17-6 葉裏
仲間の一人が、離れていってしまうのでしょうか?
それは……
誰も動かなかった。
ザカは槍先を低くした。ヴァンスはもう矢をつがえ、弓弦をぶれずに引いている。エイリンは杖を握り、ハーンはロイを板根の後ろへ引きずった。彼がまた、一番噛まれやすい位置にちょうど立たないように。
巨獣はあたしたちを一目見た。
その目は大きく、瞳孔は細長い。頭上で砕ける緑の光を映している。口は開けない。前にも来ない。
ただ視線を外し、頭を上げた。
覆天木の太い枝に、巨大な花が咲いていた。花弁は何層にも重なり、淡い黄色に赤い縁がついている。人一人をまるごと包めるほど大きい。巨獣は幅広い舌を伸ばして花弁を巻き取り、口先の角質の硬い縁で花梗を挟み切った。
ぼき。
花梗の折れる音は、あたしの腕より太かった。
巨獣は頭を下げ、ゆっくり噛む。一歩ごとに小川へ波紋が広がった。花の中の種がいくつか口元から落ちると、板根の隙間からすぐ小獣が数匹飛び出し、争って種を抱えていった。
エイリンの筆先がようやく動いた。
「冠花龍蜥」
あたしは車輪より大きな口を見つめた。
「草食?」
「そう見える」
アーロンが言った。
そう見える。
その三文字では、あたしの毛は下りない。
あたしたちは逆方向へゆっくり下がった。冠花龍蜥が覆天木と垂れ藤と大葉の陰に隠れ、枝が押し分けられる鈍い音だけになるまで、誰も本当に息を吐かなかった。
そのあとの道は、不思議なくらい旅らしかった。
長い首の獣が高い板根の間に立ち、首をまっすぐ伸ばして樹皮についた若芽を舐め取っていた。数頭の冠躍鹿が地面から跳び上がり、数メートル上の太い枝へ降りて、そこで頭を下げて蔓葉を齧る。着地の音はほとんどないのに、蹄の底は濡れた樹皮をしっかりつかんでいた。
一本の小川が斜面の縁まで流れ、下へ落ちなかった。
水は細かな水玉に砕け、ゆっくり斜め上へ樹冠の中へ漂っていく。
エイリンは首を下ろそうともしないで見上げていた。
「ここの空気、魔力でいっぱい」
彼女は小さく言った。
葉の隙間から落ちた光が、彼女の髪に触れる。
「遠古の精霊がみんな踊ってる」
あたしには踊る精霊なんて見えなかった。
でも腰の水晶球は、林に入ってからずっと動いている。中の水はあたしの足取りに合わせて揺れず、時々左へ張りつき、時々球の上へ湧き上がった。外を通る何かを追っているみたいだ。
あの子が喜んでいるのは分かった。
とても軽い感覚だった。パフが甘い果実を嗅いだ時、鼻だけ先に動くみたいに。
あたしは立ち止まり、水晶球を手に取った。
それから小刀を抜き、布で球を包む。刀の柄を、表面にもともとあった細いひびへ向けて打ち下ろした。
一度。
割れない。
二度目。
かち。
水晶に親指ほどの欠け口が開いた。
「それ、わたしがやっと作ったのに!」
エイリンの声が横から爆ぜた。
あたしは、あの子が出たがっていると言うつもりだった。その言葉を聞いて、逆に少し止まる。
「気にするの、そこ?」
「もちろん気にする!」
裂け目から水が数滴滲んだ。
それは落ちなかった。
水滴はあたしの掌の上で止まり、それから一つずつ浮き上がって、枝葉を抜ける光を追って飛んでいった。垂れ藤を回り込み、薄い水簾を抜け、漂う霧粒の中へ混ざる。遠くの細い水流が何本か、何かに気づいたみたいに、ふいに少し向きを変えた。
あたしはその水光を見ていた。
「遊びに出たそうだった」
エイリンはまだ割れた水晶球を見つめている。
少しして、彼女の肩がゆっくり下りた。
「なら、行かせてあげよう」
あたしは顔を上げて彼女を見た。
エイリンは少し笑う。
「これから魔法を使いたくなったら、わたしを呼んで」
あたしも笑った。
エイリンは、こういう子だ。
ヴァンスがふいに口を開いた。
