18-3 残していく場所
もう少し、見て回りましょう。
見たことのない植物がこんなにたくさんあれば、コラもきっと嬉しいはずです。
それに、どうやら小さな案内役も増えたようです。
小さな樹精と一緒に、あたしがまたみんなへ追いついたとき。こいつは思っていたよりずっと速く歩いた。
細い根を柔らかな草地へ交互に下ろし、ぺた、ぺたと進む。二歩ごとに幹全体が揺れた。少しおかしい姿だった。
でも、さっきの大人の樹精たちより、ずっと身軽だ。
歩きながらも、あたしはやっぱり何度も止まってしまう。
見知らぬ葉の匂いを嗅ぐ。
草の茎に生えた細い毛を触る。
石の隙間で光る菌を眺める。
小さな樹精は急かさなかった。
横で待っていて、あたしがまた立ち上がると、ぺたぺた後をついてくる。
少し歩いたとき、急に一つ思いついた。
「おまえ、何歳?」
小さな樹精が止まる。
梢が少し、あたしへ傾いた。
「何菜?」
一瞬、何を聞き返されたのかわからなかった。
それから、歳というものをこいつが知らないのだとわかった。
「ええと……どれくらい生きてるの?」
今度は通じた。
とても真剣に考える。
前の隊との距離が少し開くほど考えてから、言った。
「たぶん……三つの年輪」
「三つ?」
聞き間違えたかと思った。
三年。
なのにもう歩けて、話せて、植物の採り方まで教えてくれる。
樹精を、普通の木と同じには考えられないらしい。
小さな樹精も聞いた。
「きみは? 猫さん」
足が少し止まる。
猫さん?
でもこいつにとっては、近くで獣人を見るのは初めてなのだろう。林にいる毛の生えた小獣と、あたしは大差ないのかもしれない。
「コラって呼んで」
あたしは言った。
それから、わざとこいつと同じ言い方で答える。
「あたしは二十の年輪を生きた」
小さな樹精の梢が、ゆっくり持ち上がった。
「いっぱい」
二十なんて全然多くない、と言いかけた。
でもすぐに、さっきの大人の樹精を思い出す。
アーロンは百年だと言った。
あれは、まだ百年か、と答えた。
二十の年輪は急に、地へ落ちたばかりの葉みたいに短くなった。
少し進んでから、また聞く。
「どうして、ずっとあたしについてくるの?」
小さな樹精は梢を傾けた。
前を歩くアーロン、エイリン、ほかのみんなを指さす。
「どうしてあの人たちじゃないの?」
小さな樹精は、当たり前みたいに答えた。
「きみは植物が好きだから」
足取りが少し遅くなる。
好き?
最初に思ったのは、否定だった。
あたしは植物が好きなわけじゃない。
使うだけだ。
血を止める。
熱を下げる。
痺れさせる。
魔力を補う。
すり潰し、煮て、命を助ける薬にする。
腰の薬袋には、干した葉、切った根、粉にしたものが詰まっている。好きだと言うなら、少し怖い好き方に聞こえる。
「どうしてわかるの?」
小さな樹精は細い枝を伸ばし、腰に下げた水珠を指した。
「母の友だちが言った」
水珠へ触れる。
中の古いエルフは、とても静かだ。
あれのことだった。
森精霊と水珠の中のあの人は、あたしにはまったく聞こえないやり方で話せるらしい。そしてどこでどう間違えたのか、あたしは植物が好きだという結論になった。
ずいぶん深い勘違いだ。
あたしが好きなのは薬だ。
何かを植えて、また自分で育っていくことなんて、前のあたしはほとんど考えたことがなかった。
でもアーロンは、何度も言っていた。
