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ワタクシ。Ritaであります!  作者: リノキ ユキガヒ
第六章「命名!」
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 自宅でパソコンのメールを開く。例によって小川さんからの定例会のお知らせな訳だが、今回は少し変わった文言が付け加えられていた。

 

「そういえば、この定例会に名前ないね」


 と。

 はたと思い私は天井を見上げた。

 確かにいつも「定例会」と言っているだけであってこの会合に名前は無い。

 と、いうか仲間内では「定例会」で通じる事なので今更、名前の必要性を感じないのも確かである。

 だからと言って愛着が無い訳でも無い。

 あの名戦闘機、零戦だって海外だと「ゼロ」の愛称で親しまれている。

 それに戦闘機には大概、「ペットネーム」というものが付けられ、解かりやすく、愛着が沸くようにするのと、形式番号でどの戦闘機が最新鋭か解りにくくする為もある。つまり


 F-14

 F-15

 F-22

 

 と、表記すれば当然最新鋭の戦闘機は番号順であれば、F-22である事は想像に難しくない。だがこれを


 トムキャット

 イーグル

 ラプター


 と、すれば一見するだけではどの戦闘機が最新鋭かは判りづらい。

 こういうように軍事においては名前ですら重要な意味をなすのだ。

 まぁ、話しが横道に反れたが…。

 ちなみにその余韻はとこにつくまで続いた。

「定例会の名前かぁ…」

 そう呟きながら私はウトウトと眠りについた。

 日は変わって定例会の日になった。

 

「そうなんだよー。この会合って名前が無いんダヨー」

 

 話題は当然この会合こと定例会の名前についてになった。

「んぁ。言われみれば」

 カネコさんが小川さんに続く。

「別にいいんじゃないの?」

 私は素っ気なく答え冷めたコーヒーをすすった。

「あー。隊長ならイイ感じの名前付けてくれると思ったのにナー」

 小川さんが残念そうに両腕を頭の後ろで組んでシートに反り返った。

「そんな事いわれても」

「んぁ。別にいーんでネーノ」

 カネコさんはそう言うと窓の外に視線を流移した。

 会話が途切れる。

 三人の間に何か不自然な空気が滞留する。別に気まずいとか、そういうのではないが、こう、このまま別の話題に移るのが少し違うような…。

 私はコーヒーカップを両手で包むように持ち、コーヒーをくゆらせた。

「名前かぁ」

 改めて心の中でつぶやく。

 そもそも我々は何の為に集まっているのだろう。そこから思い起こしてみた。

 雑誌○をダシに銘々好きな軍艦や戦闘機について語り合う。只それだけの集いだ。そこに研究家気取りのマニアみたいに無駄な考察は一切ない。

 少年が初めて戦闘機や軍艦を見てカッコイイと思う。そういう気持ちをお互いに共有したいが為に集まっているのだ。

 本当にそれだけだ。

 何回見たか判らない、戦艦大和の公試中の写真。

 最高速度で波を切り裂くその雄姿。戦艦大和を象徴する一枚だ。

 ため息が出る程カッコイイとは正にこの事だろう。しかもこの写真は大和の説明する際よく用いられるがそのサイズがデカかった事は余りない。

 極、稀に付録のポスターなんかで大きい写真はみるが大概が小さいサイズだ。

 しかし、大きさの如何に関わる事無くその雄姿が衰える印象は受けない。

 艦首で波を切り裂き、そのほとばしる飛沫は甲板を超える。そこから、海面に向かって深くえぐれている第一砲塔までのラインは、戦艦とは思えない位に独特で美しく、優美なラインを形成している。

「美しい」という言葉がこれ程似合う戦艦が、いや!船がこの世にあろうか!

 その姿は米軍のパイロットが攻撃をためらったという逸話が残っている位だ。

 続く、第二砲塔、副砲、艦橋へとなる。艦の司令部となる部分は500ミリの装甲が施された、言葉通りの「黒鐵の浮かべる城」。

 最終的には対空火器が増設され、とげとげしい姿になったが、初期の頃の大和はまだ、対艦戦闘を重視していたので、この辺りの印象は大分違う。

 海上のありとあらゆる艦船の砲弾を弾き、敵艦隊へ巨弾を撃ち込み、これを殲滅する。


 眞鐵ノソノ艦

 日ノ本ニ

 仇ナス國ヲ攻メヨカシ


 だ!


 大和が美しく見える理由はそれだけではない。

 煙突だ。

 普通の軍艦なら大体が垂直に船体中央から生えているものがだ、大和は違う!

 いや、ここはあえて大和型と言わしてもらう。

 大和型戦艦は煙突でさえその機能を最大限まで突き詰めた!

 まず、射撃の際に邪魔になる排煙を極力後方に流すためにその角度は艦尾に向かい傾斜している。

 その角度が実に絶妙で艶やかで美しい。

 しかし、その艶やかさとは裏腹に実は装甲が施されていて、煙突内部に万が一砲弾や爆弾が侵入してもそれが食い止めるられるようにできている。

 機能美という言葉は大和型戦艦の為にあるといっても過言ではないだろう!