「戻ってきた」
水滴が高いところから落ちてきた。でも地面へは落ちない。あたしの周りを何度か回り、耳の先と手の甲と水晶球の欠け口に触れ、最後に一つずつ中へ潜り込んだ。
一滴が欠け口に止まる。
とても薄い膜みたいに。
水晶球からはもう水が漏れなかった。
エイリンが近づいてしばらく見た。
「どうやら、あなたたちはもう絆を結んだみたい」
「あたしと、あの子?」
「うん」
「話したこともないのに」
エイリンは、あたしがとても変なことを聞いたみたいな顔をした。
「あなた、あの子のことを思ったでしょ」
少し止まる。
「あの子がそう教えてくれた」
あたしは水晶球を見下ろした。
中の水が、あたしの指先のある場所へそっと触れた。
ザカが前方で声を上げる。
「おい!」
アーロンは二本の覆天木の間に立っていた。足元には、踏み固められて平らになった道がある。深い池と密な藤を回り込み、水が滴っている巨葉の下も避けている。方向はだいたい中央群峰へ伸びていた。
獣道。
あたしたちはそれを辿った。
巨葉が陽光の大半を遮っているのに、林の下は真っ暗ではない。光は葉脈の間から透け、葉面の水と空中の霧粒を通って、動く緑金色の斑に砕ける。樹冠が揺れると地面全体が暗くなり、少しすると別の場所から光がゆっくり戻ってくる。
アーロンが急にロイを引いた。
「そこに立つな」
ロイが退いた直後、頭上の葉縁が下へ曲がった。
水が落ちた。
数滴じゃない。
葉に溜まっていた水が一面、どっと彼がさっき立っていた場所へ流れ落ち、すぐ泥穴を穿った。
ロイの服も半分は跳ね水で濡れた。彼は顔の水を拭い、ハーンを見る。
ハーンは眉を上げた。
「覚えたか?」
「すごく早く覚えた」
ロイが言った。
エイリンは道中ずっと、もっとゆっくりと言っていた。羊皮紙はまた埋まりかけている。
あたしは小川のそばに生えた細葉の草を見て、また手を伸ばした。
「一枚ちょうだい」
エイリンが振り返る。
「この紙、もういっぱい」
あたしは言った。
新しい一枚。
パフ一家は近くを嗅ぎ回っていた。触れただけで下がる草もある。少し汁を舐めるものもある。丸葉の小草の一種は、小さな松果鼠が一口齧ったが、すぐ水を飲みに走った。
あたしは反応を一つずつ描いた。
食べられる。
役に立つかもしれない。
分からない。
今は触らない。
字はひどい。
少なくとも、あたしには読める。
あたしは淡褐色の菌叢の前にしゃがみ、菌傘の下の模様をめくって見ようとしていた。頭上で急に枝が押し曲げられる音がした。
一頭の冠躍鹿が近くから跳び上がった。
二本の巨木の間を越え、後脚を畳み、蹄底を向こうの太い枝へ落とそうとする。
樹冠の下に垂れていた巨葉が動いた。
風に揺れたのではない。
葉全体が裏返った。
葉裏に、巨大な口鋏が二つ開く。
がちん。
冠躍鹿は一声鳴くのがやっとだった。
口鋏が閉じた。
血霧が高いところから撒かれ、藤と板根と、あたしたちの前の小川へ落ちた。
全身の毛が逆立った。
あれは葉じゃない。
蜘蛛だ。
腹部は平たく広く、模様は巨葉そのものだった。八本の脚は葉脈と枝に沿って開いている。さっきあたしたちが見ていた葉縁は、あいつが隠していた境界にすぎなかった。
冠躍鹿は高所で蜘蛛糸に吊られ、まだ痙攣している。
大蜘蛛がゆっくり身を低くした。
いくつもの目が、あたしたちへ向く。
ロイが一歩下がった。
靴底が、ほとんど透明な糸を一本引き上げた。
その糸は高いところまで続いている。
大蜘蛛の脚がすべて同時に引き締まった。
「戦うな」
アーロンが言った。
大蜘蛛が枝に固定していた蜘蛛糸を放す。
巨大な体がまっすぐ落ちてくる。
「網から出ろ!」
そいつはあたしたちの前へ叩きつけられた。
地面が激しく震える。あたしは転びかけ、次の瞬間にはザカに薬包ごと肩へ担ぎ上げられていた。
