第十一話 性別
ルナと直と西藤は、三毛猫を無事確保することができた。
総理大臣は、大喜びだったそうだ。
だが今日は、そんな任務もない。
つまり、休暇だ。
アマリリスの生徒たちは、ある者はダラダラと、ある者は任務に備え、今日も生活していた。
これは、会議室での会話。
「ルナ、西藤ココという探偵に会ったのね?」
「はっ、はい、そうです……」
「はあ、報告しないと、私が怒られるのよ……」
しかめ面の凛に叱られたルナは、さながら子犬のようだ。
凛は、素早くホログラム端末を操作した。
「あの、宮森司令、実はうちのルナと直が、先日の任務で……西藤ココ、と名乗る探偵に出会ったそうです」
『何?』
「なんでも、彼女も総理から依頼を受けていたのだとか。そうよね、ルナ?」
振り返って訊ねてきた凛に、ルナはコクコクと首を縦に振る。
完全に、ビビった犬だ。
『……確かに、あのあたりには「西藤探偵事務所」という建物があるな。報告、感謝する』
「あっ、司令」
ルナが、小さく手を挙げた。
宮森は、少し眉根を寄せる。
「聞きたいことがあって。西藤さんは、『男女が分けられて育てられることはおかしい』と言ってたんですけど。その……」
『それが「フローラ」という組織だ。今更変えられないぞ』
「……そうなんですか」
『もういいか?』
「大丈夫です」
凛が返事をした瞬間、電話が切れる。
宮森も、忙しいのだろう。
項垂れるルナを見る凛の瞳は、ゆらゆらと揺れていた。
―――
「見てくださいよ、ゆうきさん!」
食堂は、暇な生徒たちが集まってくる。
大抵は、おしゃべりをするためだ。
今日の食堂も、賑やかな声が響いていた。
ガジェット部のゆうきと小春は、机を挟んで向かい合っていた。
「何それ?」
「私の推しです! 動画配信者なんですよ〜。 イケメンでしょ?」
「ふーん? いけめん、かどうかはよくわからないけど。男の人?」
「そう! 憧れなんです〜」
目を輝かせる小春に、ゆうきは何かに気づいて、言った。
「てか、そういう動画って、組織の制限で見れないやつだよね?」
「はい。ハッキングしたんですよ」
「おい」
ゆうきは学校一の変人と言われているが、こういったところはちゃんとしている。
ナビ部やガジェット部は、コンピューターなどの心得がある。
多少のハッキングなら、すぐにできてしまう。
「みんな見てますよ?」
「そうなんだ……」
ゆうきは沈黙する。
何かを、深く考えるように。
(小春ちゃんは、こうして『推し』という存在から元気をもらっているんだ。なのに、動画サイトは組織が制限している。よく考えたら、そこまでする必要は、ないよな?)
女子校男子校の制限もね、とゆうきは心の中で付け加える。
ゆうきの「要らないものリスト」に、「フローラの制限」が追加された。
(いつか、自由な生活を送れたら。そうなったら、性別なんて関係なく、友達になったり、良い意見交換先もできるだろうに)
小春を横目に見ながら、ゆうきはフッとため息をついた。




