17-13 雲が動く
ようやく、皆と合流できました。
まずは森を抜けましょう。中央の山々は、もうそれほど遠くありません。
あたしは上にいる四人を見上げた。
エイリンはまだ手を振っていた。
とても力いっぱい振っている。あたしたちに見えないのを心配しているみたいに。
見えている。
ただ、さっき自分が危うく顔から木に突っ込みかけたのに、彼女が今とても元気そうに見えることを、あたしは少しも認めたくなかった。
近くに低い唸りはない。
その一点が、何より大事だった。
エイリンもすぐには風を呼ばなかった。彼女はまず岩の斜面の縁にしゃがみ、目を閉じ、両手を地面に押し当てた。細かな水滴と花粉が彼女の周りをゆっくり動き、近くの枝葉も一層ずつめくれていく。風がその中へ潜り込み、彼女の代わりに探っているみたいだった。
あたしは顔を上げて待った。
待ちすぎて首が痛くなった。
ロイが小声で言った。
「何してるんだ?」
「今回は先に見てる」
言い終えてから、あたしは自分がエイリンのためにいいことを言ってしまった気がした。
ちょっと気持ち悪い。
かなり経ってから、エイリンがようやく顔を上げて叫んだ。
「大丈夫、ここに折鳴獣はいないよ!」
そう言って、杖を前へ少し向けた。
風が上からいくつもの流れに分かれ、それぞれアーロン、ヴァンス、ハーン、そして彼女自身を支えた。四人はもとの地面側を離れ、二つの森のあいだの空白を越えていく。
折落層に入った瞬間、彼らの服の裾と髪の向きが鋭く変わった。
あたしは反射的にそばの蔓を握りしめた。
エイリンは今回、吹き飛ばされて傾かなかった。
彼女はその反転に合わせて気流を調整し、四枚の葉をそっと雲地へ押し戻すように下ろした。アーロンが最初に着地し、ハーンは少し重く落ち、ヴァンスは立ち上がるとすぐ周囲を見回した。
エイリンが最後に地面へ降りた。
本当に安定していた。
少なくとも、さっきのあたしたちよりずっとましだった。
彼女は例の看板みたいな笑顔を浮かべたばかりで。
「今回はちゃんと先に観察したよ、えへへ」
と、ピースした。
ヴァンスが手を上げ、彼女の頭をこつんと叩いた。
「前回から先に観察していれば、こんな面倒にはならなかった」
エイリンは頭を押さえた。
今回は言い返さなかった。
あたしがずっと詰めていた息は、このときようやく本当にほどけた。
ほどけたあと、脚まで一緒にほどけそうになった。
ハーンが最初にロイのほうへ歩いた。
彼は頭から足まで見た。
ロイの手、足、耳が全部まだあるのを確認してから、口を開いた。
「物資は?」
ロイは背負い袋を叩いた。
「大半はある」
「縄は?」
「それもある」
「頭は?」
ロイは少し止まった。
「たぶんまだある」
ハーンは彼の肩を叩いた。
それ以上、何も言わなかった。
アーロンがあたしの横へ来て、あたしが後ろへ座り込みかける直前、腕を支えた。
「成長したな」
彼は手を伸ばし、あたしの頭を撫でた。
あたしの耳は即座に両側へぺたりと伏せた。
この人、いつの間にこんな癖を身につけたの?
