困惑
最果ての地。世界の境界線。理から外れた魔の大地。
その地には名はなく、その地にたどり着ける人間はいない。
そこは人ならざる者が蔓延っている。
空は常に暗雲が立ち込め雷鳴を轟かせる。地面には草一本生えていない。
まるで冗談のような光景だろう。こんな光景普通は、拝めやしない。物語の主人公の気分を存分に味わえる。このまま魔王でも倒しにいけばいいのだろうか。
まぁ、これからすることと大した相違はないが。
ここには仕事をしに来た。ここは遥か昔、神々が魔を封じた大地だとか曰く付きだ。平時は結界もあり、ことさら問題も起こらないが、稀に高位の魔が顕現する。まったくもって厄介。万が一、結界を破壊されたら昔よりも深刻な事態になるのは目に見えている。つまり守るものが必要なわけだ。
それを防ぐために、高位の魔が顕現する予兆を事前に察知し、無力化する。
それが今回のエイゲンの仕事だ。
「かぁーっ、だるいのぅ。なぁんで、わしがこんなことせにゃいかんのかいの!」
心底だるそうに叫ぶ。
しかしその声に答えるものは誰もいない。
エイゲンは、周りを見渡す。そこには吹きすさぶ荒野と枯れ木しかない。何もないのを認めると、やってられないとばかりに深くため息をついた。
「ちぃと、早く着すぎたかね」
もう一度周りを見渡す、まだ降りてきている気配はない。
今度は軽くため息をつき、その場にどかっと座る。
そして静かに目を閉じた。
神様とは何だろう。
普通は、願いをかなえてくれるとか、天罰を落としてくるとか。身も蓋もない言い方をすれば、飴と鞭を使いこなすすごいのだろうか。
ボク的にはひげを生やして大きい杖を持った、糸目のやさしそうなおじいさんだ。
神様と言ってもいろんな神様がいるのかもしれないけど、だからと言って目の前の女の子が神様なんて信じられるだろうか。いや信じられない。
信じられない、信じられないはずなのに、なぜだろう心の奥底ではそれを嘘だと思っていない。
サクヤの顔を見る。入ってきたときと同じで表情は変化はない。
いや、違う!? なんか若干にらんでる気がする。どこか殺気すら感じる。
殺気は完全な妄想なわけだが、自称神様のサクヤの表情がどことなく変わっているのは確かだ。
神様を自称するまったく知らない少女が、目を細めてこちらを見ていたら動揺するのも無理はないだろう。
クーリアが自分の妄想に、内心ビクビクしていると、サクヤがさっきより少しだるそうな声で小さく『・・・・・・眠い』とボソッと言った。
ネムイ、眠い? 眠いってあの? じゃあさっきのは眠くて目が閉じそうなだけだったの!?
クーリアの動揺が顔にも出始めたころ、半開きの目(口も半開き)で虚空をにらんでいたサクヤが行動に出た。クーリアが入っているベッドに入り始めたのだ。
突飛な行動にクーリアは固まってしまう。クーリアが動けないでいる間に、サクヤはベッドに入り終え、寝息をたてる。
……ええええええええええええぇぇ!!!?
「えええぇぇぇーー……」
あまりの衝撃に、心の中だけじゃなく口にも出してしまう。
どうすればいいか一瞬悩んだが、ふっと力を抜いてベッドに倒れこむ。
そしてクーリアは考えるのをやめて、目をそっと閉じるのだった。




