↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
104/131

17-6 葉裏

仲間の一人が、離れていってしまうのでしょうか?


それは……

誰も動かなかった。


ザカ(ザカ)は槍先を低くした。ヴァンス(ヴァンス)はもう矢をつがえ、弓弦をぶれずに引いている。エイリン(エイリン)は杖を握り、ハーン(ハーン)はロイ(ロイ)を板根の後ろへ引きずった。彼がまた、一番噛まれやすい位置にちょうど立たないように。


巨獣はあたしたちを一目見た。


その目は大きく、瞳孔は細長い。頭上で砕ける緑の光を映している。口は開けない。前にも来ない。


ただ視線を外し、頭を上げた。


覆天木(ふくてんぼく)の太い枝に、巨大な花が咲いていた。花弁は何層にも重なり、淡い黄色に赤い縁がついている。人一人をまるごと包めるほど大きい。巨獣は幅広い舌を伸ばして花弁を巻き取り、口先の角質の硬い縁で花梗を挟み切った。


ぼき。


花梗の折れる音は、あたしの腕より太かった。


巨獣は頭を下げ、ゆっくり噛む。一歩ごとに小川へ波紋が広がった。花の中の種がいくつか口元から落ちると、板根の隙間からすぐ小獣が数匹飛び出し、争って種を抱えていった。


エイリン(エイリン)の筆先がようやく動いた。


「冠花龍蜥(かんかりゅうせき)」


あたしは車輪より大きな口を見つめた。


「草食?」


「そう見える」


アーロン(アーロン)が言った。


そう見える。


その三文字では、あたしの毛は下りない。


あたしたちは逆方向へゆっくり下がった。冠花龍蜥(かんかりゅうせき)が覆天木(ふくてんぼく)と垂れ藤と大葉の陰に隠れ、枝が押し分けられる鈍い音だけになるまで、誰も本当に息を吐かなかった。


そのあとの道は、不思議なくらい旅らしかった。


長い首の獣が高い板根の間に立ち、首をまっすぐ伸ばして樹皮についた若芽を舐め取っていた。数頭の冠躍鹿(かんやくじか)が地面から跳び上がり、数メートル上の太い枝へ降りて、そこで頭を下げて蔓葉を齧る。着地の音はほとんどないのに、蹄の底は濡れた樹皮をしっかりつかんでいた。


一本の小川が斜面の縁まで流れ、下へ落ちなかった。


水は細かな水玉に砕け、ゆっくり斜め上へ樹冠の中へ漂っていく。


エイリン(エイリン)は首を下ろそうともしないで見上げていた。


「ここの空気、魔力でいっぱい」


彼女は小さく言った。


葉の隙間から落ちた光が、彼女の髪に触れる。


「遠古の精霊がみんな踊ってる」


あたしには踊る精霊なんて見えなかった。


でも腰の水晶球は、林に入ってからずっと動いている。中の水はあたしの足取りに合わせて揺れず、時々左へ張りつき、時々球の上へ湧き上がった。外を通る何かを追っているみたいだ。


あの子が喜んでいるのは分かった。


とても軽い感覚だった。パフ(パフ)が甘い果実を嗅いだ時、鼻だけ先に動くみたいに。


あたしは立ち止まり、水晶球を手に取った。


それから小刀を抜き、布で球を包む。刀の柄を、表面にもともとあった細いひびへ向けて打ち下ろした。


一度。


割れない。


二度目。


かち。


水晶に親指ほどの欠け口が開いた。


「それ、わたしがやっと作ったのに!」


エイリン(エイリン)の声が横から爆ぜた。


あたしは、あの子が出たがっていると言うつもりだった。その言葉を聞いて、逆に少し止まる。


「気にするの、そこ?」


「もちろん気にする!」


裂け目から水が数滴滲んだ。


それは落ちなかった。


水滴はあたしの掌の上で止まり、それから一つずつ浮き上がって、枝葉を抜ける光を追って飛んでいった。垂れ藤を回り込み、薄い水簾を抜け、漂う霧粒の中へ混ざる。遠くの細い水流が何本か、何かに気づいたみたいに、ふいに少し向きを変えた。


