17-5 巨葉の下
ようやく、あの怪魚の口元から逃げ出せました。
霧も晴れました。
草原に、羊の群れ。それから、久しぶりの陽の光。
……待ってください。
ここは本当に、そんなに穏やかな場所なのでしょうか?
誰もすぐには答えなかった。
みんな、まだ寝転がっていたからだ。
濾潮林を走り抜けたあと、陽光が濡れた服に少しだけ温みを戻してくれた。草の斜面を渡る風には海霧がなく、乾いている。耳の中を抜ける時、少しくすぐったいくらいだった。あたしは脚を伸ばした。ふくらはぎがすぐ酸っぱく震え、仕方なくまた寝転がる。
ここの草は足首くらいまでしかない。場所によっては脛まで伸びている。斜面は遠くへ向かってずっと持ち上がり、その明るい空の下に中央群峰がのしかかっていた。山腹は雲に切られて何段にも分かれ、一番高いところはまったく見えない。
誰かが山を何本も雲に突き刺して、抜くのを忘れたみたいだ。
パフが先に籠から這い出した。
草地を踏み、ぐるりと匂いを嗅いで、尻尾をゆっくり下ろす。四匹の小さな松果鼠は後ろに続いたが、頭を出した途端、また引っ込んだ。
斜面の向こうで何かが草を食べていた。
最初に見えたのは、地面を引きずる茶色い毛の塊だけだった。低く伏せて動かない。誰かが濡れた縄束を草の間に投げ捨てたみたいだ。風が吹き抜けると、毛束の先が一本ずつ跳ね上がり、その下に短い脚と丸い耳が見えた。
「羊か?」
ロイが聞いた。
「似てるな」
ハーンが言った。
「毛はあまり似てない」
あたしは言った。
近くに、ちょうど抜け落ちた硬い毛束があった。拾い上げる。茶色く、細い鞭みたいに太い。表面には角のような稜が何本も走っていて、触るとなめらかではない。でも手を刺すほどではなかった。
折ってみる。
曲がった。
さらに曲げる。
ぱん。
硬毛が勢いよく戻り、伸びてきたエイリンの手の甲を打った。
彼女は息を吸ったが、怒りはしなかった。ただその毛束を目の前へ持ち上げて見る。
「先端が硬い」
毛先で羊皮紙をこすった。
紙面にすぐ浅い傷が残った。
ハーンも寄ってきて、毛根をつまんだ。
「粘る」
「使える?」
あたしは聞いた。
「籠手の外層、縄の芯材。たぶんいける」
彼は言った。
ザカとロイは少し離れたところに立ち、羊の群れを長く見ていた。
「肉は多いか?」
ザカが聞いた。
ロイは、気の毒なくらい短い脚を見た。
「毛の方が多い」
あたしは耳を後ろへ倒した。
「先に食べること考えない。まだあたしたちを噛んでないんだから」
エイリンが紙に数文字を書いた。
滾鬃羊。
名前を書き終えた瞬間、斜面の上の滾鬃羊たちが一斉に頭を上げた。
次の瞬間、頭と四肢を毛の中へ縮める。
一頭。
二頭。
それから群れ全部。
茶色い毛玉が斜面を転がり下りてきた。
めちゃくちゃに転がっているわけではない。
少し体を傾けて、石や仲間を避けている。硬毛は外側へ広がり、地面にぶつかると少し跳ね、また下へ転がる。小さい何頭かがぶつかって一塊になり、二回転したのに、ばらけもしなかった。
「脚が短いわけじゃなかったんだ」
あたしは言った。
一頭の滾鬃羊があたしたちの前をかすめた。短い脚が毛の中でちらりと見える。
あたしは少し止まった。
「まあ、脚が短いのも役には立ってそう」
あいつらは、あたしたちに向かってきたんじゃない。
逃げている。
斜面の上に、灰白色の影が現れた。
十匹ほど。体を低く沈め、ほとんど草に紛れている。普通の狼より一回り大きいのに、動くたび肩や背からごく軽い触れ合う音がした。草に当たる甲片の音じゃない。
骨だ。
灰白い骨板が皮膚から生え、頭、首筋、肩甲、肋の側面を覆っていた。不完全な骨格を体の外にまとっているみたいだ。骨板の間には暗い毛と筋肉が残り、息をするたび動きがはっきり見える。
エイリンの筆が止まった。
