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2-2

「そうだ。ゼロエスなんちゃらという薬は、まだ、あるのか」

 レオルドが、思い出したように言った。

「え? あー……あるけど、何?」

 白衣のポケットに一本だけ入ってるし、あっちの世界にはもうそれはドカンと在庫が。

「それを、売ってほしい」

 即答だった。

 いやまあ、昨日も言ってたけどさ。

「いや、だからさ……薬じゃないんだよね」

「では何なのだ。昨日は回復魔法ではない、と言っていたな。ならば霊薬だろう?」

「何その二択」

「キョウニンが精霊の遣いだということは、既に分かっている」

 セイレイノツカイ。なんかそういう魚、いそうだよね。

「だからさ、その霊薬っていう設定にされたヤツは、経口補水液っていう、栄養補給の飲み物で……もういいよ、細かいことは」

 どうせ理解できないだろうし。

 レオルドは、少しの間黙った。

 それから、低く声で言う。

「——薬じゃなくてもいい」

「え?」

「売ってくれ」

「いいけど……誰が飲むの? 王子が?」

「王子と呼ぶな。レオルドだ」

「はいはい。で、誰が飲む?」

 するとレオルドは、一瞬だけ視線を落とした。

「国中の者が、昨日の私のような症状で苦しんでいる」

「……え?」

 思わず聞き返す。

「この一ヶ月ほどで、急激に気温が上がった。多くの者が倒れている。私の家族も、だ」

「それ、普通にヤバくない?」

「治癒師たちも手を尽くしているが、追いついていない」

 ……あー。なるほど。

「そりゃま、こんだけ暑けりゃ、そうなるよね」

 じわっと汗が流れる。ほんとに、ただ立ってるだけでしんどいレベルだ。

 まあ今の日本の真夏だって似たようなもんだけどね。

 クーラーとか日傘が無いと、もう生きていけないよ。

「このままでは、国民が……」

「てか、みんなの暮らし、どうなってんの?」

 エアコンとか、この世界に標準装備されてるとは、思えないんだよなぁ。

 レオルドは少しだけ考えてから、頷いた。

「……やはり、貴重な薬を売るには実地を見なければということだな」

 いやそんな大げさな話じゃないんだけど。

「分かった。では、あの家を訪問してみよう」

「いや、んっと、私、行くの?」

 なにこれ、在宅患者訪問薬剤管理指導料が取れないのに行かなきゃなの?

 事前の届け出してないからね。

 もちろん介護保険もないし。

 うん、そもそもここ日本じゃないからね。

 ……まあ、いっか。ちょっと面白そうだし。

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