あたしたちも止まる。
目の前が風息谷だった。
ちゃんと見るのは、これが初めてだ。
思っていたより大きい。
両側の山が内側へ寄って。
真ん中に、広い低地の森が沈んでいる。
もっと奥には、いくつか屋根も見えた。
ただ。
谷全体の上に。
白いものが浮いていた。
霧。
高いところから見ると。
谷底を何かが埋めているみたいだった。
全部が隠れているわけじゃない。
木の梢は出ている。
家も見える。
ただ、低いところほど。
白い。
アイラは下を見つめていた。
長いあいだ。
「濃くなってる」
あたしは彼女を見る。
「前は、こんなに?」
首を振る。
「霧はあった」
「でも、こんなんじゃなかった」
あたしは両側を見る。
確かに、ここは低い。
周りを山が囲んでいる。
上では風が吹いていても。
谷までは、ほとんど入ってこない。
ただの霧だったとしても。
消えるまで、ずいぶんかかりそうだ。
顔の布を引き上げる。
「案内して」
アイラは、そこでようやく我に返った。
先へ下りていく。
……
白い霧は、思ったより薄かった。
中へ入ってしまえば。
かなり先まで見える。
ただ、何もかもに薄い白がかかっている。
入った瞬間、変な匂いがすると思っていた。
しない。
湿った土。
草。
樹皮。
水。
それから、知らない花が何種類か。
全部、普通だ。
道の脇には小さな鹿までいた。
あたしたちが近づくと。
顔を上げて、何度かこちらを見る。
すぐ木の間へ消えた。
鳥もいる。
枝の上で何羽か鳴いている。
反対側の草むらからも、小さな何かがずっと走り抜けていた。
エイリンは、ずっと見ている。
とうとう我慢できなくなったらしい。
顔の布へ手をかけた。
あたしはすぐつかむ。
「何してるの?」
「ここ、平気じゃない?」
横を指す。
「動物もいるし」
「ここに住んでるとは限らないでしょ」
その手を押し戻した。
「まだ着けてて」
エイリンは、さっき鹿が消えたほうを見る。
結局、外さなかった。
そのまま進む。
……
風息谷の村は。
新しい集落より、ずっと大きかった。
家も古い。
石の家。
木の家。
斜面へそのまま寄せて建てた家もある。
道には草が伸びていた。
屋根の角が崩れている家も、いくつかある。
それ以外は。
何もない。
死体もない。
黒くなった地面もない。
あたしが勝手に想像していた、変なものもない。
井戸も残っている。
桶が横に倒れていた。
扉が閉まっていない家まである。
風が吹くと。
少しだけ揺れる。
きい。
それから、また戻る。
みんながちょっと出かけただけみたいだった。
まだ帰ってきていないだけ。
アイラは村の入口に立ったまま。
ずっと動かなかった。
ここには、知っているものがいくつもあるんだろう。
聞かなかった。
あたしは先に、一番近い家へ向かった。
「離れすぎないで」
一応、声をかける。
「お互い見えるくらいでいいから」
ザカは井戸へ。
ヴァンスとエイリンは、別の家を見に行く。
アイラもしばらくして後を追った。
アーロンは、どこへ行ったかわからない。
扉を押す。
……
中は暗い。
最初に鼻へ入ったのは、埃の匂い。
次に木。
それから、布を長くしまっておいたときの、こもった匂い。
机。
椅子。
寝台が一つ。
壁には、乾いた植物が何束か掛かっている。
そのうち二つは知っていた。
どっちも普段、煮込みに入れるもの。
変わったものじゃない。
机の上には器。
中は空。
横には、もう硬くなった布が一枚、押さえつけられていた。
しゃがんで寝台の下を見る。
埃。
壁際も。
どこもかしこも。
ここで本当に人が死んだとしても。
何もわからない。
立ち上がる。
指で机の表面をなぞった。
指先に、薄く埃がつく。
細かい。
指でこする。
ざらつかない。
油っぽくもない。
少し鼻へ近づける。
ほとんど匂いもしない。
ただ……
指を見る。
白い。
家を長く放っておけば。
埃って、こんな色だったっけ?
