表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/9

第二話 ウィード

「わーっ、ここがミライタワーかぁ。くっ、遊びたかった……!」


「先輩、我慢です」


 ルナと直がいるのは、ミライタワーのエントランスあたり。


 武器は隠しており、これなら事情を知らぬ警察にも捕まらないだろう。


 今は、他校のアタック部員と待ち合わせ中だ。


「お待たせしました、ネリネです」


「水仙、到着しました」


 しばらくすると、他校の生徒たちも現れた。


 ネリネ、水仙、どちらも二人ずつだ。


『これから任務を開始します。よろしくお願いします』


「お願いします!」


 凛のナビで、ミライタワー内に入る。


 タワーの中は、外と比べて恐ろしいくらい、静寂の空間だった。


『おさらいね。どこかに人質――お客さんが捕えられていて、警察などは入れないみたい』


『でも、私たちは違います。フローラなら、ウィードに知られずに動くことができる』


 ナビ越しでも、杏の自信満々な声を聞くと、アタック部員たちも冷静になる。


 薄暗い廊下。


「おそらく、監視カメラはウィードが見ているでしょうね。そうなると、駆け抜けてもバレてしまう。ハッキングできますか」


『監視カメラ、ハックしました。いつでもどうぞ』


 直の声に応えるように、杏が告げる。


 杏の手際の良いハッキングで、現場は安心できる。


 ルナは、後ろを振り返って言った。


「一気に駆け抜けるよ」


 次の瞬間、ルナたちは光のように廊下を駆けていた。


 その傍ら、ルナはディスプレイを出現させ、マップを眺めた。


(爆弾が仕掛けられている候補の部屋は、三つ。三十二階イベントホール、五十五階レストラン、六十階展望台)