 これほどその言葉がこれ程似合うものは無い!

 更にだ!

 大和型戦艦が語源となる言葉だってある!

 それは


「超弩級」


 なにか、とてつもない大きいものや、他を圧倒する事を一般的に指す。

 しかし、本来は戦艦の大きさを示すものであり、


 戦艦『ド』レッドノートを『超』える階『級』の戦艦


 を縮めた言葉だ。

 そうだ!大和は全てを凌駕しなけばいけないのだ!

 圧倒的な美しさは言葉さえ生み出す!

 連合艦隊旗艦大和!

 戦史を一変する暗号も戦艦大和で受信された!


 ニイタカヤマノボレ1208

 新高山登れヒトフタマルハチ



「…マルハチ」


「隊長なんて?」

「んぁ、マルハチがなんとか?言ってた気が」

「あぁ、ちょっと戦艦大和の事を頭に思い浮かべたら…つい…」

「ひょっとして、ニイタカヤマノボレ1208カ?」

「そう、それ」

「んぁ、世界一有名な暗号電文でもあるな」

「確かにね~。真珠湾攻撃とセットでよく出てくるもんね」

「それだけ、海軍の暗号がザルだって事だよ」

「ザルとは失礼ね。部分的に解読されたのを前後の文脈から推測してたのよ。完全にザルになったのは海軍乙事件以降よ」

「そうだったナ」

「んぁ。陸も海も日本の暗号はどっちもザルだべ」

「この手に関しては耳が痛いわ」

「ま、陸軍の方だと情報収集に関しては大分力を入れていたダヨ」

「んぁ。一00式司偵とかあるもんな」

「偵察機という名目で専用設計したのは旧日本陸軍が初めてらしいしナ」

「んぁ、これが言われみればなんだな。他の国は、戦闘機からの派生型だったりするもんな」

「確かに言われみればだわ」

「んぁ。アメリカ空軍なんてU2からだな、本格的なのは」

「それだけ帝国陸軍の航空隊が先鋭的って事ダヨ」

「それは聞き捨てならないわね」

「んぁ、海軍にもあるもんな」

「彩雲、零式水偵とかね」

「ワレに追い付くグラマン無し!ダナ」

「んぁ。でも折角集めた情報も生かしきれないと意味ねーべ」

「本当。日本海海戦では世界初の電子戦を繰り広げてたのにねぇ」

「日露戦争は正に情報、諜報の賜物って事があまり知れ渡ってないんダナ」

「そう。あと陸・海共同作戦って事も」

「203高地と日本海海戦はセットダヨ」

「んぁ、なんでも派手な方に目は行きがちになるからな」

「そのところは国民性もあるわね」

「日本だけで見ると甚大な被害を出しながらなんとか制圧したようにみえるけど、欧州戦線の被害からすると低い部類に入るダヨ」

「んぁ。第一次世界大戦のヨーロッパの被害は桁が違うからな」

「あ~。そういう解釈ね」

「しかも、難攻不落と呼ばれた旅順の要塞を、戦車や飛行機を使わず、歩兵のみで攻略したんダナ」

「そう聞くと凄い事を成し遂げたのね」

「のちにそれが歩兵神話のモトになるんだけどナ」

「んぁ。軍そのものが官僚化しちまったのもあるな」

「なんだか府に落ちない話ね」

「んぁ。どこの国の軍隊もそうそう完璧には動いてねーよ」

「なるほどね~。解っている事だけど悲しいわね」

「んぁ。けどアメリカ軍なんかはすぐフィードバックするしな」

「思考も柔軟だしナ」

「結局は民族性に帰結しちゃうのよね。軍事って」

「識字率の高さが敗因だなんて視点もあるナ」

「んぁ、旧軍の?」

「そうダヨ。文章にしちゃえばとりあえずはしれわたっちゃう。解釈や理解度は別にして」

「あ~。何となく分る気がする」

「そう、伝える側もそれで伝えた気になる」

「んぁ」

「で、実は何も伝わってなかったり、理解されてない、ってことがよくあったって事ね」

「そういう事ダヨ。で、方やアメリカ軍とかは、イラストや漫画なんかで危険事項や重要事項など訓練に際しては文字なしでも理解できるようにした。しかも訓練用の映画なんかはハリウッドで撮影してた」

「んぁ、マニュアル化の徹底と簡便化だな。それにアメリカは移民の国だし、皆が英語わかるわけでもねーらしーからな」

「そうか。読み書きが当たり前にできる日本人からすると不思議な事ね」

「ダナ、しかもアメリカはエンターテイメントの本場だ。誰かに何かを伝えるノウハウが当時からあったから、それも兵士の育成に一役かってるんダナ」

「文化、気風の違いが色濃くでるわね」

「んぁ。方や日本は…」

「月月火水木金金ね」

「ダナ」


  と、名無しの定例会は本日も終わりを迎えた。

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