「骨甲狼」
「今回は先に名前つけるなよ」
ロイが言った。
「もうつけた」
狼群は羊を追って一気に駆け下りてはこなかった。
散った。
左に三匹。
右に四匹。
残りがゆっくり斜面を下り、あたしたちと滾鬃羊の間の空きを塞ぐ。
草の血の匂いがした。あいつらの体からだ。それから、乾いた骨粉の気配。その匂いは霧中の狩り手ほど重くない。けれど近い。とても近い。
ヴァンスが矢を一本抜いた。
弦が鳴り、矢は先頭の狼の肩甲に当たった。
きん。
矢尻は弾かれ、浅い白い痕を残しただけだった。
その狼は退きもしない。
ただ、頭をさらに低くした。
「背中合わせ」
アーロンが言った。
あたしたちはすぐ寄った。ハーンは補給袋を足元にかばい、ロイは短刀を握る。顔色は少し白いが、最後ろへは下がらなかった。エイリンの杖が上がり、ヴァンスの矢先は骨板の隙間をゆっくり探す。ザカは正面に立ち、槍先を低く草へ向けていた。
狼群も急いでは飛びかからない。
あたしたちがまだ立っていると分かっている。
待っている。
草葉が風に押し倒され、また跳ね起きる。黄褐色の目が何対も草の根元で位置を変え、包囲は少しずつ締まっていく。
この匂いは嫌だ。
あいつらが霧中の狩り手より必ず恐ろしいからじゃない。
あたしたちは一つの口から走って逃げたばかりなのに、今また別の口の中に立っているからだ。
斜面の上から、急に連続した衝突音が響いた。
どん。
どどん。
何十頭もの滾鬃羊が、側面の高いところから転がり下りてくる。あたしたちも狼も見ていない。ただ塞がれていない別の斜面道へ向かって突っ込んでいた。茶色い毛玉が草屑と泥を巻き上げ、斜面の半分近くを動く石に変えていく。
若い骨甲狼が何匹か、先にそちらを向いた。
こらえきれなかった。
包囲の左側がふいに緩む。
「左」
アーロンが言った。
あたしたちは一斉に動いた。
エイリンが前へ杖を振る。林ごと押し倒すような力ではなく、低い風だけを草の斜面へ押し流した。高草が左右に伏せ、狼の脚と腹が露わになる。
ヴァンスはすぐ矢を替えた。
骨板は狙わない。
一矢目は狼の目をかすめ、顔を逸らさせる。二矢目は別の一匹の前脚と肩甲の間へ打ち込まれた。その狼は均衡を失い、前へ深く突っ込みすぎる。
ザカが迎えた。
槍を骨板に突き立てはしない。槍の柄を横に入れ、開いた下顎をつかえさせた。狼の牙が木を噛み、骨甲が槍身にぶつかり、彼の腕の筋肉が全部張る。
「珂拉!」
あたしはもう横へ回っていた。
首の下の骨板は、いちばん下まで伸びていない。
頭を低くし、その硬い白い縁の下へ短刀を送り込む。手応えは柔らかく、すぐ熱い血の匂いが手の甲へ跳ねた。
骨甲狼は一度痙攣し、脚から草の中へ崩れた。
ザカが槍を抜く。
「行くぞ」
追わなかった。
その狼が倒れると、残りの数匹はその場でしばらく見ていた。滾鬃羊はもう遠くまで転がり去り、斜面には押し乱された草の筋だけが残っている。狼群は血を嗅ぎ、それからあたしたちを見て、最後には一匹ずつ向きを変え、羊群が消えた方向へ追っていった。
あたしたちを怖がったわけじゃない。
羊の方が食べやすいだけだ。
それはとても筋が通っている。
そして、とても腹が立つ。
あたしたちは迎光坡で野営した。
骨甲狼の処理は面倒だった。ハーンとザカが骨板の縁から刃を入れ、まず皮を裂き、それから甲を一枚ずつ持ち上げて外していく。骨板の下は普通の筋肉だった。ただ筋膜は濡れ革みたいに厚く、肉の繊維も粗い。
火でしばらく炙ると、鉱石と野肉の匂いが一緒に立った。
あたしは一口噛んだ。
硬い。
それに、薄い鉱物の味がする。
狼肉はもともとうまくない。
体に骨を何枚か増やしたところで、おいしくなるわけじゃなかった。
ロイは長いこと噛んでいた。
「少なくとも魚じゃない」
それは本当だった。
