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取り残された侍女の行方
寺院の扉が荒々しく開かれ、砂塵と共にアルシオンの馬が駆け去った。
リサは入口に立ち尽くし、伸ばした手が空を掻く。
「せ、セレナ様ぁぁーー!!」
胸に広がるのは置き去りにされた寂しさと、主君を奪われた悔しさ。
殿下……ひどい方……セレナ様を連れて行ってしまうなんて……!
湿った床に膝をつきそうになりながらも、リサは震える手で桶を掴んだ。
――暫くした後。
甲冑の靴が床を叩く音。
振り向けば、武官が馬を引いて立っていた。
「――リサ殿だな。殿下の命で迎えに来た。乗れ」
差し出された手に呆ける。
「わ、わたし……?」
武官は焦れたように手首を掴む。
「急げ。殿下は待たせるなと仰せだ」
次の瞬間、身体がふわりと浮いた。
「きゃっ……!」
鞍に乗せられ、背後に硬い胸板。
「落ちるな。掴まっていろ」
ち、近い……!
馬が走り、風が頬を打つ。
揺れるたび、甲冑の硬さとその奥の熱が背へ伝わる。
「泣くな。主君は無事だ」
「な、泣いてなんか……!」
「震えているぞ」
指先がたてがみに縋ると、その上に大きな手が重ねられた。
「怖くない。俺が落とさない」
「……っ」
……なんなの、その言い方……!
夕陽の中、二つの影が並んで駆けていった。




