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第11話

 アルテが纏っている幽闇の衣は、とある伝説級の魔道具の模造品らしいが、かなりの出来で高位の隠密用の魔道具だとか。


 実際、ギルドに来るまで誰一人アルテに気づく者は居なかった。


 そのアルテに気づいた受付嬢に俺は身構えてしまう。


「承知しました。では、こちらの書類にご記入下さい」


「わかった」


 だがそんな俺をそよにアルテは平然とその受付嬢と冒険者となる為の書類を作成していく。

 アルテが渡された書類に書き込んでいくのを見るが、俺には文字がさっぱりわからなかった。文字が書けない俺はどうしたらいいんだ。

 よくある異世界転移の小説とかだと代筆を頼んだりするのが多かったけど、アルテが代筆をするか聞かれてなかったことを考えるとこの世界は識字率が高いのか?


『なあ、俺は字が全く読めないんだが俺がやるときはどうすればいいんだ?』


『ああ、普通は代筆をするか聞かれるからその時に頼めば良いですよ。

 彼女は、私の動き方や装備品から高度な教養のある人間だと気づいたので、聞かなかったのでしょう』


『そんな事まで見てわかるのか?というか、なんでそんな事ができる人が受付なんかやってんだよ!』


『そうですね、ですが余り気にしない方が良いですよ。この様な事は深く関わると大抵面倒なことになりますから。ここは大人しくして、必要であれば調べるとしましょう』


『...そうか、わかった』


 なんか酷く実感の籠った言葉だった。いったい何があったんだ。知りたいような知りたくないような。


「ご記入が終わりましたらフードをお取りになった後、この水晶をお覗き下さい」


「わかった」


 アルテがフードを下し顔を見せると少しだけ目を見開き見つめた後、アルテが水晶を覗き込んだことに気づき受付嬢が作業を進めていった。


「もう被ってもいいか?」


「はい、ありがとうございました。これで登録は完了です。試験は明日の木の時にナタキ迷宮で行いますので、この番号札をお持ちになり事前に門番にお渡しください」


「わかった」


「試験が終わりましたら、翌日にまたこちらにお越しください。ランクの入った冒険者のバッジをお渡し致します。次にギルドの規則の説明を致します」


 アルテが頷いた事を確認した受付嬢は説明を始めた。


 説明の内容はよく異世界ものの鉄板と同じだった。


 ギルドは依頼者と冒険者の仲介又は斡旋をするのでその手数料を冒険者の報酬から引き抜くという事。討伐した証明として指定された部位を持ってこないと依頼達成扱いにしないので気を付けること等だ。


 ただ、ごく稀に強制召集をかけることがあり、無視すると罰金又は降格、最悪の場合は資格の剥奪をするので注意することと言っていた以外、真面目に生きれば関係なさそうだった。


「これで説明は終わりです。お疲れさまでした。これからのバルリアでのご活躍を心より願っております。どうかこれからも宜しくお願い致します」


 受付の女性がとても恭しく頭を下げてきた。


 あれ、もしかしてなんか気づかれてる?


「―――敵対しない限りはバルリアの事も気にかけておくようにする。それでいいか?」


「問題ございません。こちらの願いを聞き届けていただき、誠にありがとうございます」


「気にしなくていい。元々ここは気にしていた場所だ。何かあればこれを使え。私の部下に繋がる」


「謹んで受取らせて頂きます」


 受付嬢が頭を上げる前にアルテは踵を返し、ギルドを出て行った。


『なあ、アルテの事気づいてた?』


『何処かの種族の貴族辺りだとは思われてそうですね。吸血鬼だとは気づかれてはいない筈ですが』


『そうなんだ。あの受付嬢は何者なんだろうな』


『彼女はここの領主の妻ですよ。相当な実力者で、今の私でもギリギリ勝てると思いますが、いくら体は強くても戦闘経験の浅い貴方ですと絶対に勝てない相手ですね。

 恐らく、Aクラスの中位以上の実力はあるのではないでしょうか。

 ちなみにここの領主となりますと今の私では負けると思います』


『なんでそんな人が受付嬢なんてしてんだよ。しかも、人間てそんなに強い人がゴロゴロ居るもんなの?てか、さっき言えよ!』


『シンは気にしなくても大丈夫ですよ。

 セラスに伝えておきますので、必要であればあちらで上手く調べるでしょう。

 それと、英雄クラスの、他の種族でいう侯爵クラスの実力者の人間が多いのは王都とここを含めた3つの城塞都市だけです。

 人間は数が多いですから、英雄も一番多いですね。

 恐らく、各種族に王が居ないとした場合、魔族と龍族以外の種族は人間達と一対一の戦争をしたら負けると思いますよ』


『そうなんだ』


『ですが、ここの領主は龍族と人間のハーフです。妻もエルフと人間のハーフで、此処に居る実力者、いえ住人の半分以上はハーフやクォーターとなります』


 危険な魔族の国との国境付近にハーフが多いってことは。


『差別?』


『当たらずとも遠からず、です。

 領主はバルリアの管理人として来ましたし、妻は領主に人間の王から助けて貰い、そのまま結婚して来たので違いますが。

 ちなみにこの話はとても有名ですよ。本当にあった英雄物語ですからね。ここは娯楽が少ないからあっという間でしたよ』


『多くてもこの手の話は広まりそうだけどな』


 実際に現実であった波乱万丈な人生を送った人の事を、地球でも映画化や小説化したものがあったはずだ。


『確かに。さて、宿を執りましたら外で訓練を始めましょう』


『ちょっと待って。バルリアに潜入してからやったことはギルドの手続きだけだよ。もっと見て回ってからでもいいでしょ?というか、このまま町を回るだけにしない?』


『それは貴方がCランクになってからにしましょうか。まだまだ貴方は未熟ですから、当分の間は訓練を最優先で行いますからね』


 俺はアルテのその固い意志を変えることができなかった。



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