あたしはその水光を見ていた。


「遊びに出たそうだった」


エイリン(エイリン)はまだ割れた水晶球を見つめている。


少しして、彼女の肩がゆっくり下りた。


「なら、行かせてあげよう」


あたしは顔を上げて彼女を見た。


エイリン(エイリン)は少し笑う。


「これから魔法を使いたくなったら、わたしを呼んで」


あたしも笑った。


エイリン(エイリン)は、こういう子だ。


ヴァンス(ヴァンス)がふいに口を開いた。


「戻ってきた」


水滴が高いところから落ちてきた。でも地面へは落ちない。あたしの周りを何度か回り、耳の先と手の甲と水晶球の欠け口に触れ、最後に一つずつ中へ潜り込んだ。


一滴が欠け口に止まる。


とても薄い膜みたいに。


水晶球からはもう水が漏れなかった。


エイリン(エイリン)が近づいてしばらく見た。


「どうやら、あなたたちはもう絆を結んだみたい」


「あたしと、あの子?」


「うん」


「話したこともないのに」


エイリン(エイリン)は、あたしがとても変なことを聞いたみたいな顔をした。


「あなた、あの子のことを思ったでしょ」


少し止まる。


「あの子がそう教えてくれた」


あたしは水晶球を見下ろした。


中の水が、あたしの指先のある場所へそっと触れた。


ザカ(ザカ)が前方で声を上げる。


「おい!」


アーロン(アーロン)は二本の覆天木(ふくてんぼく)の間に立っていた。足元には、踏み固められて平らになった道がある。深い池と密な藤を回り込み、水が滴っている巨葉の下も避けている。方向はだいたい中央群峰へ伸びていた。


獣道。


あたしたちはそれを辿った。


巨葉が陽光の大半を遮っているのに、林の下は真っ暗ではない。光は葉脈の間から透け、葉面の水と空中の霧粒を通って、動く緑金色の斑に砕ける。樹冠が揺れると地面全体が暗くなり、少しすると別の場所から光がゆっくり戻ってくる。


アーロン(アーロン)が急にロイ(ロイ)を引いた。


「そこに立つな」


ロイ(ロイ)が退いた直後、頭上の葉縁が下へ曲がった。


水が落ちた。


数滴じゃない。


葉に溜まっていた水が一面、どっと彼がさっき立っていた場所へ流れ落ち、すぐ泥穴を穿った。


ロイ(ロイ)の服も半分は跳ね水で濡れた。彼は顔の水を拭い、ハーン(ハーン)を見る。


ハーン(ハーン)は眉を上げた。


「覚えたか?」


「すごく早く覚えた」


ロイ(ロイ)が言った。


エイリン(エイリン)は道中ずっと、もっとゆっくりと言っていた。羊皮紙はまた埋まりかけている。


あたしは小川のそばに生えた細葉の草を見て、また手を伸ばした。


「一枚ちょうだい」


エイリン(エイリン)が振り返る。


「この紙、もういっぱい」


あたしは言った。


新しい一枚。


パフ(パフ)一家は近くを嗅ぎ回っていた。触れただけで下がる草もある。少し汁を舐めるものもある。丸葉の小草の一種は、小さな松果鼠(まつかねずみ)が一口齧ったが、すぐ水を飲みに走った。


