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4-3

「イ・セ・カ・イ……?」

 知亮が、スマホの画面と私の顔を見比べる。

 数秒、沈黙。

「……は?」

 だよね。

「いや、待て」

 知亮が、眉間を押さえた。

「ちょっと情報を整理させてくれ」

「どうぞ」

「お前は今、“異世界に行ってた”って言ったな」

「言った」

「それは比喩とかじゃなくて?」

「頭が痛いって言ってる相手につまんない冗談を言う趣味はないね」

「……」

 沈黙。

「……寝不足だな。うん。とりあえず、お前は寝ろ」

「言われなくても寝る」

「もう変なこと考えるな。イセカイじゃなくて、イセエビなら、俺が今度食わしてやる」

 つまらないことを。昔からギャクのセンスは壊滅的なヤツだ。

「だから、ほんとに行ってたんだって」

「はいはい」

 軽く流される。まあ、そりゃそうか。

「……別に信じなくていいよ」

 肩をすくめる。

「私も眠いし。そっちも薬飲んだら、さっさと帰って寝な」

「……」

 知亮が、動かない。

「なに」

「……いや」

 小さく、首を振った。

「信じる」

「は? え、なに、急にどうしたの」

「信じることにした。だから、俺も連れてってくれ」

「いやいやいやいや!!」

 私は全力で否定する。

 おーい、何を言ってるんだー!

「普通、 “信じないで帰る”とこじゃない!?」

「だから、さっき信じるって言った」

「言ったけど!!」

 なんなのこいつ。

 知亮は、一歩も引かない。

「危ないのか?」

「……まあ、そうでも? やたら暑かったり、王子とか、なんちゃら師とかはいたりするけど」

「ならなおさらだ」

「は?」

「医者はいた方がいいだろ」

「別に。いてもいなくても……」

「いや。とにかく、行く」

 なんかもう、めちゃくちゃだ。

「……はあ」

 私は大きくため息をついた。

 もういいや。

 どうせ見せた方が早い。

「後悔しても、私は知らないよ」

「しない」

「帰れなくなっても知らないよ」

「それは困る」

「そうなの!?」

「でも行く」

 なんなのこいつ。

「一回だけだからね。あと、絶対、勝手なことしないで」

「分かってる」

「……じゃあ」

 私は、くるりと背を向けた。

 階段を降りる。

 知亮の足音が、すぐ後ろについてくる。

「……ここ」

 薬局の裏口の前に立つ。

「このドア」

「……普通のドアにしか見えないな」

「だよね」

 ノブに手をかけ、振り返る。

「でも、開けたら、異世界」

「……」

 知亮の喉が、ごくりと鳴った。

「……いくよ」

 私はドアノブを、回した。

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