第二十五話
数時間後、ライブが始まった。
ライブ会場は喫茶店の上の階。
すでに弁護士さんが借りてくれてた。
料金はいらないって。
その代わり弁護士さんのチャンネルでも同時配信。
マスコミも入れるって。
弁護士さんとスタッフが……ってかなり大きな事務所みたいだ。
名刺をもらって見たら英語の会社名が書いてあった。
だけどぼくに会社の名前を言われてもわかるはずもない。
映像製作してる会社らしい。
弁護士さんでもタレントなのか。
……当たり前か。
ライブの用意をしてるとあきらかに敵対的な眼差しをしたおじさんたちが入ってくる。
椅子に座りぼくらを睨み付ける。
見たことあるような、ないような?
テレビあまり見ないしな……。
なるほどね。
コカイン買春クソ野郎側か。
弁護士さんに渡した資料はたった数時間で資料化されてた。
警察にも提出済みだって。
さて開始して……。
「おいお前! こんなAIで作ったフェイクを出しやがって!」
いきなりキレられた。
なんなのぉ?
弁護士さんを見るとエグい笑みになっていた。
「資料200ページをご覧ください」
あー、うん、記者さんがモザイクの人物といたしてる写真だ。
明らかに身長が小さい。
コメントしたくない。
「こ、これはAIだ!」
「では250ページをご覧ください」
こっちは知ってる。
野党の党首のおばちゃんだ。
やはりモザイクの人といたしてる。
明らかに身長が小さい。
モザイク越しにも複数。グレイト!
こちらもヘタにコメントすると首を取られそうだ。
「すでに警察に提出済みです。さらに言うと、お二人ともここにはない資料がございまして。某国でハッスル……ええ、すでにアメリカ大使館に提出済みです」
開始一分で二人の社会的死亡が確定した。
会場に設置したコメント欄が滝のように流れていく。
一気に会見場はお通夜モードに。
次はどの記者が死ぬのか?
いや会社の偉い人が死ぬのか?
そんな緊張感が会場を包んでいた。
それとは対照的にネットは笑いに包まれていた。
『処刑場で草ああああああああああッ!』
『みんな死ね!』
『カスどもの葬儀会場はここですか?』
暖かい嘲笑コメントにあふれてる。
何人かの記者が会場から逃げ出すのが見えた。
身に覚えがあるのだろう。
自らを正義と言い張ったものの末路としては面白い。
どうせ報道しないだろうけどね。
そんな中、突如として会場に警察官が押しかける。
「おい! 会見を中止しろ!」
キレ散らかしてる。
「なんの権限で?」
弁護士さんの顔が愉悦に染まる。
あ、ぼくと同じサイコパスだ。
しかも上位種。
放火された村の広場でダンスを踊るタイプだ。
「殺す!」
あ、やべ!
弁護士さんがぼくを押し倒して覆い被さった。
警官が拳銃を発射。
記者に当たって血が飛び散った。
「あ、あはははははは! ぼくはいま最高に興奮してる!」
弁護士さんが笑う。
会場が悲鳴に包まれる。
「弁護士になってよかった。クソみたいなローを耐えて、クソみたいな民事に耐えて、カスみたいな刑事裁判の被告を守って、クソオブクソな奨学金の返済のために生きるクソみたいな生活に耐えて本当によかった!」
弁護士さんは最高の笑顔で言った。
「ああ……ウクライナ戦争にも参戦したかったけどみんなに反対されてできなかった! かなたくん! ぼくはいま勃起してる! 君と出会えて本当によかった! これだ! ぼくが求めてた人生はこれなんだ!」
バンッとぼくらが隠れてた机に穴が空いた。
さらに頭を撃たれた記者が倒れ込んできた。
「ああ……最高だ。警察には『五分遅れてで配信してますって嘘ついたんだ』。予想どおり口を塞ぎに来てくれた。も、もう……最高だよぉ……」
「原因はおまえかあああああああああああああッ!」
バン!
「きゃあああああああああああッ!」
女性記者の叫び声が聞こえた。
中継されてる。
そう中継されてるのである!
すると弁護士さんがスマホの画面を見せてくれる。
公共放送のライブだ。
『不審者が記者を人質に立てこもっており……』
「最高だ! 公共放送までグルだ! 楽しい! 楽しすぎる!」
バンッと音がしてとうとう机が壊れた。
弁護士さんが机の破片をもって立ち上がる。
「ぼくアルバイトおおおおおおおおおおおッ!」
いやアルバイトじゃねえだろ。
ツッコミを入れる暇もなかった。
弁護士さんが撃たれた。
「ふ、ふはははははは! 最高に痛い! 痛い! 最高に楽しいよ!」
クソ、弁護士を殺り損ないやがった!
弁護士さんが身を見開いて楽しそうにしてる。
「かなたくん……ぼくはマゾなんだ……」
「知ってる……」
「いまぼくは実感してる! 生きてるって!」
「死ね!」
警官が銃をこちらに向けた。
ぼくは折りたたみ椅子をぶん投げる。
当たった!
逃げ……。
おっと銃がこっち向いてる。
「話し合おう」
こういうときは話術だ。
話術で時間稼ぎを。
「嫌だね」
「待てって。もうあんた警察から切られたよ」
「知ってる、だがな! お前さえ殺せばどうにでもなる!」
「カメラに撮られてるのに!」
「知事がAIだって言えばAIってことになるんだよ! てめえらは上級国民の家畜でしかねえんだよ!」
「……あんたもだろ?」
そしたら目を見開いていた。
もしかして……自分だけは例外だとでも……思ってた?
そして次の瞬間。
「助けに来たぞ!」
わざとらしく警官隊が突入した。
殺人鬼警官が取り押さえられる。
弁護士は「クソ! これからだったのに! 邪魔しやがって!」と叫んでた。
……お前は黙れ。
記者20名死亡。
警官逮捕。
こうして伝説の記者会見は終わりを迎え……。
まだだった。
その夜、例の警官はブリーフを喉につまらせて死亡。
なに言ってるかわからないだろうけど、死んだ直後に警察がわざとらしく会見した。
さらに埼玉県知事は自宅で妻と子どもを刺し殺したあとにビニール袋を頭からかぶって窒息死。
縛られてたらしいけど誰が縛ったんだろうね?
ぼくわからない。
さらに日経225採用企業の経営責任者が一夜にして次々と死亡。
複数の政治家もナイフで首を切られて心臓発作で自然死と。
なにを言ってるかわからないだろうけど。そういうことだ。
さらに総理大臣公邸から出火。
総理の刺殺体が見つかった。
仏壇のロウソクからの出火による焼死だって。
公邸にそんなものあるの?
バグってない?
警察やりたい放題すぎない?
さらに芸術科に大学教授、著名な作家もビニールを頭にかぶって窒息死。
あ、そうそう反社のトップの多くも始末……自然死した。
著名な芸能人も次々死んだ。
頭を銃で撃たれて自然死だ。
訃報記事だけで新聞の紙面が埋まったのである。
追及する側も皆殺し状態だ。
ツッコミ入れてるのはネットだけだ。
ぼくはネットで「死神」というあだ名が確定した。
自宅の前には警官がいる。
一応護衛らしい。
すきがあればぼくを消すつもりだろうか?
あ、そうそう。
弁護士さんは、セラミックプレート入りケブラーベストを着てて無事だった。
肋骨が折れただけらしい。
もう二度と遊んであげない!
羅刹の銀河②4/20発売です
https://over-lap.co.jp/Form/Product/ProductDetail.aspx?shop=0&pid=9784824015983&vid=&cat=BNK&swrd=




