第十三話 再会
あれから、何ヶ月経ったことだろう。
季節は次々と移ろい、秋が来て、冬が来た。
そんなある日。
『大切なお知らせだ。一度、耳を傾けてほしい』
スピーカーから、威厳のある声が響いた。
それはアマリリス女学院にも、黒百合学園にも、水仙学園にも、ネリネ女学院にも。
フローラの皆が、視覚をその声に集中させた。
『この度、フローラにある数々の制限を――緩めることになった』
どの学校にも、ざわめきが広がった。
けれど、アマリリスは違った。
「……やったっ……!」
まだ信じられないといった様子で、皆が呟く。
その呟きは、やがて歓声になっていった。
だが、その歓声は、また声に遮られた。
『緩和する内容を読み上げる。まず、一般人や男子校・女子校間の交流だ』
「嘘だろ……」
黒百合学園の自室で、朔は小さく溢した。
この数ヶ月で、朔の髪は見違えるほど伸びていた。
襟足ほどの長さだった髪が、肩にかかるほどになっている。
美雨にやってもらっていたヘアアレンジも、自分でやるようになった。
とはいえ、いつもひとつ結びなのだが。
呆然と突っ立っている朔の肩を、美雨がポンと叩いた。
『これからは、さらに幅の広い学校と合同任務を行うことになる。そして、インターネットの制限だ。これからは、自由にサイトを見られるようになる』
これには、多くの生徒が顔を明るくした。
面倒なハッキングをしなくても済むようになるから、だろう。
『ただし、これで問題が起こった場合は自己責任となる。各自、覚えておくように。以上だ』
そこで、放送は終わった。
直が、ルナの方を見る。
すると、ルナは目を潤ませていた。
「よかったじゃないですか。これでやっと、願いが叶いますね」
「……うん、うん……っ」
たくさん言いたいことがあるだろうに、込み上げる感情が多いせいで、言葉になっていない。
そんな先輩が愛おしくて、直は微笑みを漏らした。
「さ、先輩。合同任務に向けて、さらに鍛錬を積まなくては」
「うんっ!」
こんなときなのに、「うん」しか言えないのが、なんとも滑稽だった。
―――
『これより、アマリリス女学院と黒百合学園の、合同任務を行います。ナビを担当するのは、私・成瀬凛と――』
『猫田美雨でーす。よろしくお願いしまーす!』
「お願いします!」
高い声に、数名の低い声も返ってくる。
それで、平行線だった二校が交わったことを、凛は実感した。
ルナはというと、キョロキョロと周りを見ている。
かつて出会った男の子はどこだ、と躍起になっているようだった。
だが、見つからなかったようで、諦めたように前を向いた。
『今回は、このあたりにいる不審者の確保をしてもらいます。今日はパトロールです。では、二名ずつにわかれて三つのペアを作ってください』
今回は、手探りだ。
そのため、凛も慎重に指示を出している。
(ペアかぁ。どうせなら朔とがよかったけど、いないみたいだし。直はどこかな?)
そう考えていたルナの肩を、何者かが叩く。
ルナは、ゆっくりと振り返った。
「久しぶり」
そこにいたのは、髪を後ろで結んだ女の子――否、男の子だった。
そこでルナは、ある可能性に気づく。
「もしかして……朔⁉︎」
「ああ。ペア、組んでもいいか?」
そう言って、朔は少し照れくさそうに手を差し伸べた。
ルナは、その手を恐る恐る取った。
みるみるうちに、ルナの目に涙が溜まっていく。
「ど、どうした? 俺が何かしてしまったか?」
「あっ、違うの……。ずっと、会いたかった」
涙を拭いながら、ルナはまっすぐに朔の目を見た。
朔は、自分のハンカチを差し出す。
「俺も」
そうやって、二人はまた笑い合った。
『こらこら、朔。女の子泣かせてる場合じゃないでしょ? 早く、パトロール行きなさーい!』
「……っ、美雨っ」
美雨の声で、朔は瞬く間に不機嫌になってしまったのだった。
そんな二人を、月明かりがいつまでも照らしていた。




