第二十六話
最高裁判所長官が理容室で剃刀で喉を切られて自然死。
バカなのかな?
『かなたくんのキルカウントを記録する市民の会』
というページが作られ、自然死一覧が掲載される。
どこかの県会議員がスーツのまま海で泳いで自然死。
縛られた状態でビルから落ちて自然死。
なんか議員団が外国に視察に行って飛行機が飛翔体にぶつかり全員自然死。
ミサイルじゃない。飛翔体だ。いいね。
キルカウントが一万ほどになったころ、この動きは海外に波及。
なぜか海外要人まであんさ……自然死した。
もう知らん。
こうしてぼくは名指しで各国出禁に。
もう……大リーグの選手になれない……。
野球やったことないけど。
この国の支配階級と反社が死にまくり社会の風通しが少しだけよくなった。
全国の警官も自殺や行方不明が相次いだ。
警察なら秘密の遺体処分場の一つも知ってるのだろう。
廃村とか自衛隊員しか入れないビーチとかね。
最後に広く警察と認識される組織の偉い人一家が家族全員首吊った状態で次々発見されて終了。
ぼくら一般人に公安と警察の違いなんてわかるはずもない。
誰が殺したかなんて死ぬほどどうでもいい。
ぼくらには一生関係ない。
ただ東京を中心とした日本のあちこちに事故物件が増えただけだ。
ぼくは誰が死のうが興味ないし、タケルと真田が無事ならどうでもいい。
幸い『国家の闇的ななにか』はぼくを排除する方を選ばなかった。
ぼくを殺そうとしたり、タケルや真田に手を出してぼくを怒らせるよりは、権力者や反社を始末した方がまだマシだったのだ。
さて野球部の生き残りはどうなったのか。それを話そう。
関西のどこかの大学が生き残りを預かろうって話になった。
希望者全員を乗せたバスは首都高で爆発炎上、引率の教師ごと燃えかすになった。
そんなレッサーパンダが二足歩行したみたいな、心暖まるニュースだ。
だけど勘のいいものは野球部にも存在する。
その話を断ったものだ。
三人かな。
一人は家が燃えて一家全員死亡。
頭に一発ずつ、もちろん自然死だ。
警察が捜査しなければ自然死だ。
もう一人は殺されると気づいたのか逃亡。
歌舞伎町のホテルで大量の違法薬物を飲んで死亡。
手足が折られ、歯が何本かなくなってたけど誰も気にしない。
コカインの情報を知っていたのだろう。たぶんね。
コカインの情報を知ってると自然に手足が折れて、歯が何本かペンチで抜かれるんだよ。
怖いね。みんなも気を付けてね。
自然って不思議なワンダー。
最後の一人は恐怖のあまり自分から首を吊ってエンド。
当てつけがましく深夜の学校で首を吊った。
足の骨が何度も殴打されて折れてたらしい。
南米のマフィアがやる手口だけど事件性はない。
海亀の産卵を見たような清々しい気持ちでテレビを見る。
普段休みじゃない時間に見るテレビは相変わらずつまらない。
なんとか徹子の番組が今年なくなった有名人12時間特別番組を放映するらしい。
ぼくはそんなニュースよりもウォンバットの赤ちゃんとか、犬の狂犬病ワクチン会場の様子を見ていたい。
さらにどうでもいい話をしよう。
ぼくがヤードに撒いた違法な植物の種だが、芽を出した。
ポピーと麻だ。
あとでもうちょっとだけ死人が出るかもしれない。
でも、ぼくにはもう必要ない。
死ぬほどどうでもいい話としては、家庭裁判所にお呼ばれした。
違法行為はしまくったし、結果として5桁の人間が死んだが、ぼくの知ったことではない。
すぐに釈放された。
カウンセリングと引き替えにね!
人がたくさん死んだのは、ぼくのせいじゃない。
事態が大きくなる前に剪定すべきだっただけだ。
それを怠ったのは学校に行政に警察だ。
殺人の実行犯だって半分以上は警察のしわざだ。
ぼくただ蓋を開けただけなのだ。
死神扱いはたいへん不愉快である。
そしてぼくは例の喫茶店で真田と人を待っていた。
タケルと弁護さんは勝手にぼくをつけてきた。
入り口近くの席にいる。
それもしかたない。
最後の謎を暴くときが来たのだ。
それは大学受験も終わったある日のことだ。
配信はしない。
まだ警察に差し出すかすら決めてない。
なにも考えてない状態で始まった。
はっきり言って、ぼくは犯人に興味はなかった。
その人物は颯爽と現われた。
美しく清楚。誰にでも優しく、慈悲深い。
クラスのアイドル。
それは白石さんだった。
「二人とも久しぶり」
「そこにタケルもいるよ」
すると白石さんはほほ笑む。
「知ってる。気づかないフリしてあげた」
「だろうね」
「それでなんの用?」
「大学受験どう?」
「うん、一般受験でどうにかね。そっちは?」
「二部に受かりそう。自己採点だけどね」
「わわわわ、私も」
東京の校名言っても恥ずかしくない名門だ。
二部でもいいさって話だ。
そしてさらに悪夢みたいな話としては、4月からの就職先。
そうどうせ夜間なのだからと就職活動したところ全敗。
ライトノベル作家も兼任だからじゃない。
悪名が轟きすぎてるだけだ。
近所のスーパーにすら断られ、ムカついてそこの弁護士に愚痴ったところ、野郎の弁護士事務所に就職が決まった。
俺も真田もね!
「期待してるよ(ニチャア)」
と最低の笑みを頂いた。
この場合の期待とは、社員として有能ではなく……今回みたいに5桁の死人出せという意味だろう。
バカが。
そんなに人が死ぬはずもない。
すぐクビになるだろう。
作家として生きるしか道はないのかもしれない。
嘘だ。ぜったいそれだけは嘘だ。
「白石さんは?」
タケルにはもう聞いてるけどね。
「うん、留学かな。ほら私たち忘れてもらわないといけないから……」
「そうだね」
悪魔みたいな弁護士のところで働くよりは賢い選択だろう。
その手段を選べればね。
なにせ金がかかる。
それにぼくは海外出禁だ。
アメリカどころか隣国すら行けない。
「お母さんもぜひそうしなさいって」
白石さんにぼくはほほ笑んだ。
「お母さんは去年行方不明になってるよね?」
ぼくは笑顔のままだ。
真田は下を向いてる。
ああ、友人にこんなことはしたくない。
野球部が何人死のうがなにも思わない。
だけどタケルが嫌な気持ちになるのは本当は避けたかった。
でも5桁人の死亡だ。
おそらく近いうちに白石さんは頭からビニールをかぶった死体で発見されるだろう。
もう日本の警察は甘くない。
身内の処分もすませた。
なにかしらの犯人として逮捕された方がマシだろう。
それはタケルとも話し合った。
「お父さんもだ。よく一年近く隠せたね。偉いよ」
ぼくは笑顔のままテーブルに写真を並べる。
「遺体を見つけた。警察に殺されるよりはマシだ。お願いだから自白してくれ。先生も弁護してくれる」
ぼくは心の底から懇願した。
弁護士が手を振る。こいつ帰り道でコケないかな。
ぼくはただひたすら無力だった。




