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挿話75 立花誾千代(キタカ国将軍)

 土方とかいう、未来の男。

 イリスと距離が近い感じがして、どこか気にくわない。


 その横には確か高杉という、これまた土方と同時代の男らしい。

 こっちは緊張感もなく呑気にあくびをしている。しかも女性2人を連れて――1人は完全に少女だ――を連れて物見遊山のようにしているのも気にくわない。


 この連中とはあまり話もしないまま、ここまで来たからか、どういった人間かも分からなかった。


 土方が小さく鼻を鳴らし、


「ふん、話しには聞いたが、気の強ぇ嬢ちゃんだ」


「は? いきなりなにそれ。喧嘩売ってる?」


「悪いな。喧嘩は売る専じゃなく、買う専なんだ」


「じゃあ私が格安で売ってあげる。あとでほえづらかかないでよ?」


「京じゃあ安く買って高く売る方法を教わったからなぁ。山崎のやつに教わったやり方で高く叩き売ってやるよ」


 なに、こいつ。やっぱり訳が分からない。

 なんでイリスはこんなやつと……。


「まーまー、土方くん。それに立花くん。イリスがいないからってそう邪険になるなよ」


「うるせーぞ、高杉」


「そうよ、邪魔。どいてて」


 私と土方をなだめるように割って入って来た高杉。その軟弱な感じがこちらの感情を逆なでする。


 だから割って入るなと明確に指摘したものの、それに対して動いたのは当の本人ではなく連れの女性。菊だ。


「あ? てめ、高杉様になにナマ言ってんの? ブチ転がすぞ?」


「は? なにいきなり入ってきてるの? ほんと、イリスはなんでこんなやつを連れてくことにしたんだか」


「イリス“様”だろ? てめぇごときが呼び捨てにしていい名前じゃねーんだよ」


「そのイリスと私にボコられた負け犬がよくも騒ぐわね。しかもイリス様とか。誇り(プライド)ないんですかぁ?」


「てめぇは何もしてねーだろ。菊はイリス様に負けたの。あんたなんかにやられるわけないじゃん」


「ふーん。それってもう完璧に負けを認めてるってことね。うわー、情けな。そんなの私だったら腹切るわ。そうやってずっと負けを認め続ける負け犬人生に負け続けてれば?」


「あー! もう怒った! もういいよね! やっちゃっていいよね、高杉様!」


「いや、それはどうかと思うんだが。なんていっても美少女がこの世から消えるのはとても悲しいことだ」


「高杉様? なんだって? 美少女? 菊のことだよね? 当然? まさか他の女にうつつ抜かしてるとかありえないよね?」


「し、してない! 僕は菊一筋だって! って、あ、えと、マシューもね」


「そ! よかった! だって高杉様のこと考えてたら、もう胸がいっぱいでご飯が5杯もいけるんだもの。これでもし他の女にとか言ったら……して……するから……したあとに……するしかないけど」


「やめて! その肝心なところ聞こえないの!!」


「お前らいい加減にしろ! もとは俺の喧嘩だろうが!」


「ちょ、土方! 抜刀はダメ! 抜刀はー!!」


 はぁ。なにこいつら。

 言ってることもやってることも滅茶苦茶。中心イリスがいないとこんなもの。


 ふと視線に気づいた。スキピオだ。


「随分と楽しそうだったな」


「別に楽しくないし。てかなんで親目線?」


「ふふ、いつもより溌溂としていたぞ。私や、あのガリアの馬鹿者とはやはり時代も国も年齢も性別も違うからな」


「……別にそういうのじゃ……ないし」


 お父様の跡を継ぐのは当然だった。そのための厳しい教育だって弱音も吐かなかった。

 あのクソ旦那が来ても耐えられた。


 ――それでも。


 こうやってなんでもないような会話をすることは。

 何よりイリスみたいな同年代の女の子と話すのは。


 …………。


「って、違う! 別に認めてないから! 楽しいとかそういうのじゃないから!」


「はっはっは、少しは素直になれギンチヨ。私だって若いころはローマのプーちゃんとして――ぎゃあ! 問答、無用の……雷切」


 ったく。

 もう本当に意味わかんない。


 ただなんとなくその場にいたたまれなくなって、足早に歩き出す。


「あ、待てよ! まだ菊との話し合いは終わってねーだろ!」


「こっちこそ喧嘩売られたままじゃ収まりつかねぇっての!」


 後ろで菊と土方が騒いでるけど知ったことか。


 あーあ。イリスなしのこいつらとあとどれだけいればいいのか。気が滅入る。


 その元凶となっているローカーク門を眺める。

 その高さ。その威容。確かに日の本じゃそう見ることができない巨大な門。関白様の大阪城とどちらがと言われても迷ってしまうほど。


 けど……。


「ん……?」


 何かがひっかかった。

 ピリピリというか。異能が雷を操るからか、なにかそういったものが髪の毛に反応するように思える。


 それは人の動きだったり流れだったりするもの。


 確かにローカーク門は、何も通さないと言わんばかりの威容と圧を押し出してきている。

 これまでがそうだった。相手があの白起や呂布がいるというのも、その圧に拍車をかけていたに違いない。


 けど……。今は。

 どこかおかしい。

 何も感じない。

 あの門から。威容も圧も何もかも。


 もしかして……。


「あんた! 菊に背を向けて逃げるなんて、それこそ負け犬じゃん。この負け――」


「ちょっと黙ってて」


「は? なにそれ! 菊に命令できるのは高杉様とイリス様だけだし!」


 本当にうるさい。雷を落としてやろうか。物理的に。

 けど待って。いや、たぶんそう。あの門の様子。


「門、誰もいなくない?」


「「は?」」


 菊に追いかけてきた高杉、土方、少女、そしてスキピオが一斉に怪訝な顔で首をかしげた。

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