13話 登校風景
生徒会室を出た時には、完全下校時間をとうに過ぎていて月が上り始めていた。
「なんで言っちゃったのさ…… 」
俺は徳馬研究所で作られた人型のクローンです。 人間じゃありません
そう近江先輩に告げた後から、美紀は一切口を開かなかった。 諸事情を彼女に話し、3人だけの秘密と約束したまではいいが、以降美紀の機嫌がすこぶる悪い。
「あの人ならいずれ、俺がクローンだという事実を突き止めるだろ。 それなら最初からバラしてしまった方がいいと思ったんだよ 」
「ずいぶん生徒会長を信用してるんだね 」
「まぁ…… 」
大きなため息を吐いた彼は、唐突に俺のお尻に回し蹴りを入れてきた。
「痛っ! なにするんだよ! 」
「春君も男だねぇ。 美人さんには弱いんだなぁ 」
「なんだよそれ。 やきもちか? 」
美紀はムッとしてもう一発蹴りを入れてくる。 図星なのか!?
「そうだよ! ずっと二人で守ってきた秘密なのに、あっさりと喋っちゃうんだもん! 」
そっか…… そうだよな、こいつには散々苦労をかけてた。
「悪かった 」
素直に謝ると、コロッと笑顔を見せてきた。 まるで女の子のような笑顔にドキッとしたのは言わないでおく。
「でも会長の気持ち、少しは分かるんだよね。 僕も春君に助けてもらった身だから 」
「もうその話はいいよ 」
と言っても美紀は止めないのを何度も経験してる。
「僕も春君を守りたい。 もちろんこれからも秘密は守るし、他人がどう思おうが知った事じゃない。 例え国を相手にすることになっても僕は…… 」
「わかったわかった! 」
熱弁する美紀を止めると、ジロッと睨まれてしまった。
「春君、気を付けてよ? あの人は目立つからね? 」
「ん? …… おう 」
この時俺には大した問題じゃないと思っていたのだが……
「飛島ぁ!! どういうことなんだよぉ! 」
翌朝、俺は自分の教室でクラスメイトの蘇我 悠人に胸ぐらを掴まれて揺すぶられていた。 俺達の周囲は逆三角形の目をした男子生徒が何十人も取り囲み、俺はされるがままに揺すられてまるでこんにゃくのようにぐにゃぐにゃだ。
「ミキちゃんだけじゃなくて近江先輩まで! なんでお前なんだよぉ! 」
蘇我は涙を浮かべながら俺を前後に揺すり続ける。 事の発端は登校風景にあった。
バスを降りると、そこには近江先輩の姿があったのだ。 バス停は校門から1キロもないくらいだが、彼女は通学路が反対にも関わらずバス停で俺達を待っていたらしい。
超人気の生徒会長と学園のアイドル…… 周りから見れば両手に花状態。 目立つにも程がある。 蘇我は近江ファンで絶賛片思い中で、見た目は厳ついが恋愛ベタな彼は、俺の待遇に不満をぶつけてきたのだった。
「そんなこと言ったって、俺だってゆかり先輩と待ち合わせてた訳じゃないし…… 」
「なっ!? おおおおお前! 名前で呼ぶほど親しいのかよぉ! 」
ボロボロ涙を流し、蘇我の揺すりは更に激しくなる。 これは3年生には近江が二人いるから名前で呼んで欲しいと、彼女からお願いされてのことだ。
「なにやってるのさ! 」
大騒ぎを聞きつけて来た美紀が、『放してよ!』と蘇我にローキックをお見舞いしていた。 鞭のような美紀の蹴りにも負けず、蘇我は美紀にも泣きつく。
「ミキちゃーん! どういうことなんだよぉ!? 」
「わわっ! 鼻水飛ばさないでよ! 」
俺を吊り上げたまま蘇我は駄々っ子のように暴れ回り、奴の嫉妬攻撃は予鈴が鳴るまで続いたのだった。




