戸惑い
流れ、流され。
時も人も。
世界は千変万化。
すべてが流動する。
できるのは確固たる己を持つことだけ。
一握りの勇気だけを胸に一歩踏み出す。
選んだのは自分。
後悔はしていない。
後ろは決して振り返らず。
失ったものには目をくれず。
ただひたむきに前だけを見つめ求める。
求めるは強さ。
それはどこか狂気的で。
狂気の果て、得られたものはたった一つ。
そして代償はその他のすべて。
目を最初に開け映ったのは、見知らぬ天井だった。
「・・・・・・う、くっ」
起き上がると体のあちこちが痛んだ。
体には真新しい包帯が丁寧に巻かれていた。
「ここは、どこだろう・・・・・・? 」
きょろきょろと周りを見渡すが、見覚えがあるわけもなくただ困惑するだけだった。
隣ではアルトが気持ちよさそうに寝ている。
クーリアはアルトを撫でながら、この場所のことを考えるが、やっぱり皆目見当もつかない。
「・・・・・・ん、んー」
首をかしげながら唸っていると、部屋にサクヤが入ってきた。
「起きた?」
サクヤは抑揚のない声でそう言って、クーリアがいるベッドの隣の椅子に座る。
サクヤは座ると、持ってきた果物の皮をむきはじめる。
むきおわると、果物をフォークに刺しクーリアの口元まで運ぶ。
「はい、あーん」
そして表情を一切変えず、そんなことをしてきた。
「ふぇっ!? ちょっ、えっ!?」
クーリアは突然のことに奇声を発する。
しかしサクヤはクーリアの狼狽振りをまったく気にも留めていない。
そしてそのまま距離を詰めて、クーリアの口に果物をつっこんだ。
「え、え、え?・・・・・・・ほぐっ!?」
「ちゃんとよく噛んで食べてね」
サクヤは、その様子にどこか満足そうな顔をする。そしてそのまま2つ目、3つ目を無遠慮に無慈悲につっこむ。
クーリアは抵抗するが、それは無意味に終わる。文句のひとつも言いたいところだったが、3つも果物を
詰め込まれた口ではしゃべることはおろか、声を出すことすらできない。
だからクーリアはまず口にの中のものを片付けることにした。サクヤに恨みがましい目をぶつけながら。
時間をかけて、ときどき軽くのどが詰まりそうになりながらも、ごくん、と最後のひとかけらを飲み込む。
特別知りたくはなかったが、口に大量にものを詰め込むとどうなるかを身をもって知ることになってしまった。本当に知りたくはなかったけど。
それにしても、とクーリアは思う。この人はいったい誰なんだろう、と。
一見、歳は近そうだが、雰囲気がなにか見た目と、どこかずれている気がするのだ。
まるで、まるでそう永い時を生きたような。
それにこの場所もよくわからない。確か森でオカマと戦ってはずだ。ここにも木々が生い茂り、自然が満ち溢れている、が自分がいたのはここではないと直感的にわかった。あの森も隅々まで網羅しているわけではなかったが、それでも違うとわかる。
考えていると頭が混乱してきた。不安がじわっと広がっていく。
ぶんぶん、と頭を振って不安を払う。
どれだけ考えても答えは出ない。ならばもう目の前にいる少女に聞くしかないだろうと思い口を開く。
「あ、あの!」
緊張のせいか、若干声が上ずってしまう。
クーリアは、頬を少し赤く染めて恥ずかしそうに、こほん、と軽く咳払いをして仕切りなおす。
「えと、あの、あなたは誰?」
すこし遠慮がちに緊張した面持ちで、だがためらわずに。
サクヤは特に表情を変えることなく淡々と告げる。
「ん、私はサクヤ。一応神様」
自分は神であると。




