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「頼む、この薬を売ってくれ!!」
男は私の肩をつかんできた。
さっきまで倒れてた人とは思えない勢いで。
「報酬はいくらでも出す!」
いや、これ、薬じゃないし。しかし。
——ほんとにほんとに、売れちゃうの?
「いや、その……1本、数百円なんだけど」
それでも捨てる予定だったんだから、売れたらめっちゃありがたいよ。
「すうひゃくえん?」
男が、眉をひそめた。
「……“えん”とは、なんだ」
「え?」
あ、そこから?
「通貨。お金。……え、使わないの?」
「少なくとも、その単位は聞いたことがない」
あ、これ。やっぱり完全に、世界違うやつだ。
「とにかく、それを譲ってくれ」
「いいけど……」
もう、よく分かんないけど、とりあえず完全に消費期限が切れてるわけじゃないし、いっか。
私はもう一本、箱から取り出して、渡した。
「はい」
男はそれを受け取って、少しだけ観察してから懐にしまった。
それから、すっと立ち上がる。
「ちょっと待って、動作は、ゆっくりな方がいいよ。倒れてたんだから」
実際、まだ暑いしさ。私もだいぶ汗かいてきた。
「……なるほど」
なにが。男は私の顔をじっと見る。
そのとき。
「殿下!!」
遠くから声がした。
変なマントをひらひらさせた人たちが、ばたばたと駆け寄ってくる。
え、なにこれ。コスプレ集団?
「ご無事で……!」
先頭の人が膝をついた。え、ちょっと待って。家来とか、そういうの?
「……大丈夫だ」
男が短く言う。で、こっちを見る。
「この娘のお陰で、助かった」
「……あー、どういたしまして?」
「こちらは?」
コスプレの人たちが私を見る。ちょっと待って、空気変わった。
「霊薬を扱う、恐らくは精霊の使者だ」
男があっさりと言った。
はい?? なんて???




