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第4話

 夢を、見ている。最悪な夢だ。


 無数の目が此方を見ている。どれもこれも目が血走り、睨みつけている。全てを憎んで、全てを羨んで、他人の破滅を望む、最低な目だ。


 俺を殺そうと狙っているのに、銀の炎から先に来ようとせずに、ただ、俺を睨んでる。


 動けない俺を、誰かが、連れ出してくれた。


 目が覚めると、満天の夜空が見えた。


 一瞬先ほどの目と錯覚して動けなくなってしまった。


「おはようございます。体調は大丈夫ですか?」


 アルテの声が聞こえて来たので、うまく回らない頭で起き上がる。


 俺はどうなったんだっけ?


 声のした方を向くと、隣で15歳程になったアルテが此方を見ていた。


 「おはようございます。あの、何がおきたんですか?」


 「端的に言いますと、貴方に体を乗っ取られてしまいました」


 「え?あ、は?」


 俺が、乗っ取った?


 「あなたに落ち度はありません。


 ですので、落ち着いて聞いてください。


 まず、この世界の理では、死んだ魂は世界の生命力に溶けて混ざってしまいます。


 ですが、魂だけとなっても世界に溶けない例外が2つだけあります。


 この世界とかけ離れた理で生まれた魂と、世界の理を捻じ曲げて魔術に使われている魂です。

 

 そして稀に、魂同士が強く共鳴する事があります。私の根幹の魂の1つと貴方が強くつながってしまったため、この体は貴方が6割の支配権を有してしまったのです」


 理解が追い付かない。だけど、そう、俺は、俺が、奪った?


 「しっかりしなさい。今回は貴方の責任と私は思っていません。

 ですが、罪悪感があるのなら償いなさい。貴方が責任を感じ、苦しいのなら、私の為に働きなさい。貴方が私の手足として動きなさい」


 アルテが俺を真っすぐに見てくる。どこまでも澄み切った、鮮烈なまでの力強い瞳で。


 「ただし、潰れる事は許しません。―――生きたいのでしょう?」


「っ――はい、はい!」


 罪悪感で感情が滅茶苦茶だし、俺がアルテの手足として動けるかも不安だけど、弱音なんざわきに置いとけ!甘えんな!男だろうが!


「俺が、貴方の手足として働きます!」


 俺が決意と共にアルテを強く見据えると、アルテがふと優しく微笑み抱き着いてきた。


 いきなりの事で動揺して動けない。


 耳元に届く衣擦れの音。


 冬の夜の匂いと、冷気、柔らかな感触に包まれて、思わず顔が燃えるように熱くなる。


 アルテ自身も、少し驚いているような気がした。


「ふふ、そんなに畏まらなくていいですよ。先の言葉は貴方の心を軽くするためだけの事ですから。


 貴方はまだこの世界の事を何も知りません。少しずつ知ってそれからでも遅くはないです。時間はあるのですから、この世界を楽しんでください。


 ですが、留まる事は出来ません。


 そこまで優しい世界でもないので」


 少し間があった。


「大丈夫です。私が守りますよ」

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