何かを採るなら、どう戻ってくるのかも知っておく方がいい、と。
さっき小さな樹精も、根を採る前には種を残せと教えた。
結局、訂正はしなかった。
……
前の隊は低い岩のそばで止まっていた。
夜はもう深い。それでも繁茂仙境は、本当の闇にならない。近くの低木には丸い橙色の実が垂れ、皮には温かな黄色い光まで浮いていた。
小さな樹精が指さす。
「食べられる」
最初に手を伸ばしたのはザカだった。
一つ摘み、匂いを嗅ぎ、大きくかじる。
果肉が割れると、汁がそのまま手首を伝って流れた。
何度か噛み、うなずく。
「甘い」
ザカにしては、ずいぶん高い評価だった。
そこでやっと、ほかのみんなもそれぞれ実を取った。
果肉は柔らかく、水気がびっくりするほど多い。一口かじると、すっきり甘い汁がすぐ口いっぱいに広がった。とても淡い花の香りもある。
リックは一つを一気に食べ、すぐ二つ目を摘みにいく。
「船の干し飯より、ずっとうまい」
小さな黒球は食べない。
少なくとも、今は。
エイリンのそばで丸くなり、近くの魔力を静かに吸っていた。気のせいか、至頂群峰を離れたときより、少し丸くなったように見える。
エイリンが見下ろす。
「食べすぎじゃない?」
小さな黒球は答えない。
止まりもしない。
みんなが食べているのに、あたしは低い岩のそばへ這いつくばっていた。
そこには青緑の地衣が広く貼りついている。
誰かが石の上へ細かな毛を一枚敷いたように薄く、表面には爪より小さな袋みたいな粒がたくさん生えていた。ほとんどは同じ青緑色で、少しだけ暗い赤のものが混じっている。
手を伸ばし、そっと触れた。
縮まない。
液も滲まない。
ノートは膝に広げてある。
青緑地衣。
表面に小さな袋。
暗赤色は、成熟の印かもしれない。
用途不明。
そこら中に生えているからといって、毒がないとは思わない。そんな間違いは一度すれば、大抵二度目を直す機会がない。
小さな樹精がぺたぺた歩いてきて、岩のそばへ伏せた。
「それは芽胞」
細い枝で、暗赤色の粒を指す。
「赤い。時間が来た」
「時間が来た?」
「行ける」
赤い小さな粒を見る。
成熟すれば親から離れ、別の場所へ落ちて、新しい地衣になるのだとゆっくりわかった。
「持っていっていい?」
小さな樹精はすぐ、うなずいた。
「いいよ」
「どうして?」
「もともと、行くもの」
少し止まる。
何も取ってはいけない、という決まりじゃない。
まだ必要としている部分を、奪ってはいけないのだ。
熟して、もともと離れる芽胞なら採っていい。
あたしは数粒だけ丁寧に取り、乾燥袋へ入れた。大半は、元の場所に残した。
ノートにも一行増える。
成熟した芽胞は採取可。
試して植える。
たぶんこれは、あたしが初めて持ち出す植物だった。
食べるためでもない。
すぐ薬にすり潰そうというわけでもない。
ただ、見てみたかった。
別の場所でも育つのかどうか。
「コラ、見て!」
エイリンが少し離れたところから走ってきた。両手に、一枚の緑の葉を乗せている。
小さな樹精はその葉を見るなり、あたしにわからない言葉を一つ言った。
エイリンが止まる。
「傷つけないでって」
葉を見る。
「葉っぱ一枚に?」
エイリンは答えず、手を低くした。
次の瞬間、葉が動く。
葉の縁の下から、小さな脚が何本かゆっくり出てきた。エイリンの手のひらを這い下り、草地へ落ちてから、地面に張りつくように前へ進む。
