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終末の喇叭に泣く君へ  作者: 藥籠ヰナリ


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EP・6 異能訓練

 さきほど神裂君に無理を言って、実技の授業に参加する事にしてもらったのだが、何気にお願いしてよかったかもしれない。

元々は彼の異能に少しやってみたい事ができたからだったけど。

まさか練習がペアでやらなくてはいけないとは…

今はもう校庭でペアが各々ウォーミングアップをしている。

当たり前だが私は転校したばっかり、組む人はいない。

だからといって知らない人に話しかけてペアになって貰うという事ができるタイプではない。その結果…


「神裂君…ペア、組んで…」


「うん、僕でいいんだね?」


「うん、やりたい事があるって言ったでしょ。それに…私他に友達いないし…」


私のジメッとした雰囲気に押されたのか神裂君が若干引いている気がする…


「いいですよ…どうせ天界の学校行った事ないから、友達いなくても何も思わないぼっちですよ、私は。」


「ちょ、天羽さん、落ち着いて。組む、組むから。」


「ありがとう…」


いやはや、組んでもらうのにこんな演技をする羽目になるとは…

いやまぁ事実だけど…

我ながらやっていて悲しくなってきた。そんな事を考えていると御玉先生の号令がかかる。


「皆さーん、校庭を十分割したので、各エリアに二組ずつ入ってください。開始は私の笛で合図をします。これが最後の時限なのでチャイムで終わりにします。」


全員で返事をしエリアにばらけていく。空いていそうなエリアに向かうと先に着いていた二人組が話しかけてくる。

私と神裂君と同じで男女のペアだ。

男子の方がにこやかに笑いながら話しかけてくる。


「いい試合にしようぜ。よろしくな!」


女子の方も合わせてよろしくと言ってくれたのでこちらも挨拶を返す。それ以外は特に会話もなくお互いの開始地点に移動した。


「神裂君、あの二人って…?」


「えーと、確か舞赤炎(まいせきほむら)さんと中山仁(なかやまじん)君じゃなかったかな。学級委員長、副委員長のペアだったはず。」


「なるほどね、強いの?」


「うーん、今まで実技はほぼ参加してないからね…ただあの二人は実技も座学も学年トップクラスって言われてなかったかな。」


「初っ端からやばい人達と当たったね…」


「うん、僕も模擬戦は本当に久しぶりだから上手く動けるかな…」


「大丈夫!まだ練習なんだし、胸を借りるつもりで頑張ろ?」


私の発言に神裂君が微笑みながら答える。


「そうだね、頑張ろう。」


丁度そのとき、開始を告げる笛の音が聞こえた。


      ***


「よし、神裂君、刀貸して?」


「え!?」


「大丈夫、貸して?」


「わ、わかった。気を付けてね?」


困惑した様子で創り出した刀を渡してくれる。ん、この刀から溢れる力の巡りがすごい歪んでる。

打ち消す力が歪められてるのか。だから周りに悪影響を…

でも、これなら私の『加護』でどうにかなるな、よかった。


「よし、できた。神裂君、抜いてみて?」


言いながら刀を返す。


「ん、なんか変わったの…ってうわっ!?」


そりゃあ驚くだろう。ぱっと見は特に変化がわからないが抜刀した瞬間、今までは錆びついていた刀身が輝きを帯びているのだから。


「どっ、どういう…?」


「これが私のチカラ、加護だよ。もう一回神裂君にもかけたいんだけど連続では中々上手くできないの。しばらくは刀で耐えててもらえる?ごめん…。」


「勿論だよ、というか謝らないで。ありがとう、無理はしないでね?」


「ありがとう…少しの間だけ頑張って…」


既に模擬戦は始まっている、私も座り込んでいる場合ではないのだが、どうしても加護を使うと体力を大幅に削られてしまい、しばらく動けない。

そんな私に気づいてか神裂君が声を掛けてくれる。


「思い出した、確か舞赤さんと中山君の異能はそれぞれ『炎神』と『剛力』だ。今回のステージが平原だから真ん中の丘を越えてくるまでは気にしなくて大丈夫かな。少し休もう。」


「ありがとう、神裂君。因みに、剛力は名前からなんか想像つくけど、炎神って?」


「その名に恥じぬ強力な炎熱を操る異能だね。自身で着火もできるんじゃないかな。」


「もしかしてだけど、人間の体の熱とかも見れるのかな?」


と私が言った瞬間。至近距離に炎柱が上がる。

まずい、私の体はまだ回復しきっていない。動けない所にさっきの様な炎柱を喰らうわけには…


「盲点だった、まずいっ、天羽さんごめん…!」


その一言と共に私は神裂君に抱えられる。少し移動し神裂君が見つけた丘の麓にあった横穴に入る。


「多分、周りに燃えるものが無ければ炎柱は作れないはずだから…」


「あぅ…その…神裂君?」


「なに?」


「恥ずかしいから降ろしてくれると助かるんだけど…」


「あっ…ごめん…大丈夫?」


「う、うん…」


あーもうこれ私絶対顔赤いよ…まぁ体力尽きてる私のせいでもあるけど…お姫様抱っこは照れるって…

て、そんな事考えてる場合じゃない!


