第三話 願い
「お疲れ〜」
「あーっ、疲れたー!」
ルナと直は、アマリリスに戻ってきた。
二人の顔には、疲労が滲んでいる。
「今日はゆっくりしましょ。大きな任務を終えたのだもの」
「そうだねぇ……」
「……」
直は何も言わない。
それほどまでに疲れているのか、それとも他の何かか。
―――
「あー、おいしかった! 朝飯ろくに食ってなかったから、余計に沁みる……」
「よかったわね」
「あのさ、凛」
少し改まって、ルナは凛と向き合った。
凛は、不思議そうな顔をしていた。
「直のことなんだけど」
その言葉を聞いた瞬間、凛は何かを悟ったように頷いた。
そして、周りを見回す。
周りには、誰もいないようだ。
「ウィードのボスに、絡まれてたじゃん。あのとき、私はよく聞こえなかったんだけど……。なんて言われてたの?」
ルナの声は、さっきと打って変わって真剣だ。
凛は、少し考えるように黙り込んだ。
話すべきか。
「直は、私のアタック部に入っている、大切な後輩だ。だから、知っておきたい。何かあったときは、直を守りたいから」
ルナの真剣な声に、凛も気圧されてしまったようだ。
直は嫌がらないだろうか。
ルナは、その話を広めたりしないだろうか。
そう考えていたが、この分には心配なさそうだ。
折れてしまった。
「ウィードのボスは、『俺と似ている』と言っていたの。直と彼の共通点なんて……あるかしら」
「……わかった。教えてくれて、ありがと!」
ルナはくるりとターンし、タッタッと駆けていった。
―――
その日の夜。
直は、なかなか眠れずにいた。
少し欠けた月を眺め、ため息をついている。
「眠れないの?」
「……先輩」
ルナと直は、二段ベッドの上にいる者同士、語らいやすい。
ルナは少し体を乗り出し、直と正面から目を合わせた。
「怖かった? ウィードのボスから言われたことについて、考えちゃう?」
「……はい」
「考えなくていいよ。私がついてる」
「……おやすみなさい」
ルナに背を向け、直は横になった。
直が辛いときは、自分が絶対守ろう。
ルナは願った。
自分が、直にとって安らげる場所になることを。




