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「おお、なんと——」
コスプレの人たちがなんかすごい尊い目で私を見る。やめてくれ。
「……いや、えっと、は?」
ちょっと待って。え? 殿下? あ、さっきも言ってたよね?
いやいやいや?
「霊薬については、口外するな。国家機密となる代物だ」
男、もとい、殿下が低い声で言った。えーと、怖いんですけど。
「もちろん、対価は払う」
そう言って、殿下は、腰の袋から何かを取り出して、私の手に乗せた。
……重い。ずしっとした感触。
手のひらに収まるくらいの、大きめのコインがいっぱい。
金色。ぴっかぴか。いやこれ、どう見てもさ。
「……金貨? 純金?」
思わず口に出た。
私は持ってないけど、おじいちゃんの家で見せてもらったことがある。
「それで足りるか」
「いやいやいやいや!!」
思わず叫んだ。
「多いって!!」
どう見てもおかしい。
換算した時のケタが。今、金って高いし。いや、何にしても期限ギリの経口補水液の価格じゃない。
「そうか?」
「そうだよ!!」
殿下は目を細めた。
「……妙な娘だ」
「なにが!?」
「命を救った対価だ。どれだけ出しても足りないものだ」
「いやだから、命は大事だけど……!」
なんかもう、話が通じないですね。
しばしの沈黙。殿下は、私をじっと見た。
「欲がないのか、それとも、価値を理解していないのか」
「いや普通に理解してるけど!? むしろそっちが分かってないよね!?」
「そうか……」
殿下が悲しそうに、私の手の上のコインを見つめた。
ん?
「確かに、命を救ってくれた霊薬を金貨ごときで対処しようとしたのは、浅はかだった」
そう言って、コインを自分の袋に戻そうとする。
私は慌てて手を引っ込めた。
「いや! 金貨で十分です! ありがとありがと!」
「……ふむ。ならいいのだが」
貰えるものは貰いますよ。
私は金貨を白衣のポケットにしまった。
なにこの世界。なにこの人たち。
っていうか、ウチの裏口、一体どうしちゃったんだ?
いやそれより。
経口補水液一本で金貨って——
めちゃくちゃ美味しくないか?
薬局経営、何とかなりそう?