「下ろして!」
「走るのが遅い!」
「脚はある!」
「今はない」
まだ罵ろうとしたのに、ザカはもう走り出していた。
大蜘蛛の脚幅は、覆天木の下を流れる小川より広い。八本の脚は板根も小川も跨ぎ、獣道を通る必要がない。一脚が落ちるたび、泥水と砕け石が四方へ爆ぜた。
担がれたまま、それでもあたしは必死に後ろを見た。
「追いつかれる!」
エイリンが勢いよく振り返り、杖を横の小川へ向けた。
「ᚡᛖᚪ-ᚾᚢᛚ ᚺᚪᚱ!」
小川の水が一瞬止まった。
次の瞬間、泥の中の水まで地面から噴き出し、太い水柱になってぶつかった。大蜘蛛は正面から持ち上げられ、高くひっくり返り、何本かの脚が空中をめちゃくちゃに掻く。
あたしたちが半歩だけ緩めた途端、腹部の後ろから太い白い蜘蛛糸が射出され、前方の覆天木に貼りついた。
糸が一瞬で張る。
大蜘蛛が蜘蛛糸を縮めた。
空中から前へ猛烈に引き寄せられ、落ちた位置はさっきより近い。
抜け毛め。
アーロンが腰袋から二層の粉包を取り出し、上へ投げた。
「ヴァンス」
ヴァンスは聞き返さなかった。
矢が弦を離れ、粉包を貫く。
粉包が破れた。
袋の中身がぶつかり合い、空中で鈍い音を立てる。白灰、蒸気、むせる粉末が、全部大蜘蛛の顔へかかった。前脚を乱暴に振り回し、太い藤を何本か断ち、背毛が痺れるような摩擦音を立てる。
離れていても、鼻を刺す匂いがした。
彼、こういうものをあとどれだけ持っているんだ。
ロイがふいに後ろへ引かれた。
蜘蛛糸が背負い袋に貼りつき、体ごと後ろへ引きずる。
ハーンはその糸と力比べをしなかった。刀を抜いて背負い紐を切る。背負い袋は食料の一部、縄、羊皮紙と一緒に、白灰の中へ一気に引き込まれた。
ロイは二歩よろめき、またあたしたちへ追いついた。
前方に、他よりさらに太い覆天木があった。
ハーンが盛り上がった板根の一部を斧の背で叩いた。
どん。
中は空だ。
アーロンがすぐ根元の裂け目を指す。
「入れ!」
みんな一人ずつ潜り込んだ。入口は人の肩幅より少し広いだけ。中は湿って黒く、古い木と雨にふやけた土の匂いがした。
ザカが最後に入って振り返り、折れ木を狭い入口へ噛ませた。
外の地面がまた震えた。
大蜘蛛が木の下まで追ってきた。
脚が板根の表面を削り、歯が酸っぱくなるような長い音を立てる。洞口の外を黒い影が行き来したが、中までは届かない。
中に別の出口はない。
少なくとも、あいつも今は入ってこられない。
全員が湿った木壁にもたれ、息を荒くした。
エイリンは少し落ち着くと、すぐ襟元から羊皮紙を引き抜いた。
「まだ記録するの?」
あたしは聞いた。
「記録しないと忘れる」
「忘れない方がいいと思うけど」
あたしはアーロンへ向いた。
「さっきの、何?」
「二層だ」
彼は言った。
「中は水、外は裂水石粉。一緒に破れると爆ぜる」
あたしも自分の紙を取り出し、下を向いて書きつけた。
アーロンが一目見る。
「これは覚えなくていい」
あたしは顔も上げなかった。
「あんたに関係ない」
板根の外で、また脚が木を削る音がした。
あたしは文字を書く手をもっと速くした。
水の精霊は、コラのもとを去ったわけではありません。
絆こそが、遠古の精霊を呼び寄せるための土台なのです。これからのコラにも、どうぞご期待ください。
背中を巨大な葉に擬態させる蜘蛛。想像できますか?
枝のように見えるものも、実は太い蜘蛛の糸なのかもしれません。
エイリンの魔法と、アーロンの小さな道具がなければ、皆は最初の一瞬で蜘蛛の腹の中に入っていたでしょう。
道具の作り方は、覚えなくて大丈夫です。
皆さんが、こんなに大きな蜘蛛に出会うことはないはずですから。
どうぞ第七節「雨の樹海」をお楽しみに。