「言われなくても」
あたしは彼の手を振り払い、自分で立った。
アーロンも気にせず、ただ少し笑った。
とても淡く。
風が水面に触れたばかりみたいに。
ザカがエイリンを見る。
「風はあるか?」
「すぐ前にあるよ」
エイリンはすぐ答えた。
あたしは最初、彼女が残した魔力の痕跡のことを言っているのだと思った。
けれど彼女は、先にあたしの腰の水珠へ目をつけた。
「本当に、私が残した風が見えたの?」
あたしは雷脈草と蘊魔草を混ぜて煮たことを話した。
飲んだあと、体の中に短いあいだ外から来た魔力が留まったことも。
彼女が残した風が見えたことも。
エイリンの目がぱっと輝いた。
彼女はあたしの手首を握り、目を閉じて感じ取った。
「まだ少しある」
彼女の指先はとても軽い。
「でも、もうすぐ流れ切っちゃう」
あたし自身にもわかった。
手を伸ばせば触れられそうなほど鮮明だった魔力の世界は、もうかなり淡くなっている。風はたまに輪郭が閃くだけになり、水精霊も、振動と温度でしか判別できない状態へゆっくり戻っていた。
ザカが一言足した。
「俺も飲んだ」
エイリンはすぐ彼に向き直った。
「何か感じた?」
「ない」
彼女は顎に触れた。
「じゃあ、魔力への適応が違うんだと思う」
そう言いながら、もうあたしの薬包を見始めていた。
あたしは薬包を少し背中の後ろへずらした。
エイリンには見えた。
彼女の笑顔がさらに明るくなった。
これはよくない兆候だ。
ヴァンスが後ろから彼女の肩を掴んだ。
「先に食事だ」
エイリンは明らかにまだ何か言いたそうだった。
ヴァンスが彼女を見る。
彼女は素直に口を閉じた。
あたしは初めて、ヴァンスがとても役に立つと思った。
あたしたちはしばらく雲地で休んだ。
雲地は踏むと湿って柔らかいのに、沈み込まない。白い土層の中には細い根がたくさんあり、雲全体を縫い合わせているみたいだった。鼻には水、苔、花粉、それからとても淡い甘い匂いが届く。
甘い匂いは、エイリンの手の中の花からだった。
彼女は桃紅色の大きな花を何輪か取り出した。花弁の中央には、濃い蜜がたまっている。
「これは蜜盞花」
あたしは一輪受け取った。
甘い香りがすぐ鼻へ入り込む。
「そのまま食べるの?」
「ううん、ソースにするの」
エイリンが花を少し傾けると、金色の花蜜がゆっくり流れ出し、焼いた紫黄色の塊茎にかかった。
「それは垂節薯っていうの」
あたしは一口食べた。
もとはぱさついていて、腹を満たすためだけの塊茎だったのに、急に甘い香りが増えた。残っていた舌を刺す味も押さえ込まれ、本物の食べ物みたいになった。
あたしは黙ってしばらく噛んだ。
じゃあ、昨日あたしたちが食べていたものはいったい何だったの?
同じ、食べられるものなのに。
どうしてエイリンの手を通ると、本当に生き延びるつもりのある人が作ったものみたいになるの?
ロイが一番早く食べた。
ザカは何も言わず、黙って二つ目を取った。
食べ終えると、あたしたちは雲地の縁へ進み続けた。
エイリンはついに、自分の話を聞いてくれる相手を見つけた。
つまり、あたしだ。
短い足を持ち、木箱みたいな形をした生き物が、木の根に沿って移動していた。
エイリンはすぐそちらを指した。
「見て、あれは枝匣獣」
彼女は食べ残した桃橙色の果実を近くへ投げた。
その生き物はすぐ向きを変え、のろのろと残り果実のそばへ歩いた。体の硬い甲板がいくつかの方向へ開き、中央に腐った葉と白い菌糸で満ちた空洞が露わになる。
細かな足肢が果実を引き込んだ。
甲板がまた閉じる。
腐った果物を自分で片づける箱みたいだった。
「腐った果実、落ち葉、小動物の死骸を集めるの」エイリンが言った。
「先に真菌に分解させて、中の汁を吸収するんだよ」
あたしはその木箱が果実を呑み込むのを見た。
「前に四人だけだったとき、誰もずっと話を聞いてくれなかったでしょ?」
エイリンが止まった。
ハーンはうつむいて縄を整えた。
アーロンは急に遠くの山並みに強い興味を持った。
ヴァンスは否定しなかった。
エイリンは見なかったことにした。
