第十二話 アマリリスからのお願い
会議のため、アマリリスの生徒たちは一堂に会していた。
教卓にいる凛は、いつになく真剣な顔だ。
「今日は、私とルナとゆうきで、話し合ったことを伝えるわ」
生徒たちも、その剣幕に唾を飲み込んだ。
各部の部長が、凛のいる教卓に進み出る。
ルナが真ん中に出ると、生徒たちがざわめき出した。
普段、ルナが前に立って話すことはないからだ。
「みんな、静かに!」
ルナがよく通る声で呼びかけると、ざわめきも静まっていく。
その様子を見たルナは、口を開いた。
「私たちね、考えたの。フローラは、私たちを制限しすぎているって」
性別のこと。
インターネットのこと。
交流のこと。
フローラの制限を思い浮かべて、ルナの表情は少し曇った。
それでも胸に手を当て、まっすぐに前を向いて話す。
「だから、フローラに言いたい。制限を、緩めてほしいって。私たちで、申し出るの!」
教室は、再びざわめく。
そんなざわめきを背に、ゆうきと凛は呟いた。
「黒百合のガジェット部には、聞きたいことがたくさんあるからね」
「私も、もっと広い世界を見てみたいの。だから――」
凛は、その瞳に輝きを宿し、言った。
「だから、みんなで見に行きましょう。広い世界を!」
生徒たちの瞳も、輝き出した。
―――
『制限を緩める?』
「はい、私たちにも、もっと自由は必要です」
その後、すぐに宮森司令と連絡を取り、通話を始めた。
凛と宮森は、互いに一歩も引かずに睨み合っていた。
「アマリリスのみんなも言っています。話し合った結果、より組織全体の結束力を高め、技術を共有することで、フローラはさらに良くなると思ったのです。そこで、私たちフローラからのお願いです」
凛は、語気を強め、言った。
「フローラの、交流や情報の制限を、緩めていただけないでしょうか!」
勢いよく頭を下げる、凛と他の生徒たち。
それを見た宮森は、考え込むような仕草をした。
『私の一存では決められん。男子側の司令である、岩崎さんにも確認しないと』
岩崎さん、という名に、凛は引っかかる。
その名前は、初めて聞く。
それも、女子校側に伏せられていたのか、知らせる必要のないこととなっていたのか。
『すぐに、答えは出ないかもしれない。少し待っていてくれ』
そうして、司令との電話は切れた。
凛たちは、祈るように目を瞑った。
―――
一方、その頃、黒百合学園では。
(アマリリスと出会って、一ヶ月くらいか)
元々長かった朔の襟足は、さらに伸びていた。
ボブヘアくらいの長さだろうか。
それにつれて前髪も伸びてきてしまったので、朔は前髪を切ることにした。
自室の姿見の前に、ハサミを手に立つ。
(また会うためだ)
ハサミが前髪に近づいていった――そのとき。
「――ちょっと!」
そんな声と共に、朔の腕は何者かに掴まれた。