さっき、これが這うのを見ていなければ。植物か動物か、あたしにはまるで見分けられなかった。
小さな樹精が言う。
「葉獣」
近くで伸びている蔓を指さす。
「育ちすぎる友だちを食べる」
まだよくわからない。
小さな樹精はあたしを少し先へ連れていった。そこには葉獣に食べられていない蔓が一かたまりあり、太い葉を幾重にも重ねて、下の低い花をすっかり覆っていた。
小さな花は、細い茎を少しだけ影から伸ばしている。
そこで、ようやく理解した。
植物の中には、伸び続ければ、ほかの植物をみんな押し潰してしまうものがある。
葉獣は、育ちすぎる柔らかな葉や蔓の芽を食べる。遅く育つ植物も光を見られるように。
繁茂仙境があれほど茂っているのに、一種類の木や蔓にすっかり沈められていないのは、ここに魔力が多いからだけじゃない。
食べるものがいる。
種を運ぶものがいる。
死んだものを土へ戻すものがいる。
育ちすぎるものを、少しゆっくりにするものもいる。
この島では、すべてが必死に伸びているわけじゃない。
どの命も、ほかの命に少しの場所を残していた。
あたしはそれを書き留めた。
薬じゃない。
でも、とても大事だと思った。
小さな樹精が急に枝を上げる。
小鳥が一羽飛んできて、その枝へとまった。
手のひら二つ分ほどの大きさ。羽は金色で、頭には白い冠羽が一房ある。一番変わっているのは翼が二対あることだ。たたむと体の横で何層にも重なり、飛ぶと四枚の翼が別々に羽ばたくのが見えた。
羽の縁には、ごく淡い光が透けている。
エイリンがすぐ近寄る。
「鳥にまで魔力があるの?」
「違う」
小さな樹精が言う。
「この子が食べる友だち」
近くの果樹と花むらを指す。
この鳥は長いあいだ、魔力の多い果実と種を食べてきたから、体がゆっくりこんなふうになったのだ。
エイリンの目がすぐ光る。
「外へ連れていったら? 光は消える? 子供も翼が四枚になる? 普通の餌に替えたら――」
小さな樹精は固まった。
何を答えればいいのか、まるでわからないらしい。
あたしは聞く。
「ここの植物は、みんな魔力が多いの?」
「大半は」
「何に使うの?」
小さな樹精は真剣に考えた。
とても長く考えてから、ようやく言う。
「……きれい?」
あたしは固まった。
エイリンが笑い出す。
もう聞かなかった。
こいつにとって、魔力はもともとここにあるものだ。
植物はもともと光る。
鳥はもともと翼が四枚ある。
大陸の世界が、どれだけそういうものを欠いているか。こいつは知らない。
それでいい。
知らなくていいこともある。
小さな樹精が、急に梢をエイリンのそばへ向けた。
小さな黒球を長いあいだ見つめる。
「あれ、まだ絶えてないの?」
みんなの動きが止まる。
あたしは小さな黒球を見た。
絶えた?
エイリンがすぐ聞く。
「あの子たちは絶えたの?」
小さな樹精は梢を振った。
「わからない」
母が教えてくれたことを、伝えているだけだ。
「母は、ずっと見てないって言った」
エイリンは目を閉じ、遠くの木の話を聞くようにした。
しばらくしてから口を開く。
「森精霊は……百年以上、見ていないかもしれないって」
白礁にいた闇の生き物を思い出す。
もともと、あれらは少ない。
小さな黒球は魔力しか食べない。大陸の魔力は繁茂仙境ほど濃くない。普通の場所にずっといれば、きっと生きにくい。
急に思った。
あたしたちが、こいつを外へ連れ出していいのか?
