第五話 ルナと朔
「ゆうき、何見てるの?」
朔が手違いで任務に参加した日の夕方、ゆうきは真剣な顔で画面を眺めていた。
凛が話しかけると、「ああ」と顔を上げる。
「この常闇朔ってやつ、間違いなく男子だ。平らで直線的な体の構造、今まで見てきた男のものと一致する」
「観察してたのね」
凛は少し呆れたように言って、ゆうきの隣に腰掛けた。
そして、一緒に画面を覗き込む。
「今回の件は、私たちにとって大切なものとなるでしょう。この、常闇朔さんにとっても」
「私たちがまともに話せた、初めての男、か。……屈強な犯人ばかり見てきたからか、こいつが女みたいに見えるよ」
「自分でも言ってたわ。俺を女だと思って、上は俺を派遣したんだ、って」
「はははっ、正解かもしれないね」
誰もいない廊下に、二人の笑い声だけが、静かに響く。
静かな笑い声を漏らしながら、凛は考える。
アマリリスも、色々と決めなければならない。
そんな予感がしていた。
―――
「……朔」
真夜中、ルナは天井に向かって手を伸ばした。
今日出会った少年が、忘れられない。
ルナの胸は、彼への想いに締め付けられていた。
(強かったなぁ。頼もしかったよ)
それは、朔の方も同じで。
(月島、ルナ。動きがしなやかで、迷いがなかった)
ルナも朔も、同じ月を見上げ、お互いを想っていた。
月の少女と、闇の少年。
(また、会いたい)
ルナは眠りにつく。
その小さな呟きを拾っていた直は、向かいのベッドで眠るルナを、そっと見ていた。
―――
(ルナに、また会いたい)
どんどん大きくなる想いに戸惑いつつ、朔もまた自分のベッドに入った。
もう一度、彼女に会う方法はないのか。
そんなことが、ずっと朔の頭の中を駆け巡っていた。
今回は上層部のミスで、偶然だった。
ミスの原因は、朔が女子に見えたから、かもしれない。
(じゃあ、もっと女子のような見た目になれば、また間違えるかもしれない?)
朔の目は、冴えていた。
答えを導き出した興奮で、眠れない。
(髪を伸ばそう。願掛けの意味も込めて、彼女にまた会えるように)
朔の小さな決意は、夜の空気に静かに溶け込んでいった。




