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2/17

1-2

 目の前の男は、さっきまで倒れてたとは思えないくらい、普通に起き上がった。

「あんまりすぐに起き上がらない方がいいよ」

 だって急に倒れてたし。脱水症状を甘く見ない方がいい。

「……今のは、何をした」

 低い声で、男が言う。

「え? いや、0S-I。経口補水液だけど」

「……は?」

 あ、知らないですか。

「水分と糖分、あと電解質補給するやつ。スポーツドリンクみたいなやつ」

「すぽーつどり・んく?」

 え、それも通じません?

「……回復魔法ではないのか」

「違う違う」

 いや、魔法って何を言うてるの。

 男はしばらく黙って、自分の手を見てる。握って、開いて、また握って。

 で、顔を上げた。

「ありえん」

「え?」

「回復魔法でも、起き上がるまでに半日はかかるのだ」

「いや、知らんよ」

 魔法って、まだ言うんだ。

「それが、この状態だ」

「まあ、脱水は回避できたみたいだね」

「そんな速度で回復するものか」

「いや~、それはお兄さんが若いのもあるけど」

 まあ、ほんとは、しばらく横になっててほしい。普通に熱中症って怖いんだよ。

 っていうか何、この人。いや、この世界。

 男はじっと、私の持ってる空のボトルを見た。

「……その薬、まだあるのか?」

「え? あ、うん」

「売ってくれ」

 いやいや。

「これ、売り物っていうか……もう期限切れ寸前だよ?」

「構わん」

 即答だった。

「いくらでも払う」

 いや、いくらでもって。これ、普通に数百円なんだけど。

「いやいやいや、そんな大したもんじゃ——」

「頼む!」

 さっきまで死にかけてた人とは思えない勢いで言い切られた。

 ……え、なにこれ。

 もしかして、この廃棄寸前だったやつ。

 ——売れたりする?


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