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いや、マジであっつい。私が倒れそう。
「こんな環境で我慢させる方がよっぽど体に悪いでしょ!?」
「だが、治癒師たちが――」
「今はそんなこと言ってる場合じゃない! いい? 人間ってね、水と塩分と糖分をしっかり摂って、温度管理できないと普通に死ぬの!」
レオルドが、黙る。住民たちは、ぽかんとしてる。
「この人たち、今ギリギリだよ? あと少しで倒れてもおかしくない。冷却循環機、今すぐつけて」
「……」
「いいから!!」
「……分かった。この家に限り、使用を許可する。魔力を放出しろ」
「限りじゃなくて全部の家でやれって話なんだけどね!?」
冷却循環機が稼働すると、すうっと空気が変わった。
「……はぁ」
部屋のあちこちで、安堵の息が漏れた。ぐったりしていた人も、少しずつ顔色が戻っていく。
「ほら、やっぱり。まずは環境から。基本でしょ」
レオルドが、こっちを見てる。なんか、嫌な予感がする。
「……明日、もう一度来い。結果を確認する」
「いやなんで命令なの」
「必要なことだ」
「こっちも仕事あるんだけど!?」
レオルドは気にした様子もなく、短く言った。
「報酬は出す」
あ、そうなんだ。お金は大事。
「……じゃあ、明日だけね」
「うむ」
まあ、この家の人たちのことは気になるし、いっか。
「じゃあ私、そろそろ帰るわ。寝ないとだし」
「待て」
「なに」
「……来るのだな、明日」
「行くって言ったじゃん」
「そうか」
ほんの少しだけ、安心したように見えた。
ずいぶん、急に入った家の住民のことを大事に思ってるんだねぇ。
国の王子ってそんなもんなのかな。うん、想像もつかんわ。
「じゃあね」
裏口をくぐる。一歩。二歩。
振り返ると、まだレオルドがこちらを見ていた。
「……ほんとに来いよ」
「だから行くってば!」
ドアを閉める。
——いつもの薬局に戻った。
「……なんか、すごいことになってきたなあ」
とりあえず、明日も普通に出勤です(薬局にも、異世界にも)。