夜に霧はなく、星明かりが草の斜面へはっきり落ちた。背後の濾潮林だけは、夜に貼りついた雲みたいに白いままだった。あたしが火番をしていると、遠くで滾鬃羊が石にぶつかる音や、狼群が足を引きずりながら斜面の下を回る音が時々聞こえた。
火に近づくものはなかった。
翌日、巨葉冠林はもう目を細めなくても見える距離にあった。
残りの草斜面を抜けて、最初に見えたのは葉ではない。
幹だった。
一本一本、地面から立ち上がっている。城壁の塔柱みたいに太い。樹皮の色は濃く、遠目には岩肌にも少し似ていた。高い枝葉はさらに高い影の中へすっかり隠れている。たまに水滴が一つ落ちるから、上にもまだ何かがあると分かるくらいだ。
「ここ、知ってるの?」
あたしはアーロンに聞いた。
彼はその森を見ていた。
「噂なら少し」
「役に立つやつ?」
「とは限らない」
あたしは彼を見つめた。
アーロンは少し黙った。
「昔、ここまで来た者は少なくない」
「彼らはこの林を危険だと言った。何が危険かは、人によって違う」
「それで、あんたは?」
「本当に入ったことはない」
尻尾の先がぴくりと跳ねた。
「つまり、ここが危険ってことしか知らないの?」
「ああ」
「それで連れてくる?」
アーロンは前を見たまま、声も平らだった。
「百年以上経った」
「変わっているかもしれない」
少し止まる。
「試すしかない」
全然慰めにならない。
「そうだよ」
エイリンが羊皮紙を抱えて横から現れた。
「どの生き物が危険で、どの植物が使えて、どこが通れないのかも知る必要があるし」
あたしは彼女を見た。
ヴァンスも彼女を見た。
エイリンは羊皮紙を抱きしめ、黙ってアーロンのそばへ少し寄った。
よし。
少なくとも、今の自分がみんなを怪物の餌に差し出すみたいなことを言ったのは分かっているらしい。
巨葉冠林へ踏み込むと、光が一気に減った。
林は密ではない。木と木の間はとても離れていて、馬の群れが横に並んで通れるくらいだった。けれど一本一本が大きすぎる。主幹は塔楼みたいに幅広く、板根が地面へ押し出されている。低い壁が何枚も林地を小道に切り分けているみたいだった。
エイリンは首が痛くなるほど見上げた。
「あたしたちの神樹と同じくらい大きいかも」
ヴァンスは反論しなかった。
その一言で、あたしはますます上を見たくなくなった。
この木を、あたしたちはひとまず覆天木と呼ぶことにした。
枝は普通の木の幹より太い。大量の気根と蔓が、見えない樹冠から垂れ下がり、地面に届くとまた土へ刺さっている。葉は船帆みたいに大きく、互いに重なっているのに、完全には垂れてこない。ここの地が軽いせいか、葉脈の中に硬い骨でも入っているせいか。とにかく、それらは頭上に張り、何層もの緑の屋根になっていた。
葉面に水が溜まりきると、決まった葉縁から傾いて落ちる。
細い流れだけのものもある。
小さな滝みたいなものもある。
水は板根を伝って浅い小川や水たまりに集まり、林全体を湿って甘い匂いにしていた。茸と腐葉が、今ちょうど目を覚ましたような匂いもある。
一匹の水簾蛙が、葉の排水口の下に伏せていた。体は平たく、濡れ石と同じ色をしている。小虫が水に流されて落ちてくるのを待っているのだ。もっと高いところには、数匹の脈背虫が巨葉に張りついている。背中の模様が葉脈とそっくりで、近づかなければ生き物だと分からない。
頭上から光の柱が一本落ちた。
透明な小さな飛虫の群れがその中へ漂い込み、腹の中に淡い白光を抱えていた。空中の胞子の周りを回り、風に吹かれた小さな水玉がたくさんあるみたいだった。
蔓の上では、長い尾の小獣が何匹か走り抜けた。樹皮の裂け目のそばで止まり、舌を伸ばして樹液を舐める。あたしたちが枝を踏む音を聞くと、葉影へ潜り込んだ。
エイリンは数歩進むごとに止まりたがった。