彼女はさっき食べ残した桃橙色の果実を指した。
「あれは回升果」
「熟すと雲地へ落ち戻るから、あなたたちの側から見ると、上に飛んでいくみたいに見えるの」
次に、彼女は折落層の中で上下に揺れる透明な小生物を指した。
「あれは擺膜獣」
四枚の膜翼が体の横でゆっくりねじれ、二つの落下方向のあいだを絶えず滑らせている。体には上下二つの森の花粉がびっしり付いていて、行き来するたび、違う色の粉を反対側へ運んでいた。
もっと遠くでは、円盤状の巨獣が折落層を越えようとしていた。
「あれは盤肢獣」
あたしはロイを見た。
ロイは聞こえないふりをした。
盤肢獣の六本の長い肢は、それぞれ両側の蔓を掴んでいた。中央の襞袋から覗いていた幼獣の細い肢は、すべて体内へ引っ込んでいる。体の半分が折落層を越えると、三本の肢が先にもとの枝を放し、残り三本が重力の反転する瞬間、雲上の森の枝を掴んだ。
体全体がその勢いでくるりと反転する。
とても安定していた。
普通の動物が小川をまたぐみたいに。
あたしは、自分が木の幹の前からザカに摘み戻されたことと、ロイが顔で樹皮の硬さを確かめかけたことを思い出した。
どうやら恥ずかしいのは、あの道ではない。
あたしたちだ。
エイリンは、あたしたちを襲った捕食者のことにも触れた。
「あれは折鳴獣って呼んでる」
あたしはすぐ聞いた。
「なんでああいうものにも名前が必要なの?」
「名前がないと記録しにくいでしょ」
「気持ち悪い長いやつ、じゃ駄目?」
「正確じゃないよ」
「どこが正確じゃないの?」
エイリンはとても真面目だった。
「ここ、気持ち悪い長い生き物が多いから」
あたしは一瞬、反論できなかった。
彼女は続けて、折鳴獣の低い鳴き声は両側の異なる重力域を貫き、音を使って獲物の位置判断を狂わせるのだと言った。
ヴァンスが横から注意する。
「少し黙れ」
エイリンは声を落とした。
たぶん半刻も続かなかった。
しばらく歩いたあと、あたしは遠くの山峰の位置がおかしいと感じ始めた。
最初は左側にあった黒い尖峰が、ゆっくり前方へ移っていた。山腹の白い滝も向きがずれている。まるで誰かが山ごと少し動かしたみたいに。
でも山は、そんなふうに動くものではない。
あたしは自分が折落層を越えたばかりで、頭がまだ上下を分けられていないのだと思った。
別の雲地が横を通り過ぎるまでは。
それは、あたしたちの足元よりずっと小さな浮遊雲林だった。
同じように木が雲土に根を張り、枝が雲の底から下へ垂れている。盤肢獣の群れが縁に集まり、枝に引っかかった果実を食べていた。
二つの雲地が近づくと、外側の枝葉が短いあいだ絡み合った。
数匹の擺膜獣がその流れに乗って、向こう側へ滑っていく。
しばらくすると、二つの森はまたゆっくり離れた。
ハーンが足を止め、遠くの山峰を見た。
「山は動いていない」
あたしたちはみんな彼を見る。
ハーンは足元を見下ろした。
「俺たちが動いている」
あたしも下を向いた。
足元の白い雲土はとても静かだった。
静かすぎて、まったく道理に合わない。
あたしたちは雲地の縁まで歩き続けた。
前方で、突然森がなくなった。
白い地面は数歩先で終わり、岩のない崖になっていた。雲土の断面には、絡み合う大量の細根、湿った苔、半透明の晶粒が露出している。
さらに下には土地がない。
あるのは厚い雲霧と、雲底から別の森へ向かって生える逆さの枝だけ。
あたしは縁へ近づき、下を見た。
そのときになって初めて、さっき通ってきた場所を本当に見渡せた。
双墜林が下に広がっている。
地上の森と雲上の森が向かい合い、そのあいだに枝葉、花粉、飛ぶ生物、絶えず反転する果実が挟まれていた。鮮やかな色が混ざり合い、風に吹かれて近づきすぎた二つの林みたいだった。
さらに遠くでは、雷育盆地がなお暗い灰色の雲に覆われていた。
ときおり閃く雷光は、草の中の火点みたいに小さい。
エイリンは雲地の縁にしゃがみ、手のひらを湿った白土へ当てた。
「古代精霊の地図では、ここを双墜林と呼んでいたの」
ハーンが頭を出して一目見た。
「船乗りなら、たぶん懸天林と呼ぶ」