あたしは反応を一つずつ描いた。


食べられる。


役に立つかもしれない。


分からない。


今は触らない。


字はひどい。


少なくとも、あたしには読める。


あたしは淡褐色の菌叢の前にしゃがみ、菌傘の下の模様をめくって見ようとしていた。頭上で急に枝が押し曲げられる音がした。


一頭の冠躍鹿(かんやくじか)が近くから跳び上がった。


二本の巨木の間を越え、後脚を畳み、蹄底を向こうの太い枝へ落とそうとする。


樹冠の下に垂れていた巨葉が動いた。


風に揺れたのではない。


葉全体が裏返った。


葉裏に、巨大な口鋏が二つ開く。


がちん。


冠躍鹿(かんやくじか)は一声鳴くのがやっとだった。


口鋏が閉じた。


血霧が高いところから撒かれ、藤と板根と、あたしたちの前の小川へ落ちた。


全身の毛が逆立った。


あれは葉じゃない。


蜘蛛だ。


腹部は平たく広く、模様は巨葉そのものだった。八本の脚は葉脈と枝に沿って開いている。さっきあたしたちが見ていた葉縁は、あいつが隠していた境界にすぎなかった。


冠躍鹿(かんやくじか)は高所で蜘蛛糸に吊られ、まだ痙攣している。


大蜘蛛がゆっくり身を低くした。


いくつもの目が、あたしたちへ向く。


ロイ(ロイ)が一歩下がった。


靴底が、ほとんど透明な糸を一本引き上げた。


その糸は高いところまで続いている。


大蜘蛛の脚がすべて同時に引き締まった。


「戦うな」


アーロン(アーロン)が言った。


大蜘蛛が枝に固定していた蜘蛛糸を放す。


巨大な体がまっすぐ落ちてくる。


「網から出ろ!」


そいつはあたしたちの前へ叩きつけられた。


地面が激しく震える。あたしは転びかけ、次の瞬間にはザカ(ザカ)に薬包ごと肩へ担ぎ上げられていた。


「下ろして!」


「走るのが遅い!」


「脚はある!」


「今はない」


まだ罵ろうとしたのに、ザカ(ザカ)はもう走り出していた。


大蜘蛛の脚幅は、覆天木(ふくてんぼく)の下を流れる小川より広い。八本の脚は板根も小川も跨ぎ、獣道を通る必要がない。一脚が落ちるたび、泥水と砕け石が四方へ爆ぜた。


担がれたまま、それでもあたしは必死に後ろを見た。


「追いつかれる!」


エイリン(エイリン)が勢いよく振り返り、杖を横の小川へ向けた。


「ᚡᛖᚪ-ᚾᚢᛚ ᚺᚪᚱ!」


小川の水が一瞬止まった。


次の瞬間、泥の中の水まで地面から噴き出し、太い水柱になってぶつかった。大蜘蛛は正面から持ち上げられ、高くひっくり返り、何本かの脚が空中をめちゃくちゃに掻く。


あたしたちが半歩だけ緩めた途端、腹部の後ろから太い白い蜘蛛糸が射出され、前方の覆天木(ふくてんぼく)に貼りついた。


糸が一瞬で張る。


大蜘蛛が蜘蛛糸を縮めた。


空中から前へ猛烈に引き寄せられ、落ちた位置はさっきより近い。


抜け毛め。


アーロン(アーロン)が腰袋から二層の粉包を取り出し、上へ投げた。


「ヴァンス(ヴァンス)」


ヴァンス(ヴァンス)は聞き返さなかった。


矢が弦を離れ、粉包を貫く。


粉包が破れた。


袋の中身がぶつかり合い、空中で鈍い音を立てる。白灰、蒸気、むせる粉末が、全部大蜘蛛の顔へかかった。前脚を乱暴に振り回し、太い藤を何本か断ち、背毛が痺れるような摩擦音を立てる。


離れていても、鼻を刺す匂いがした。


彼、こういうものをあとどれだけ持っているんだ。


ロイ(ロイ)がふいに後ろへ引かれた。


蜘蛛糸が背負い袋に貼りつき、体ごと後ろへ引きずる。


ハーン(ハーン)はその糸と力比べをしなかった。刀を抜いて背負い紐を切る。背負い袋は食料の一部、縄、羊皮紙と一緒に、白灰の中へ一気に引き込まれた。


ロイ(ロイ)は二歩よろめき、またあたしたちへ追いついた。


前方に、他よりさらに太い覆天木(ふくてんぼく)があった。


ハーン(ハーン)が盛り上がった板根の一部を斧の背で叩いた。


どん。


中は空だ。


アーロン(アーロン)がすぐ根元の裂け目を指す。


「入れ!」


みんな一人ずつ潜り込んだ。入口は人の肩幅より少し広いだけ。中は湿って黒く、古い木と雨にふやけた土の匂いがした。


ザカ(ザカ)が最後に入って振り返り、折れ木を狭い入口へ噛ませた。


外の地面がまた震えた。


大蜘蛛が木の下まで追ってきた。


脚が板根の表面を削り、歯が酸っぱくなるような長い音を立てる。洞口の外を黒い影が行き来したが、中までは届かない。


中に別の出口はない。


少なくとも、あいつも今は入ってこられない。


全員が湿った木壁にもたれ、息を荒くした。


エイリン(エイリン)は少し落ち着くと、すぐ襟元から羊皮紙を引き抜いた。


「まだ記録するの?」


あたしは聞いた。


「記録しないと忘れる」


「忘れない方がいいと思うけど」


あたしはアーロン(アーロン)へ向いた。


「さっきの、何?」


「二層だ」


彼は言った。


「中は水、外は裂水石粉(れっすいせきふん)。一緒に破れると爆ぜる」


あたしも自分の紙を取り出し、下を向いて書きつけた。


アーロン(アーロン)が一目見る。


「これは覚えなくていい」


あたしは顔も上げなかった。


「あんたに関係ない」


板根の外で、また脚が木を削る音がした。


あたしは文字を書く手をもっと速くした。

水の精霊は、コラのもとを去ったわけではありません。


絆こそが、遠古の精霊を呼び寄せるための土台なのです。これからのコラにも、どうぞご期待ください。


背中を巨大な葉に擬態させる蜘蛛。想像できますか?


枝のように見えるものも、実は太い蜘蛛の糸なのかもしれません。


エイリンの魔法と、アーロンの小さな道具がなければ、皆は最初の一瞬で蜘蛛の腹の中に入っていたでしょう。


道具の作り方は、覚えなくて大丈夫です。


皆さんが、こんなに大きな蜘蛛に出会うことはないはずですから。


どうぞ第七節「雨の樹海」をお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。