小さな黒球は、まだ草の上に伏せている。
わからないのか、わかっていて気にしないのか。
あたしには答えがなかった。
小さな樹精はもう、エイリンへ気を移している。
「きみも母の声が聞こえる?」
もう一つ付け加えた。
「金の葉の生き物」
エイリンは少し驚き、髪へ触れた。
「金の葉? これのこと?」
小さな樹精は嬉しそうに枝を揺らす。
それから二人は話し始めた。
エイリンはずっと聞く。
小さな樹精はずっと答える。
でもたぶん、半分くらいは互いにわかっていない。
あたしはもう、薬草へ戻った。
さっき小さな樹精は、自然に落ちた薄い葉を何枚か採るのを許してくれた。表面は滑らかで、厚い蝋の層はない。触ると、ほとんど水気を帯びている。
まず、生えている場所を見た。
水の近く。
土はとても湿っている。
近くの石にも、ずっと水滴がついている。
ノートに書く。
葉は薄い。
乾きに弱いかもしれない。
もう少し待った。
一種類だけじゃない鳥が、花蜜を吸いに来る。何匹かの小獣も、舌を出して舐めている。小さな樹精も確かめてくれた。
「食べられる」
そこで初めて、花蜜をほんの少し絞った。
まず匂う。
刺激の匂いはない。
次に、舌先へ少しだけ触れる。
ほとんど甘くない。
でもすぐ、体の中に覚えのある小さな温かさが出てきた。
蘊魔草と雷脈草の汁を飲んだあと、ゆっくり広がる力に似ている。
なのに今回は、舐めたのはほんの少しだ。
顔を上げる。
この花は、あたり一面にある。
繁茂仙境が外の者を歓迎しないわけだ。外の人間が、そこらの普通の花の蜜にこれほどの魔力があるかもしれないと知ったら。来るのは旅人だけでは済まない。
それ以上は食べなかった。
小さな瓶に、花蜜を少しだけ入れる。
食べられる。
魔力を含む。
効き目は不明。
蘊魔草と同じにしてはいけない。
感じが似ているからといって、同じ薬効だと書くことは、もうしない。
次に、さっき小さな樹精が採るのを許した白青の茸を出した。
傘の一片だけでも、あたしの手のひらほど大きい。株全体には五層あり、上へ行くほど小さくなる。一番下の傘は、ひと握りの雨なら受けられそうなほど広かった。
淡い青白い光は、おもに傘の縁と、その下に細かく並ぶ襞の間に集まっている。
まず匂いを嗅ぐ。
湿った木の匂い。
それから少し甘い。
腐った匂いも、鼻をむずむずさせる刺激もない。
折り取った傘の欠片を、刃先で少し押し開く。
中は細かな糸のような繊維で、もろい。つまむとすぐ崩れた。半透明の乳白色の液がゆっくり滲み、光が一瞬強くなってから、また暗くなる。
傷のない皮膚へ少しつける。
刺さない。
痺れない。
焼けるようにも痛まない。
生えていた場所を見ると、この茸が一面を占めているわけではなかった。湿った朽木と古木の根の近くに、ばらばらに生えている。傘の間を、小さな飛ぶ虫が行き来していた。虫は茸自体を食べず、いつも襞へ潜ってから別の株へ飛んでいく。
たぶん繁殖に関係がある。
でも、決めつけて書きはしない。
菌の液を小瓶へ入れ、残りの傘は湿り袋へしまった。
あとで調べるために。
多層青蛍茸。
いつの間にかエイリンがまた寄ってきていた。
名前を見た途端、ひどく不満そうな顔をする。
「この名前、すごく普通」
あたしは相手にしなかった。
でもエイリンは筆を取り、横へそのまま何文字か書き足す。
コラ式青蛍茸。
あたしは一瞬固まり、顔が急に熱くなった。
「何してるの!」
エイリンは、とても楽しそうに笑う。
「最初に記録したのはコラでしょ」
「なんであたしの名前を入れるの!」
ノートを奪い返し、すぐその文字を塗り潰した。
「勝手に見ないで!」
エイリンはまだ笑っている。
あたしは何度も塗り、最後にはそこだけ火で焦がしたみたいに真っ黒になった。
小さな樹精は、横でずっと見ていた。
急に聞く。
「どうして偽物の植物を作るの?」
最初はわからなかった。
あとから、ノートに描いた絵を指していると気づく。
エイリンがあたしの代わりに答えた。
「コラは薬草師だから」
小さな樹精は首を傾ける。
「薬草死?」
エイリンはしゃがみ込み、長く考えた。
それから言う。
「痛いのを、痛くなくする人」
小さな樹精は、少しわかったようだった。