「それもすごくいいね」
エイリンは上下二つの森が交わる中央を指した。
「あそこが折落層」
それから、足元を見た。
「大地精霊は、この雲にも命が育つようにしたかった」
彼女はまた顔を上げた。
風が梢を渡り、雲地全体を山体に沿って押していく。
「でも大気精霊は、あちこち旅するのが好きなの」
あたしは雲の上に立ったまま、本当の地面がどこにあるのか考えるのを忘れていた。
あたしたちの足元の雲地は固定されていない。
それは森全体を、木も、花も、果実も、盤肢獣も、あの小さなものたちも載せて、中央群峰の下方にある風帯に沿い、ゆっくり漂っている。
近くには大小さまざまな雲地がまだたくさんあった。
木が一本だけ生えたものもある。
反対側が見えないほど大きいものもある。
それらは群島のように山を巡り、近づき、離れ、また風に吹かれて別の場所へ向かっていく。
エイリンは立ち上がり、前方の山体を見た。
「もう少し待って」
あたしは振り向いた。
「何を?」
「着地に向いた場所がもうすぐ来るの」
あたしの耳が即座に立った。
「着地?」
エイリンはまた縁にしゃがみ込み、山並みと風を見続けた。
アーロンも前方の岩壁から突き出した場所を探している。
ほかのみんなは、なぜかもうその件を受け入れているようだった。
あたしは左右を見回した。
「あたしたち、今もう立ってるよね?」
「ここは動いている」ハーンが言った。
「だから?」
「だから動く場所から、動かない場所へ跳ぶ」
その言葉は、あたしを少しも安心させなかった。
エイリンはあたしの表情に気づいた。
「安心して。大気精霊が受け止めてくれるよ」
あたしはうつむいてパフの頭を撫でた。
四匹の小リスは籠の中で縮こまっていて、これから何が起きるのかまだ知らない。
いいな。
何も知らないというのも、ひとつの幸せだ。
腰の水珠がかすかに揺れた。
あたしはそこへ手を押し当てた。
「あなたまで楽しそうって思わないで」
雲地が巨大な山峰を回り込む。
前方の岩壁がどんどん近づいてきた。
それは普通の山崖ではなかった。
山体全体が大きすぎて、距離の感覚が信用できなくなる。遠くからはただの細い裂け目に見えた場所も、近づいて初めて、大きな森を丸ごと収められるほどの深い谷だとわかった。
山腹の白い細線は滝だった。
ずいぶん離れているのに、重い水音が聞こえる。
さらに高い場所には雲帯が何層も山体へ巻きつき、山峰はなお上へ伸び、最後には天坑上方の光と混ざっていた。
あたしたちが近づこうとしているのは、山脈下半部に突き出た岩台にすぎない。
遠くから見れば、岩壁の小さな出っ張りみたいなものだった。
本当に近づいてから、その岩台が餘暉号を何隻も横並びで置けるほど広いとわかった。
雲地はまだ動いている。
岩台に近づくのは、短いあいだだけ。
ハーンはすぐ全員に物資を固定し直すよう求めた。
ロイが縄と水袋をしっかり結ぶ。
ヴァンスは雲地の縁に立ち、距離を測る。
ザカは長い武器を背中へ戻した。
あたしはパフ一家の籠を胸の前に固定した。あとでまた一塊に転がさないためだ。
エイリンは岩台を見つめた。
風がどんどん強くなる。
雲地の縁は山風に吹かれて大きな白霧を吐き、根ひげと枝葉が激しく揺れた。
一番近づいても、直接跳び越えるには不可能な隙間がまだ残っている。
エイリンが低く言った。
「来た」
彼女は大気精霊を呼び始めた。
今回は風が足元から立ち上がった。
すぐに人を吹き上げることはなかった。
まず一人ひとりの体に沿って一周し、見えない手が荷物と四肢の位置を確かめるみたいだった。服の裾が軽く浮くだけで、少しだけ本当に魔法らしい感じさえあった。
あたしは信じ始めた。今回は、もしかしたら普通に着地できるかもしれない。
全員が雲地を離れた。
風があたしたちを支え、岩台へ運ぶ。
前半は確かに安定していた。
雲地の範囲を離れるまでは。
胃が突然、反対側へひっくり返った。
前方にあった岩台が一気に下方へ変わり、全員の体が同時に傾く。風はまだあたしたちを支えているのに、方向感覚がめちゃくちゃになった。
ハーンが横向きに飛ぶ。