「神裂君、もしも大丈夫そうなら先に丘を登ってみて欲しいの、推測だけど相手が熱感知を使えるならステージ全体を見れる所にいるだろうから。」


「確かにそうだね、了解。天羽さんはどうするの?」


「もう少し休んだら合流するね、一人であの炎にさらに中山さん?の相手もあるから厳しいかもだけど、お願いしていい?」


「了解、早速行ってくるよ。気をつけてね?」


「うん、ありがと。」


   ***


《神裂視点》

よし、丘の上に着いた。天羽さんの予想通り、舞赤さんと中山君は二人とも僕を狙ってきたな。

よし、天羽さんが来るまではどうにかして二人を抑えないと。


「て、あぶなっ…!」


紙一重で中山君の拳を避ける。まずいな、刀を抜く暇がない。

まずは一度体勢を…


ゾクッッ……


悪寒が走り必死に体をひねる。

と、ちょうどさっきまで上体があった所に炎柱が上がる。


「あっぶね……!」


だが、チャンスだ。炎柱のおかげで中山君と距離が取れた。抜刀する。

と、消えかけた炎柱を突っ切るように拳を構えた中山君が来る。


「らぁぁっ……!!」


裂帛の気合と共に拳が繰り出される。

身体強化された拳、止められるか……?いや、受けきるしかないっ!!

左上段、右上段、右薙ぎ、ストレート、よし、流れが途切れ…てない、炎の刀…!舞赤さんか‼

思考を焼き切るように迫る炎の刃を刀で切り払う。あれ…?

切った炎の刀の感触に違和感を覚える。豆腐を切るかの如く、刀を簡単に振り抜けた。

と、同時に彼女のほうから驚いた声が聞こえる。


「なにこれ…?炎が維持できないっ⁉」


「それに、あいつ…俺の攻撃を身体強化なしで捌ききりやがったぞ…」


これが……この刀の力…?

それに、どうにか中山君の攻撃も捌ききれた。この分なら天羽さんが来るまで持ちこたえられるかな、と思った時。

体力が戻った天羽さんが駆け寄ってくる。


「神裂く――ん‼大丈夫……そうだね。」


「意外にもね…、ていうより天羽さんは大丈夫?」


「うん、ありがとう。このまま神裂君にも加護、かけちゃうね?」


「うん、おねがい。」


「じゃあ…いくね。『恵与』」


天羽さんの一言で、僕の体に光の羽衣の様なものが纏われる。生み出されるエネルギーで髪が逆立つ。


「天羽さん、ありがとう。あとは任せて。」


「うん、頼むね。」


改めて舞赤さんたちの方を見る。僕の変化をポカンと見ていた舞赤さん達だが、二人も今更ながらに戦闘姿勢を取り直す。

が、もうそこは僕の間合いだ。

跳躍。二人の背後に飛び込む。着地と同時に一瞬で峰打ちを決め、もう一度跳躍して元の位置に戻る。


「ふぅ。」


僕が息を吐くと同時に全ての加護が外れた、刀や羽衣の輝きが消える。刀はいつもの錆びた刀に戻っていた。


   ***


《天羽視点》


「神裂君、お疲れ様!」


加護の解けた状態の神裂君に声をかける。


「天羽さん、お疲れ様。加護の力ってすごいね、あの速度で動けるようになるとはね。」


「詳しくは後で話すけど、あれは間違いなく神裂君自身の力だよ。それに……かっこよかったよ?」


「えっ…あーそれは…どうゆうこと?」


「まあまあ、あっ舞赤さんと、中山さん起きたみたいだよ?」


危ない危ない、さらっと言ったことに言及される前に、話は切っとかないとね。

てか話し切るのに使わせてもらったけど、舞赤さんと中山さんだっけ、あの二人タフすぎないか…?

ついさっき神裂君に峰打ちされてたよね…?と、思っていると二人が話しかけてくる。


「神裂…」


「えっと…どうした?」


神裂君が答える。


「いや、お前すげーよ!加護、だっけ?それがあるときの動きは俺も見切れなかったし、炎とも話してたんだけど、異能を使用を出来なくできるんだろ?すげーよ!」


隣で舞赤さんも頷いている。


「あ、ありがとう…」


神裂君が控えめにだが感謝を返す。


「おうよ、とにかくいい模擬戦になったぜ。また頼むわ。」


「私からも是非、お願いしたいわね。天羽さんも、よろしくね?」


神裂君と顔を見合わせる。


「もちろん、またよろしく。」


「次は私ももう少し前線に出れるように頑張ります!」


そうして舞赤さんと中山さんと互いに握手したところでちょうど授業が終了した。

この後帰りのホームルームの準備があるそうで舞赤さん、中山さんペアは先に教室に戻っていたので、神裂君と話しながら教室に戻る。


「天羽さん、今日はありがとね。」


「どうしたの急に?」


「いや、今まではずっと疎ましかった異能が、そしてそれに、嫌でも向き合わざるを得なかったこの時間が、少しだけでも変わった気がしたからさ。」


「そっか…」


「うん、だからね、ありがとう。」


「いいって、照れるじゃん…まあでも、少しでも変わったならよかったかな。頑張ろうね!」


「そうだね、これからもよろしく。」


「うん。」


着替えが必要なので一度神裂君と別れ、更衣室に入る。

これから、か。無条件に信じてくれるんだ、神裂君は。そんなもの私にあるのかな…

考えながらさっさと着替えを済ませ教室に戻る。

私の他に数人女子が戻ってきたタイミングで帰りのホームルームが始まった。

舞赤さんと中山さんが連絡事項をまとめて伝えてくれている。

そのあと軽く御玉先生のお話がある。いくつか気になるものもあったがあとで神裂君に聞けばいいか。と、御玉先生がホームルームを閉める。


「では、これでホームルームを閉めます。起立。気を付け、礼」


『ありがとうございました。』


クラスに挨拶が響き、それぞれが思い思いの行動をとり始める。

丁度いいので神裂君に聞きたいことを聞こうとした時、中山さんが話しかけてくる。


「神裂ー!」


「ん…?なになに、何事?」


「あ、丁度いい天羽さんも少し時間もらっていい?」


「いいけど…どうしたの?」


「二人とも、クラス対抗校内試合にでないか?」

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