……違う気もする。
窓枠を見る。
そこにも一層、積もっている。
扉の横。
棚の上。
隅の蜘蛛の巣まで。
白く汚れていた。
「毒か?」
「ひゃっ!」
体が跳ねた。
耳が一気に伏せる。
アーロンが扉のところに立っていた。
いつの間にか、指にも白い粉をつけている。
「後ろから急に喋らないで!」
「ずっと立ってた」
「そのほうが怖い!」
アーロンは指先を見る。
「少し舐めてみた」
固まる。
「何したって?」
「舐め――」
「聞こえてる!」
立ち上がった。
「馬鹿なの!?」
「毒っぽくない」
「毒を食べても、あなたなら平気でしょ!」
アーロンが止まる。
……
数息、考えて。
「それもそうだな」
殴りたい。
本当に。
「次から勝手に食べないで!」
「昔は便利だった」
「どこがよ!」
この人、百年以上も何して生きてきたんだろう。
もう相手をするのをやめた。
手についた白い粉を、もう一度見る。
少なくとも、強い苦味や鼻を刺す匂いはない。
アーロンの舌もしびれていない。
今わかるのは、それだけ。
毒かどうかは。
まだわからない。
粉を小瓶へ入れた。
外へ出る。
……
みんな、まだ近くを探していた。
ザカは井戸の蓋を開けて。
下を覗いている。
ヴァンスは、どこかの屋根に上がっていた。
エイリンとアイラは、少し大きな家の中。
そっちへは行かなかった。
先に石を見つけて座る。
さっき小瓶へ入れた白い粉を、少し掌へ出した。
細かすぎる。
風が少し吹くだけで。
散っていく。
慌てて、もう片方の手で覆った。
これだけのものが。
どこから来る?
ただ家に積もった埃なら。
外にまであるはずがない。
でも、ここへ来る途中にも。
石。
草の葉。
木の根。
薄く白いものが乗っている場所があった。
あの白い霧は?
同じもの?
考えていると。
アイラが後ろから来た。
隣に座る。
「何か見つかった?」
「ううん」
小瓶を見せる。
「これだけ」
アイラが見る。
「灰?」
「たぶん」
言ってから。
自分でも違う気がした。
アイラは、それ以上聞かなかった。
水袋を出す。
顔を上げて、一口飲んだ。
次の瞬間。
「ひゃっ!」
飛び上がった。
水まで地面へこぼれる。
こっちまで驚いて、耳がぴんと立った。
「どうしたの?」
アイラが横へ一歩退く。
自分の脚を見る。
「何かいる」
「何?」
「わからない」
眉を寄せた。
「今、何かに吹かれた」
……
吹かれた?
さっき座っていた場所を見る。
石の横。
細い割れ目がある。
そのまま地面の下へ続いている。
しゃがみ込む。
手を近づけた。
数息。
何もない。
もう少し待つ。
……
指先を。
冷たいものが撫でた。
そのまま動かない。
もう一度。
風だ。
本当に吹いている。
弱い。
でも、ずっと石の隙間から漏れている。
横の細い草まで、かすかに揺れていた。
それに。
風が出るたび。
白いものも一緒に舞う。
目を細める。
手を伸ばして受けた。
白い粉が少し、手の甲へ落ちる。
そのとき。
横が目に入った。
アイラがさっきこぼした水。
乾いていた石が。
そこだけ濡れている。
なのに白い粉は、水と一緒に流れていなかった。
逆に集まっている。
石に貼りついて。
小さな塊になっていた。
見つめる。
「アイラ」
「ん?」
「水、貸して」
水袋を渡してくれる。
慎重に傾ける。
一滴だけ。
掌の乾いた粉へ落とした。
白い粉が、すぐ一つに縮む。
指先で触った。
粘る。
泥じゃない。
粉でもない。
少しぬるっとしている。
指を離すと。
皮膚に糸みたいについてくる。
動けなかった。
それを見る。
鼻の中。
喉の奥。
人は毎日、息をする。
風息谷の人たちは、毎日この白い霧の中にいた。
一日。
二日。
一か月。
一年。
急に、息を吸いたくなくなった。
「どうしたの?」
アイラが聞く。
顔を上げた。
「最初は、どんな症状だった?」
「咳」
「ほかは?」
「胸が苦しくなって」
「そのあと、どんどん息がしにくくなった」
手の上の塊を見る。
それ以上は聞かなかった。
まだ足りない。
ただ。
似すぎている。
手をきれいに拭く。
もう一度、石の割れ目へ寄る。
白い粉は、今も風に乗って出てくる。
多くはない。
でも、止まらない。
割れ目を目で追った。
この石の下だけじゃない。
そのまま伸びて。
横の地面を抜け。
さらに奥。
村の後ろにある岩壁へ続いている。
立ち上がる。
「この辺に洞窟ある?」
早口になった。
アイラが少し驚く。
同じように岩壁を見る。
「洞窟?」
「うん」
「わからない」
眉を寄せて、しばらく考える。
「小さいのなら、たくさんあるけど」
「大きいのは……」
首を振る。
「前は、わざわざ探したことなかったから」
それでいい。
小瓶を袋へ戻す。
そのまま叫んだ。
