第12話
私はいつも通りに早朝に冒険者ギルドに出社し、掃除をした後に受付で仕事をしていました。
ギルドの朝はとても忙しいです。Eランク以下の冒険者の方々は少しでも割の良い依頼を受けようと、ギルドが開くと同時に依頼板へ殺到してきます。
依頼の内容をきちんと確認していただけると助かるのですが、Eランク以下の方は文字が読めない方も多く、受付で説明をしなければならない事が多いので更に時間がかかってしまいます。それでも、ある程度冒険者を続けている真面目な方は、自分がよく受ける依頼や割の良い依頼の文字を覚えてくるので、低ランクの中でも質が分かれてきます。そういった真面目な方にはこちらからもお手伝いをして、ランクを上げやすいようにしています。
それ等を捌くのはとても忙しいですが、ピークさえ過ぎれば夕方に依頼を終えた方々が来るまで、書類仕事はありますがあまり忙しくはありません。
ですので、ピークを過ぎた今は、書類仕事をしながらも周りに気を配り、冒険者の方が来たなら直ぐに対応できるようにしています。
いつも通りに仕事をしていましたら、今日は少し変わったお客様がいらっしゃいました。
お隣にいらっしゃるメイシア様がお声をおかけになるまで、いえ、かけられた後に更に注意をして見ないとそこに居ると分かりませんでした。これほど気配を消すことが上手い方はそうそう見かけません。
さりげなく様子を窺っていると、その方は冒険者になる際にE~Cランクのいずれかになれる試験を行いたいとのことでした。
この試験を受ける方々は実力者であることが大半です。やはり凄い実力者の方なのかと思っていると、ギルドカードに登録者の姿と魔力の波紋を記録するためフードを取って頂くところでした。
フードを外した途端、ハッキリと認識できるようになりました。
今までの声と話し方から男性の方だと思っていましたが、高貴な気配のする凛とした美少女であり、その姿にふさわしい可憐な声の方でした。
肩まである銀色の髪と、見る者を魅了するかのような天色の瞳。思わず見惚れてしまいそうになるほどの美しさです。ですが、銀髪に天色の瞳は王族の方と同じ特徴です。この高貴さも合わさるともしや、王族の血を引いている?いえ、少し飛躍しすぎましたね。
彼女の声が違っていたことや気配が薄かったのは、羽織っているフード付きのローブが魔道具でありその効果なのだと思われます。これほどの効果を持つとなると途轍もなく高位の魔道具です。
間違っても平民、いえ、王国の並みの騎士や貴族などではどう足掻いても手に入れられる物ではないでしょう。それこそA級以上の冒険者や王国の各騎士団長、公爵家以上の貴族でなければ手に入れられる物ではないと思われます。
高位の魔道具を持つ程の家格もしくは実力を持ち、年若い彼女が色々と危険が多く、粗野な方が多い冒険者になろうとは何かあったのではないかと好奇心が掻き立てられます。さらに、彼女は普通の人間に見えます。獣人等の各種族の方が主にこの都市での試験を行いに来ますが、人間の方は王都が一般的です。その様な方がわざわざこの都市に冒険者として来る事も不思議でなりません。
彼女の経歴を想像している間に、冒険者の説明が終わりました。
その後にメイシア様がとても丁寧に頭を下げて今後の活躍を期待している旨を伝えておりました。確かに、今までも将来有望の方には丁寧に頼むこともありましたが、今の様に貴族を相手にする程の対応ではありません。
彼女はメイシア様に透明な玉を渡しました。話からして本当に王族の血が混ざっている可能性が高くなりました。さらに、離れた相手との通話の出来る魔道具はとても貴重で高額な代物です。それを、簡単に渡せるとなると更に私の想像の補強となります。
好奇心に負けてしまい、彼女が影のように消え去った後メイシア様に先程の方について聞いてしまいました。メイシア様は奇麗に微笑み、あの方について余り詮索せず、普通に接する様にと窘められました。
敬愛するメイシア様に嫌われるのは避けたいので大人しく了承しました。
ですが、あの方については何故かとても気になってしまうのでこっそりと接点を増やして今後の動向に気を配りたいと思います。




