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1-3

「頼む、この薬を売ってくれ!!」

 男は私の肩をつかんできた。

 さっきまで倒れてた人とは思えない勢いで。

「報酬はいくらでも出す!」

 いや、これ、薬じゃないし。しかし。

 ——ほんとにほんとに、売れちゃうの?

「いや、その……1本、数百円なんだけど」

 それでも捨てる予定だったんだから、売れたらめっちゃありがたいよ。

「すうひゃくえん?」

 男が、眉をひそめた。

「……“えん”とは、なんだ」

「え?」

 あ、そこから?

「通貨。お金。……え、使わないの?」

「少なくとも、その単位は聞いたことがない」

 あ、これ。やっぱり完全に、世界違うやつだ。

「とにかく、それを譲ってくれ」

「いいけど……」

 もう、よく分かんないけど、とりあえず完全に消費期限が切れてるわけじゃないし、いっか。

 私はもう一本、箱から取り出して、渡した。

「はい」

 男はそれを受け取って、少しだけ観察してから懐にしまった。

 それから、すっと立ち上がる。

「ちょっと待って、動作は、ゆっくりな方がいいよ。倒れてたんだから」

 実際、まだ暑いしさ。私もだいぶ汗かいてきた。

「……なるほど」

 なにが。男は私の顔をじっと見る。

 そのとき。

「殿下!!」

 遠くから声がした。

 変なマントをひらひらさせた人たちが、ばたばたと駆け寄ってくる。

 え、なにこれ。コスプレ集団?

「ご無事で……!」

 先頭の人が膝をついた。え、ちょっと待って。家来とか、そういうの?

「……大丈夫だ」

 男が短く言う。で、こっちを見る。

「この娘のお陰で、助かった」

「……あー、どういたしまして?」

「こちらは?」

 コスプレの人たちが私を見る。ちょっと待って、空気変わった。

「霊薬を扱う、恐らくは精霊の使者だ」

 男があっさりと言った。

 はい?? なんて???

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