「アーロン!」
返事がない。
「ザカ!」
遠くの大きな体が、井戸の横で顔を上げた。
「なんだ?」
「行くよ!」
ザカはすぐ来た。
一言目。
「見つかったか?」
二言目。
「腹減った」
……
「もうすぐ」
「どっちがだ?」
「知らない」
後ろの岩壁を指す。
「先に洞窟探して」
ほかのみんなも、すぐ集まった。
さっき見つけたものを、簡単に話す。
これが答えだとは言わない。
ただ。
割れ目から風が出ていること。
白い粉が一緒に出てくること。
水に触れると、粘つくこと。
アーロンはしゃがんで割れ目を見た。
今度は食べなかった。
……
その岩壁は、遠くから見るよりずっと大きかった。
下は植物だらけ。
蔓。
低木。
苔。
場所によっては、石そのものが見えない。
割れ目が続いているだいたいの方向へ、みんなで散った。
歩きながら探す。
でも、ここはどこも湿っている。
植物も多い。
何かを見分けるのが難しい。
アイラにも心当たりはなかった。
ザカは、とうとう手で蔓を引きちぎり始めた。
しばらくやったけど。
何もない。
エイリンは、ずっと上を見ている。
何を見ているのかはわからない。
最後に見つけたのは。
ヴァンスだった。
少し高いところから。
一声、あたしたちを呼んだ。
みんなでそっちへ行く。
最初は。
あたしにも見えなかった。
ただの蔓の壁だ。
分厚い。
岩壁の上から、ずっと垂れ下がっている。
葉が何枚も重なって。
下には枯れ枝が積もっていた。
ヴァンスが手を伸ばす。
端を少しどけた。
後ろに石がない。
黒い。
一歩、前へ出る。
すぐ風が顔へ当たった。
顔を覆う布越しでも。
わかる。
冷たい。
湿っている。
それから、ほんの少し匂いがした。
甘い。
土が混じっている。
少しだけ、黴っぽい。
「ここだ」
あたしが言う。
ザカは、もう刀を抜いていた。
何度か振る。
太い蔓が一本ずつ切れる。
地面へ落ちた。
洞口が、少しずつ姿を見せる。
思っていたより大きい。
少なくとも、ザカが頭を下げなくても入れる。
中には、まったく光がない。
なのに白い霧だけが。
洞窟の中から、ゆっくり外へ流れている。
水みたいに。
地面を這って。
洞口まで行く。
中を覗いた。
何も見えない。
黒いだけ。
「火、いるか?」
ザカは、もう火打ち石へ手を伸ばしていた。
「駄目」
あたしの返事が早すぎた。
手が止まる。
「なんでだ?」
洞口の辺りを指した。
地面。
岩壁。
蔓の裏。
どこも白い粉だらけ。
村より多い。
厚いところは。
踏むだけで舞い上がる。
「火をつけたら」
「中の熱い空気が、一気に上へ動く」
暗い奥を見る。
「これ、全部舞い上げたくない」
ザカは、すぐ火打ち石を戻した。
よし。
エイリンを見る。
「灯りの魔法、できる?」
エイリンは、もう手を上げている。
「それなら簡単」
指先に、小さな光が灯る。
ほんの少し。
それが、ゆっくり大きくなって。
白く光る球になった。
掌の上に浮かぶ。
エイリンが前へ送る。
一歩。
二歩。
光が洞窟へ入る。
最初に見えたのは。
地面。
白い。
次に左の壁。
そこも白い。
光が、さらに奥へ進んだ。
そこで気づいた。
あれは石じゃない。
一つ。
二つ。
何十。
数えきれない。
全部、キノコだ。
小さいものは爪くらい。
岩の隙間へぎっしり生えている。
大きいものは、あたしの腰近くまである。
丸い傘が、何層にも重なって。
地面から。
洞壁を這い上がり。
天井から逆さに生えているものまである。
全部、白い。
奥へ行くほど。
増える。
光の球が、ゆっくり進む。
白も一緒に、洞窟の奥へ奥へ続いていく。
終わりなんてないみたいに。
誰も喋らなかった。
アイラは、あたしの横に立っている。
顔から血の気が引いていた。
ザカは刀を握っている。
でも前へ出ない。
ヴァンスは、ただ上を見る。
エイリンまで黙った。
匂いがした。
さっきの、湿った甘い匂い。
洞窟の奥から、ずっと流れてくる。
薄い。
でも、どこにでもある。
白い粉が一粒。
光の中をゆっくり漂った。
もう一粒。
また一粒。
手を上げる。
袖へ落ちるのを見る。
外の霧。
村の灰。
石の隙間から吹き出していた白い粉。
ずっと、同じものだった。
もう一度、洞窟を見る。
白い傘。
何層も。
何層も。
山の奥まで生え続けている。
「これ……」
あたしの声が、少しだけ洞窟へ響く。
それから暗闇に飲まれた。
それ以上は進まなかった。
ただ、洞窟いっぱいの白を見る。
白いキノコ。
どうやら、うちの専門家もちゃんと役に立つみたいです。
あの白い粉を辿って、本当に洞窟を見つけました。
でも、この下でいったい何が起きて、
こんなにたくさんの白キノコが生えたのでしょう?
次回——
第九節 帰流