でもあたしの薬袋を、長いあいだ見ている。
「中に、死んだのがたくさんある」
あたしは下を見る。
乾いた葉。
根。
すり潰した粉。
干した花。
あたしにとっては、全部薬の材料だ。
でも小さな樹精にとっては、たしかに死んだ植物でしかない。
すぐには、どう答えればいいかわからなかった。
エイリンが小さな樹精の葉をそっと撫でる。
「死んだあとでも、人を助けられる」
小さな樹精は、はっきり驚いた。
「死んでも、助けられるの?」
今度は、あたしが答えた。
「できる」
薬袋から乾いた薬を一包み出し、手のひらへ広げる。
「血が出る人がいる」
「とても痛い人がいる」
「病気になる人がいる」
「これは、その人たちを助けられる」
小さな樹精は、長いあいだ薬を見つめた。
土を離れた植物が、別のやり方で命を助けられると、初めて知ったみたいだった。
小さな木全体が、急に震えた。
「あ!」
細い枝があたしの袖をつかむ。
「じゃあ、早く来て」
振り返って歩き出す。
あたしは引っ張られ、転びそうになった。
エイリンがすぐ後を追う。
後ろからヴァンスが叫んだ。
「またどこへ行く?」
ザカも止まる。
アーロンは小さな樹精があたしを引っ張る先を一目見たが、止めなかった。
最後には隊のみんなが、もっと深い森へこいつの後をついていった。
深夜なのに、ここも本当の暗さにはならない。高い枝葉の間には紫の光を放つ花が生え、蔓から垂れる小さな実は淡い青を透かす。地面の苔と菌は、もっと弱い緑に光っていた。光が幾層にも重なり、足元の根を見分けるには十分だった。
道のあいだじゅう、見られている感じがある。
横の木の枝が、少しだけこちらを向くことがある。
樹皮の裂け目が目を開くように見え、少しするとまた閉じることもある。
でも、本当に緊張する者はいなかった。
暗いところに隠れる獣じゃないと、もう知っている。
樹精だ。
少し進んだあと、最初におかしいと気づいたのはあたしだった。
今までずっと、光る小虫が草の間を飛んでいた。
今はどんどん減っている。
次に、鳥の声。
遠くにはまだある。
でも、あたしたちの進む方にはない。
さっきまで軽やかだった小さな樹精も、遅くなっていた。
鼻が、ごく淡い匂いを拾う。
腐った匂いじゃない。
毒でもない。
長く日に焼かれた植物が持つ、あの乾いた匂いに近い。
でもここは、石まで水を滴らせるほど湿っている。
こんな匂いがするはずがない。
もっと変なのは、その乾いた匂いの下に、さっきの魔力の多い植物だけが持つ気配も混じっていたことだ。
ただ、あまりに濃すぎる。
それが何を意味するのか、まだすぐにはわからなかった。
心の中へ記しておく。
小さな樹精が垂れ下がる蔓の幕をくぐった。
あたしたちも、その後を通る。
前に、開けた場所が現れた。
みんなが止まった。
ここもまだ、繁茂仙境だ。
周りにはまだ光る森があり、遠くには紫と青の花明かりも見える。
でも、この小さな場所だけには、ほとんど音がなかった。
草は地へ倒れている。
葉は巻いている。
光るはずの花は、弱い暗い色しか残していない。
何本かの植物は、もう枯れていた。
地面には、小さな動物がたくさん散らばっている。
鳥。
小獣。
名も知らない生き物が何匹か。
外傷はない。
まだ生きているものもいる。
ただ呼吸は怖いほど軽く、頭を持ち上げる力もない。
島のあまりに旺盛な命で、ずっと目をいっぱいにされていた。
繁茂仙境で初めて、死んだような静けさを見た。
小さな樹精は前に立っていた。
もう梢を揺らしていない。
倒れた動物たちを見る。
そして、あたしの方を振り返った。
小さな樹精は、なかなか可愛らしいでしょう?
その子のおかげで、コラもまた少し学べたようです。
植物は、ただ持ち去ればいいというものではありません。
ものによっては、そのための場所を残しておかなければならないのです。
ちなみに、小さな黒球もとても珍しい存在のようです。百年以上ものあいだ、再び見かけることはなかったそうです。
でも……
繁茂仙境は、どこも生命で満ちている場所ではないのでしょうか?
小さな樹精は、私たちをどこへ連れていくのでしょう?
どうぞ第四節「満ちすぎた場所」をお楽しみに。




