EP・8 神殺しの異能
《天羽視点》
とりあえず風呂から上がり、寝巻きに着替える。
ご飯の支度する前に…あったあった、ルナ様からもらってたスマホ。
あると助かるけど、これよりも先に教科書欲しかったなあ…言っても仕方ないし、おかげで神裂君と仲良くなれた訳だからあんま文句言えないけど…
なんかニヤニヤしてるルナ様が頭に浮かぶ…なんか腹立つな…
まあいいや、昼のうちに交換しておいた神裂君の連絡先にメッセージを送る。
『ご飯中だったらごめんね、神裂君ってご飯どうしてるの?自炊?』
お、もう返ってきた。
『ちょうどこれからご飯だね、基本は自炊かな。ちなみに今日は肉じゃが!』
メッセージと共に肉じゃがの写真が送られてくる。美味しそうだな、ある意味飯テロじゃない?これ?
『すごい!美味しそうだね、ちなみに飯テロした感想はいかがです⁇』
『いやー、申し訳ありませんな笑、ただ作りすぎちゃったんだよね…』
くそう、神裂君悪びれないな…それと作りすぎた、か…自慢ではないけど私はあんまり…いや、ほぼ料理経験がない。
話さなければいけないこともあるし、一緒に食べたいけど…
私から、しかも出会った当日にお邪魔したいと言うのは失礼、というか常識的に考えても、論外…
私がうなっていると、おや、神裂君からの通知だ。
『今日であったばかりの人にこんなこと言うのも変かもだけど、せっかくお隣さんだし、一緒に食べる?』
しゃあっ!危うく叫びかけた。セーフ、神裂君に今から向かうという返事を送り、一応下着は着直して、カーディガンを羽織り家を出る。隣の部屋のインターホンを鳴らすと、直接神裂君がドアを開け出迎えてくれる。
「ごめんね、急に…」
「大丈夫だよ、誘ったの僕だし、嫌じゃなかった?」
「うん!」
「なら、冷めないうちに食べちゃおっか。」
***
《神裂視点》
玄関を開けると少し申し訳なさげな天羽さんが目に入る。急に来た事を謝られてしまったので気にしていないと伝えつつスリッパを渡す。
「そしたら家の構造は同じだからね、先にダイニングまで行っててくれる?」
「うん!ありがとね、神裂君。」
そう言いながら天羽さんが奥に向かう。
渡したスリッパが少し大きかったらしくパタパタと音を立てて歩く天羽さんかわいいな…
パジャマ姿も新鮮だけど、その上に羽織っているカーディガンが少しオーバーサイズなのか、萌え袖なのもまた…
って僕は何考えてんだっ!?頭を振って思考を中断し天羽さんを追う。
待てよ…ダイニングにある机って対面で座ることになるよな…?
えーい、ままよ…そう思いながら食卓の準備をする。天羽さんが手伝いを申し出てくれるが、僕が耐えられないので全力で押し留める。
そのまま思いっきり顔を合わせながら食卓に座る。
懸命に意識しないようにしながら声を出す。
「えー、それでは」
「「いただきます(!)」」
「……神裂君?」
あれ、口に合わなかったかな?すでに一口目を口に含んだ天羽さんが俯いている。
「ごめん、口に合わなかっ―――」
「すっごい美味しいよこれ‼︎」
天羽さんが僕の言葉をかき消す勢いで食い気味に答えてくれる。
「お、おお、まさかそんなに気に入ってもらえるとは。母の得意料理だったんだよ、これ。」
そこからしばらく肉じゃがの話題で盛り上がり、食事を終える。
僕もこの状況にやっと少しは慣れてきたので食器の片付けは天羽さんにも手伝ってもらう。
手早く済ませたところで、天羽さんを見ると、うとうとしている。
もう遅いもんな、
「天羽さん、大丈夫?いくらお隣とはいえそろそろ…?」
「ふぁ…うん…らひじょぶ、まだ神裂君に伝える……事が…」
こりゃ大丈夫じゃないな、とはいえどこのまま返すのも危なそうだし…(家入る前に倒れそう…)
どうしたもんかな…と僕が悶々としているうちに天羽さんが声をかけてくる。
「ごめん…少し寝ていっていい…?」
「……わかった、ソファで良い?」
「うん、平気…」
ふらふらしている天羽さんを手を引きソファまで案内する。どうにかエスコートし終えて緊張から解放されほっと一息つく。
起きるまで待っていようと本を持ってきて読む。と、数分で天羽さんが起きた。
「あれ、もういいの?」
「んあ…?なんか寝れない…」
「大丈夫?」
「んー…そだ、膝貸して?」
ん?DO⭐︎YU⭐︎KO⭐︎TO⁉︎
「えーと、天羽さん…?」
「こっちきて、座る…」
「これでいい?」
仕方がないのでとりあえず言われるままに移動する。
「そう…そのままね…?」
天羽さんがそのまま頭を乗せてくる。俗に言う膝まくら。
「そういうことね。」
天羽さんを起こさないよう、小声で呟く。
成り行きで膝枕してるとはいえども、流石に緊張する…一応意識しないためにも、持ってきた本に目を落とすが正直意味はない。
気づけばついつい天羽さんの寝顔を見てしまうし、寝言であろう、お母さん、お父さん、といったつぶやきを聞くたびにドキドキする。
天界ではどんな生活をしていたのか。
聞かないでほしいという思いが目に見えるほどに感じられる以上、何も聞けなかったが、彼女も同じ十八歳の女の子だ、寂しいのだろうか。
とはいえ、出会って一日でここまで仲良くなるとはね…
天羽さん…もう少し警戒心というものを持とうよ…
だけど。
彼女の消えてしまいそうな、いつも危なく揺れる瞳をした少女が、少しでも安心できるなら、これも構わないか、と思う。
そんなことを考えながら本を読むという無駄な足掻きを続けていると、天羽さんがボーッとした様子で目を開ける。
そのまましばらく虚空を見つめていたが、徐々に自身の状況を思い出したのだろう。
どんどん顔を赤らめ、飛び起き、土下座に移行する。
「いやいやいや⁉︎天羽さん何してるの⁉︎」
「いや…その…人の家で、あろうことか家主に膝枕をさせ寝るという醜態を…」
「あー、まあいいよ?僕にも利益あったし?」
「利益…?」
天羽さんが不思議そうな顔をする。
「うん、その…寝顔…?」
あ、選択ミスったかもしれん、天羽さんさらに赤くなってる気が…
「と、とにかく‼︎ゆっくり寝れたならよかったよ、別に気にしてないから。大丈夫だから。それに僕に何か言いたい事があって来たんじゃなかった?」
《天羽視点》
神裂君に言いたい事があったんじゃないの?と言われ、我に返る。
でも神裂君の膝枕よかったなぁ、つい頬が緩む。
いつも響く、喇叭で消した…いや、殺した人たちの声を一時だけでも忘れてぐっすり寝れたし…
って違う違う、そうじゃなくて…
「神裂君、膝枕ありがとう、それと…」
「それと…?」
「これが本題、私は今から君を、確実に苦しめることになります。それでも私を信じて、耐え抜いてくれますか?」
「それは…どういう…?」
「私はこれから、君の異能の歪みを正し、本来あるべき姿の異能、『神殺し』へと覚醒させます」




