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ワタクシ。Ritaであります!  作者: リノキ ユキガヒ
第9章 「定例会乙号事件」
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第9章 「定例会乙号事件」④

 傷心と言っていいのか?失意というのか?

 自宅まで向かえに来てくれたマネージャーさんと私は現場へと向かった。

 不幸中の幸いなのか?本日の予定はJ&J編集部でフッティングだった。

 私は恐る恐るその場所である会議室のドアをくぐった。

 遅刻の事も後ろめたかったがそれよりも、あのような啖呵を切った事に今更ながら恥ずかしさというか、何というかバツの悪さというか、気まずい気持ちがあった。

「あ、リタさん入られました~」

 女性スタッフのどなたかが私の入室に気づき声をあげた。

「おはよう」

 久我山編集長は何事もなかったかのように振る舞ってくれた。

 他のスタッフの方々もだ。

「本日は誠に申し訳ありません!」

 マネージャーさんが声を張り上げて私の遅刻の謝罪をする。

 それにならって私も深々と頭を下げた。

「ほんとよ~。ちょっとコキ使いすぎなんじゃな~い、お宅の事務所。このままだとリタちゃん辞めてフリーになっちゃうわよ」

「え!?まじッスか!?そんな事になってるんですかリタさん」

 マネージャーさんが青ざめた顔で私の方を見る。

「えぇ?」

 そう言われた私自身が寝耳に水なので、キョトンとしてしまった。

「あはははは!ウソウソ!今の忘れてちょうだい。珍しくリタちゃんが遅刻したからからかっただーけ」

 久我山編集長はケラケラとお腹を抱えて笑った。それに釣られるように他の方々も笑い声を漏らす。マネージャーさんは安堵のため息をついた。それを見た皆からドット笑い声がおきた。

 空気が変わる。

 和むというか、柔らかくなるというか、私の心にある何かササクレだったものが一気に萎んでいった。

「さぁ!仕事をとっとと終わらせて、今日は何か皆で食べに行きましょー‼」

 スタッフの方々が「おぉ」と返事を彼女に返す。

 私はそこで室内の違和感に気がついた。

 いつもならハンガーや大きい袋が目立つのに、今日に限ってはスーパーのビニール袋を大きくしたようなものが会議室の床を埋め尽くしている。

 私は思わずその袋に書かれている、店名のようなものを読み上げた。

「と、の、や…。トノヤ!?」

 その間抜けな声が久我山編集長の耳に入る。

「そっ。ものすごーく安いお店よ、そこ。でもね肝心なのは…」

「着こなし!!」

 彼女の問いに私は満面の笑みで答えた。

「そう!」

 あの笑顔が私の前に。

「J&Jはなんでもやるわよ~。ファストも、裏原も、馬喰も横山でもドンとこいよ!」

「ハイ!」

「あ、でも」

「?」

「今日のご飯代はリタちゃん持ちよ」

「えぇ~!!」

「寝坊する位働いてるんでしょ。それ位出しなさいよ。カリスマモデルさん」

「はぁ」

 沸き上がる笑い声。

 それを合図にフッティングの作業は始まった。


 何かを忘れる様に私は仕事に没頭した。

 しかしどんなに仕事に打ち込んでも無情にも時間は進む。

 当たり前の事だが…。

 その進んだ先。つまり私が今一番どうにかしないといけない問題が迫ってきている。

 そう、定例会への参加をどうするかだ。

 あの時、泣きながら叫んでしまった気まずさも勿論あるのだが、それより何より、その内容が完全に友人を否定するものと捉えかね無いものだからだ。

 無論というか、当たり前というか、彼らから謝罪のメールは頂いた。しかし元来友人付き合いというものが判らない私はどう返信していいものか判らないので、放置したままだ。

 これが失礼極まりないこと位は重々承知なのだが、どのような文面で謝ればいいか判らない。

 仕事であれば、このようなことはある程度定型文と化しているので、なんとなくは判るが、こと友人と言われる方についてはてんで見当がつかない。

 私に友人が他にもいれば相談したりする方法もあるが、生憎ほかに友人はいない。

 八方塞がり、四面楚歌、この手詰まり感が実に気持ち悪く、それらを振り切るように実は仕事に打ち込んでいた訳でもある。

 …。イヤ…。正確には仕事に逃げていたという方が正解だろう。

 酷い言い方をすれば只の


 現実逃避だ。


 何かものの本で読んだ事があるが、人間自分に不利な事が重なる

 と現実から目を反らすようになると…。

 自分に不利な情報は信じない様になると。

 正に今の自分がそうである。

 それは頭で判っているのだが、身体がそれを拒むように、行動に移せない。

 度胸、いくじ、勇気、自尊心。思いやり。 

 何かが私の邪魔をしているのだろうか?何かが私に足りないだけなのだろうか?

 とにかくこの事は考えたくないはずなのにチラチラと頭の中に浮かんできてグルグルと回り、答えの出ない問題に苛まれる。

 そんな悶々した日々が過ぎていくが、やはり時間は無情だ。

 私の所に三冊の「雑誌○」が届く。

 定例会の誘いである。

 メールの方も勿論きている。

 しかし、その日に私は仕事を入れてしまった。

 彼らにしてみれば何かしらの思いを託してるはず。

 いや。最後の生命線。私達を繋ぐ唯一のもの。

 この日に私が現れなければ定例会そのものの存在が危ぶまれる。


 それは彼等にとって賭けかもしれない。


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