第六話 フローラの謎
翌朝。
いつものように起き、食堂へ行ったアマリリスの少女たち。
だが、いつもとは、少し空気が違った。
「凛先輩。……凛先輩!」
「――はっ。ご、ごめんなさい……。少し、考え事をしていたの」
「……昨日の件のことでしたら、私も昨晩考えておりました。けれど、私も、よくわからないのです」
優秀な、ナビ部の二人でさえも。
この二人でさえそうなのだから、朔の――男子の存在を知ったアマリリスメンバーは、皆混乱しているのであった。
「ぼんやりして、どうしたのさ」
「わっ。……ゆうき」
「ふふん、お困りかい?」
おどけた様子のゆうきを見て、ルナは少し表情を和らげた。
「あのね……。朔に、また会いたいの。朔のことを考えると、どうしようもなく胸の奥がドキドキして、体が熱くなって、眠れない」
「会いたい」と言いながら、ルナの表情は少し寂しそうだ。
ゆうきは、優しい眼差しで見守っている。
「ちょっと、考えるの。フローラって、こんな形でいいのかな、って」
「それは……」
ゆうきのたれ気味の瞳が、見開かれる。
ルナの声音は、真剣そのものだ。
「それは、男女を分けて育てる考え方のこと?」
「うん。『不要な感情を抱かせないため』って、なんなんだろう。まず、『不要な感情』と呼ばれているものって、なんなの?」
静かな二人の間に、ざわざわとした空気が入り込む。
その空気を、引き裂いた人物がいた。
「何悩んでるんですか、先輩?」
蛇のような目。直だ。
ルナの瞳は、キラキラと輝いた。
「直! 一緒に食べてくれるの?」
「はぁ。悩んでる先輩たちの相手をするのは、後輩の役目ってもんでしょ」
先輩、後輩。
ちゃんとした年齢もわからないことが多く、学年が意味をなさないほどの、フローラで。
ここまで、先輩・後輩を意識しているのは、珍しい方だろう。
「で? 何話してたんですか」
「えーとね、朔のこと!」
「……常闇朔、ですか」
直の、お椀を口に運ぶ手が止まる。
それに構わず、ルナはしゃべり続ける。
「朔は本当に強かった〜! 直もそう思わない?」
「……はい。強さは、認めます」
「強さはどうでもいいけどさ。そんなことより、私は黒百合の技術が気になる!」
「あー。光るやつ、ですか」
「そう! 今すぐ聞きに行けないのが惜しい……!」
ゆうきは、割と本気で悔しがっている。
そんな様子を見て、アタック部二人は苦笑した。
「いつか、男女合同任務とかやってみたいよね」
「はぁ、馬鹿馬鹿しい。そんなの、期待してるだけじゃ何も起こらないですって。奇跡なんて――」
無邪気なルナ、一人の世界に浸るゆうき、淡々とごはんの山を崩す直。
一見バラバラな三人だが、同じ想いを抱えていた。
「でも、本当にそんな未来が来るなら――」
「――今までのシステムって、何だったんだろ」
先輩二人の呟きをBGMに、直はまたごはんを頬張った。