 アタック部員たちは、突き当たりにある階段を見上げる。

 果てしなく続いているように思える、長い長い階段だ。


『まずは三十二階に行きましょう。人質の解放よりも、爆弾の方を優先させましょ』


『監視カメラの映像は差し替え済みです。曲がり角などはないので、まっすぐ行ってください!』


「了解」


 ルナたちは、階段を上がり始めた。

 まだまだ先は長い。


『階段は一番リスクが低く、一番確実よ。辛いかもしれないけれど、頑張ってね』


 メンバーたちの息が、弾んでいる。

 鍛えているとはいえ、何段も階段を駆け上がるのはきついようだ。


『三十二階です。このフロアには、イベントホールがあります』


『ただ、ウィードらしき人がいるわ。仲間を呼ばれないうちに倒せる?』


 アタック部員たちは、お互いに目配せをし合う。


 全員の目が、やる気に爛々と輝いていた。


「体格にもよります。その人は?」


『中肉中背、そして拳銃を所持しているわ』


 その言葉を聞き、ルナはニィッと笑った。

 メンバーをぐるりと見回して、イベントホールの方を見た。


「なら、いける」


 そう呟くと、杏の少し慌てた声が、通信で聞こえてきた。


『待ってください、どのような作戦ですか?』


「まずは、私と直、そしてあなた。近接で取り抑えて、通信機器を取り上げる。次に後衛は、残った三人。遠距離射撃、できるよね?」


 ルナは、テキパキと小声で指示を出していく。


 アタック部長だが、決して脳筋というわけではない。

 的確な指示とひらめき、状況判断の正確さも評価され、部長に就任しているのだ。


 他のメンバーも、自信に満ちた顔で頷いた。


『わかった。それで行きましょう。では、スリー、ツー、ワン、ゴー!』


 凛の合図で、ルナたち三人は階段の角を飛び出した。


 そして、男が驚く間もなく牽制してしまった。


 これが、フローラの実力だ。


 ―――


『三十二階にも、五十五階にもないとなると……残るは、最上階の展望台ね』


 様々なデータから分析した結果、この三フロアが怪しいと睨んでいた。

 その、最後の階層だ。


『展望台には……たくさん人がいます。ざっと、七人』


「そんなにっ⁉︎」


 今まで出会った敵は、二人。


 最後の要を固めに来ているとしか、思えない。


『最初は、攻撃しないわ。爆弾の在り処を聞き出しましょう』


「了解」


 階段の影に身を潜める、メンバーたち。


『スリー、ツー、ワン、ゴー!』


 合図で、サッと身を現した。


「誰だ!」


 ウィードの者たちに、銃を向けられる。


 それにも全く臆さずに、アタック部員たちは手を上げた。


「爆弾を仕掛けたのは、あなたたちですか?」


「ああ、そうだ。この世は腐っている。無能な国を、俺たちが変えるんだよ」


 この手の人間は、何を言っても変わらない。


 どうする。


「お前らこそ、何者だ。学生にしか見えん」


「……」


『フローラのこと、絶対に言っては駄目よ。高校生です、と言って』


 彼女たちの所属する組織は、一般人にバレてはいけないものだ。

 警察や政府でさえ、末端の人間は知らないだろう。


「ただの、高校生です」


 ルナは、平坦にそう告げた。


 ウィードのボスのような男が、眉を跳ね上げる。


「ただの高校生が、そんな物騒なもんを持ってんのか?」


 直は、グッと唇を噛んだ。


(うるさいな。こっちだって、好きでやってるんじゃないんだよ!)


 フローラは、孤児で構成された組織だ。

 フローラに入らねば、どこにも行くあてがないような、そんな少年少女が集った組織。


 ルナも、直も、凛も、杏も、ゆうきも、小春も。

 全員、似たような境遇なのだ。


「答えられない、か。まあいい。邪魔する奴は、消す」


 ボスが、銃口を向けようとして……止まった。


「そうだ。お前ら、うちに来ないか?」


「ふざけるなッ」


 直が動く。

 次の瞬間には、ボスの首元にナイフを当てていた。


「私たちがどんな思いで……っ、どんな思いでやってると思ってる‼︎‼︎」


 ビリビリと震える声とオーラに、ウィードの者たちは一瞬怯んだ。


 その隙に、ルナたちもウィードに攻撃を仕掛ける。


「いいか。私たちは、ウィード……お前たちのもとになんて下らない」


「……ウィード。ハハッ、言い得て妙だな」


「……私たちの役目は、平和を守ること。お前らのやっているような、人の命をも脅かすようなことは、絶対にしない」


「今突きつけているナイフは、どうなんだ?」


「そういう奴らに鉄槌を下すのが、私たちの仕事なんだよ」


「そりゃご苦労さん」


 残りの六人は、ルナたちが締め上げていた。


 その圧倒的な強さに、ボスはため息をついた。


「こいつらみたいにされたくなければ、爆弾の場所と解除法を教えろ」


「……あっちだ。解除の仕方は、暗証番号を入力すること。暗証番号は、0529」


 ボスが指を指した方向には、直以外のメンバーが向かった。


 それを一瞥して、また直は口を開いた。


「やけに素直なんだね」


「まあな。お前みたいな奴がいたからだ」


 直は、少し首を傾げる。


 その様子を見て、ボスがニッと笑った。


「俺に似てる嬢ちゃんに会えて、おもしろかった。いい思い出になったよ」


「……似てる?」


「ああ、似てるさ。なんのことか、いずれわかるかもな」


「わかりたくもねぇよ」


 すると、爆弾の方から、ルナが叫んだ。


「爆弾っ、解除したよーっ! さ、さっさと引き渡して帰ろ!」


「相変わらず、呑気な先輩……」


 直は、はぁ、と息をつき、ナイフを離した。


 そのまま手際よくボスを拘束すると、イヤホンから杏の声が流れた。


『任務完了。お疲れ様でした』


 それを皮切りに、「あぁ〜」とアタック部の面々か伸びていく。

 たくさんの大人を相手にして、さすがに疲れたのだろう。


 最後に直は、ボスと向き合った。


「じゃあね、ボスさん」


「ああ。またどこかで会えることを、楽しみにしているよ」


 直は、フンと鼻を鳴らす。


(あんたみたいなのには、二度と会いたくない)


 そんな思いを抱えながら、踵を返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