ロイは空中で一回転した。
ザカは体勢を整えようとしたけれど、横の荷物が肩にぶつかった。
アーロンは相変わらず落ち着いて見えた。
ただ、髪が全部間違った方向へ流れていた。
「エイリン、あんたなんか大嫌い!」
あたしは風の中で叫んだ。
「え?」
エイリンの声が別の方向から届く。
あたしはすぐ口を押さえた。
また開いたら、さっき食べた蜜盞花と垂節薯を全部吐き出しそうだった。
大気精霊は確かにあたしたちを受け止めた。
ただ、彼らの言う受け止めるは、一掴みの葉っぱを岩台へ吹き込むのに近かった。
あたしたちは地面にぶつかった。
転がった。
滑った。
最後に、濡れて冷たい岩の上で次々止まった。
誰も脚を折っていない。
たぶん、それだけでも成功と言える。
あたしは頭を押さえて起き上がった。
頭が痛い。
パフ一家は全員籠の中にいる。
そして全員、気絶していた。
なのにエイリンは少し離れた場所にちゃんと立っていて、服にもほとんど泥がついていない。
あたしは彼女を睨んだ。
エイリンは山並みを観察しているふりをした。
アーロンが歩いてきて、あたしを地面から引き起こした。
「ここは変わっていないな」
あたしは後頭部をさすった。
「変わってない?」
アーロンはどこまでも高くなる山階を見上げた。
「いい知らせだ。もう少し歩けば、中腹に着く」
あたしは彼の視線を追って顔を上げた。
山腹が何層も何層も上へ伸びている。まばらな巨石と低い植物が強風の中で身を伏せ、山階のあいだからは時おり、さらに深い峡谷が見えた。もっとも遠い高地は、もう別の雲帯に近づいている。
「悪い知らせは?」
アーロンはまだ上を見ていた。
「ここからが歩きにくい」
ザカが聞いた。
「昔は?」
「以前は山麓からここまでなら難しくなかった」
全員が一斉に振り返った。
山の下には雷育盆地、巨葉冠林、双墜林がある。
そして森全体を載せてだんだん漂い去っていく雲地も。
あたしには、これを難しくないと呼ぶのは到底信じられなかった。
アーロンは続けた。
「当時、ここから山頂まで一ヶ月歩いた」
ハーンが眉を寄せる。
「一ヶ月?」
「俺たちにそんな時間はない」
「今回は山頂まで行かなくていいよ」
エイリンがすぐ、もっと高い山腹の一角を指した。
「あそこまででいい」
中腹だけだとしても、あたしは首を限界まで反らさなければ、彼女の指す場所が見えなかった。
「つまり半月?」
「安心して」エイリンは自信満々だった。
「私の魔法があれば、そんなにかからないよ」
あたしは少しも安心できなかった。
「あんたがもう一回大気精霊を呼んだら、殴る」
エイリンは無実そうな顔をした。
「彼ら、遊ぶのが大好きなんだもん」
あたしは視線をそらし、薬包と荷物を整え直した。
ついでに腰の水珠にも触れる。
「あなたも彼女をまねしちゃ駄目」
水珠が袋の中で、軽くあたしに触れた。
あたしはそれを否定だと思うことにした。
アーロンはもう上へ歩き始めていた。
みんなも次々についていく。
あたしは最後に遠ざかる雲林を一度振り返り、それから向き直って隊列を追った。
よく考えれば。
山の上なら、変な生き物なんていないはずだよね。
山風が岩壁を吹き抜けた。
ごく淡い匂いを運んでくる。
湿った石のような。
そして、どこか遠くで呼吸している何かのような。
あの怪物たちの名前も、ようやく分かりました。
いちばん警戒すべきなのは、やはり折鳴獣です。幸い、しばらくは出会わずに済みそうですが。
そして、双墜林がそう呼ばれる理由も明らかになりました。
遠古の精霊が抱いた、たった一つの願い。それだけで、この森は今の姿になったのです。
ここで、設定を一つ補足します。
世界のはじまりに、この世界を共に形づくったのは遠古の精霊たちでした。大地、水、火、大気、そして後に生まれた森のエルフたちも。
彼らは、エイリンやヴァンスのように実体を持つ精霊とは異なり、むしろ神霊に近い存在です。
だからこそ、昔からこう言われてきました。
遠古の精霊には、畏敬の念を抱くべきだと。
どうぞ第十四節「浮空水潭」をお楽しみに。