羊皮紙はすぐ文字で埋まり、めくる動きもだんだん早くなる。
あたしは彼女を見た。それから光柱の下に生えた見知らぬ羊歯を見て、手を伸ばす。
「一枚ちょうだい」
エイリンは少し固まった。
「あなたも記録するの?」
「うん」
あたしは炭筆を受け取った。
「草を記録する」
光の当たる場所の植物は、影の中のものとまったく違っていた。小川のそばには細長い葉があり、揉み潰すと少し苦く冷たい匂いがする。板根の下には丸葉の小草が生え、葉面が粘る。パフは匂いを嗅いだ途端、鼻をそっぽへ向けた。淡紫色の菌叢は倒れ葉の下に隠れ、菌傘の裏に細い褐色の紋があった。
あたしは一つずつ書いた。
場所。
匂い。
パフが嗅いで逃げるかどうか。
小さな松果鼠が一舐めだけするのか、少しなら齧るのか。
あいつらの鼻はあたしより速い。
でも、あいつらが食べられるからといって、あたしたちが食べられるとは限らない。
それはもう忘れない。
だから、歩みはさらに遅くなった。
ハーンでさえ急かさない。彼はずっと覆天木の板根と垂れた気根を見ていた。たぶん、どうやって船へ運ぶかをもう考えている。ロイは何度も上を見上げていた。また足のある葉が落ちてこないか、気にしているのだ。
巨葉冠林は壮麗だった。
そして静かだった。
アーロンが言った危険な場所には、今のところ見えないくらい静かだった。
あたしは見知らぬ菌叢の前にしゃがみ、菌傘の下の褐色の紋を見ようとした。その時、耳が急に動いた。
何かを先に聞いたわけじゃない。
周りが先に、音をなくした。
蔓の上の長尾の小獣が消えている。
水簾蛙は石の隙間へ縮んだ。
葉に張りついた脈背虫は全身を低く伏せ、翅さえ動かさない。
「立て」
ザカの声が背後から来た。
顔を上げる。
彼はあたしを見ていなかった。
耳は前へ向き、体はもう森の奥へ向いている。アーロンも足を止め、手を腰の横へ置いた。
「何だ?」
彼が聞く。
ザカはただ言った。
「でかい」
地面が一度震えた。
板根の水玉が同時に震え、近くの小川に輪が広がる。
もう一度。
遠くから、枝葉が巨大な体に押し分けられる音がした。
遅い。
でも、何にも止められていない。
全員が同じ方向を見た。
一本の覆天木の後ろから、まず樹皮ではない深い色の輪郭が現れた。
次に、頭。
龍みたいだった。
それとも、何かの蜥蜴を数えきれないほど大きくしたもの。
そいつは巨木の後ろから、ゆっくり歩み出た。
肩と背だけで、ザカ六人分はある。
十二メートル近い。
体の大半はまだ木々と影に隠されている。尾がどれほど長いのかも見えない。
巨大な頭が、あたしたちへ向いた。
攬霧木の森を抜けて、ようやく少し開けた場所へたどり着きました。
狼の群れにも出会いましたが、幸いなことに、それほど大きな脅威にはなりませんでした。
ところで、皆さんは狼の肉を食べたことがありますか?
食べたことのある人は、きっとあまり多くないですよね。
少なくとも私はありません。
硬くて筋張っていたりするのでしょうか。
今回登場した滾鬃羊は、雲のように見えて、触るとふわふわしている羊ではありません。
彼らの長い毛は重く乱れていて、ほとんど地面まで垂れています。走ると、たてがみ全体が体と一緒にうねり、草原を転がっていく大きな毛玉のように見えるのです。
そして覆天木ですが——
名前には「木」と入っていますが、私の中のイメージでは、空をすっかり覆ってしまえるほど大きな一枚の葉に近い存在です。
皆が足元に踏んでいるのは、土なのでしょうか。根なのでしょうか。それとも、まったく別の何かなのでしょうか。
さて、これ以上は言わないでおきます。
次の節では、もっと大きな問題を先に片づけなければならないようです。
あの巨木の向こう側にいる人影……
本当に竜なのでしょうか?
どうぞ第六節「葉裏」をお楽しみに。




