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4-4

 ドアを開けた瞬間、むわっとした熱気が、顔にぶつかった。

「……え?」

 知亮の声。

 ドアの向こうに唐突広がる、牧歌的な風景。これまで見たことのない木や花。遠くに、RPGの世界みたいな建物。

 そして、こっち側にも伝わってくる、じわっとまとわりつく暑さ。

「……え??」

 振り返ると、知亮が、完全に固まっていた。

「ね?」

「マジで異世界じゃないか!!」

「いや、だからそう言ったじゃん」

「そう言ったからって、本当にあるとは思わないだろ!!」

 さっきの信じるっていうセリフはなんだったんだ。

 まあ、パニくるのは分かるよ。

「異世界って、マジだったのか。ごめん。杏仁が働き過ぎで頭おかしくなったのかと思ってた」

「ですよねー」

 知ってた。

「……すごいな」

 顔を上げる。

「これ、テーマパークとかだったりしないよな?」

「そう思いたければ思えばいいけど」

 誰が何の目的で、ウチの裏口に作るのさ。

「いやこれは……はははっ」

 知亮が笑いだす。

「テンション上がるな。ちょっと歩いていいか?」

「いやダメ」

 即答です。

「なんで」

「迷子になるでしょ」

「ならない」

「なるの!」

 ほんとに分かってない。

「ていうか」

 周囲を見る。

「今、夕方くらいだから」

 空の色が、ゆっくりと赤に変わり始めている。

「暗くなる前に帰るよ」

 知亮が、まだあちこち見てる。

「ほんとに、帰るよ」

「……」

 分かってない顔してる。まるで子供みたいだ。

「じゃあ、ちょっとだけだよ」

「いいのか!」

 知亮の顔がぱあっと明るくなる。

 そのとき、遠くから、人影が見えた。

「……ん?」

 目を細める。あのシルエットは。

「……あ」

 やばい。

「……え?」

 知亮も気づいたらしい。

「誰か来るな」

 いや誰かじゃない。

 だんだん近づいてくる。

 うん、あのマント。あの金髪。レオルド王子だね。

 うん、ヤバイヤバイヤバイ!

 あの婚約だの何だののあとに、喋りたくないよ!

「……知亮」

「ん?」

「今すぐ帰るよ」

「え?」

「はやく!!」

 腕を掴む。

「ちょっ、まだ——」

「いいから!!」

 半ば引きずるようにしてドアを開け、そのまま、押し込む。

 バタン。カチ。

 ——薬局。

 静かな、いつもの空間。

「……」

「……」

「……ええええ!?」

 知亮が、絶叫した。

「なんだ今の!? 何!? マジで!?!?」

「だから言ったでしょ!」

「いや聞いてない聞いてない!!」

「言ったって!!」

「いや! いや? うん、言ってたな杏仁は……、しかし——」

 しばらく、沈黙。

 そう、私はホントのことしか言ってない。

 知亮が、ふらっと壁にもたれた。

「……やばい」

「なにが」

「……本当に頭が痛くなってきた。杏仁、ロキソプロフェン、くれないか」

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