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EP・2 月ノ神ルナ

 世界を消去した翌日、私の所属する部隊『笛吹き』の母体となる天月陣営のリーダー、ルナ様からの呼び出しを受けた。

今は戦時下だ。決して家柄の様な階級や形式による呼び出しではないだろう。だとしたら一兵士である私を呼び出す理由って…?

そんな事を考えながら、今は作戦本部となっているルナ様が住む宮殿に向かう。

警備のチェックを受け、中に入ると、作戦本部とは思えないほど静謐で、白や青で統一された綺麗な宮殿の内部が目に入る。

私もこんな所に住めたらなぁ…て何考えてんだ、私

ルナ様のところに早く向かわないと。

ブンブンと頭を振って思考を中断し、宮殿の中央に位置する玉座の間へ向かう。

中央に玉座の間を擁するこの宮殿は外の川から引いてきた流水をそのまま室内の水路に繋げているため、ルナ様のいる玉座の周りは常に川が流れている様な光景でとても綺麗と聞いている。って、ん?


「水が…枯れてる?」


「ほぉ、澪音、初の感想がそれかいの?」


「ひぇっ!?」


しまった、動揺で変な声出しちゃったよ…今の声ルナ様だよね…聞かれてた…?


「ほれ、澪音、こっちじゃよ」


急かす様に呼ばれて振り向くといた、ルナ様玉座にいるかと思ったらめっちゃ近くにいた…


「えーと…すみません……聞かれてました?(失礼だったよね…?)」


「うむ、バッチリ♡」


「う…打首だけは勘弁を…」


「大丈夫じゃ、そんなことはせん、立ち話もなんじゃし奥の部屋に来てもらえるかの?」


「は、はい…」


危なかった…でもニヤニヤしながら言われてもあんま説得力ないというか…まぁ行ってみるしかない。


      ***


ルナ様について行き玉座の裏の隠し扉に入る。こんな所にこんなものがあるとは。


「澪音、そこに座っておるのじゃぞ?」


「はい…」


もうこうなると頷くしかない。先程からルナ様は何やら忙しそうに動き回っている。


「あれ、この匂いって…?」


「お、気づいたかの?お察しの通り!紅茶と、クッキーじゃ」


「す、すごい…」


「じゃろ?少しゆっくり話がしたくての。おぬし、こないだの世界消去が何回目じゃ?」


予想していない質問が来て危うく紅茶を吹き出しかけた。危ない危ない。


「前回ので、確か十個目ですね、他のメンバーはペアを組んでいるみたいなので一人の負担はもう少し軽いみたいですが…あぶれちゃって」


我ながら情けない…しかも他のメンバーと戦時下に文通などできる訳も無く誰がどの世界を消したかすら知らないのだ。


「そうか…妾から頼んでいることでこんな事を言うのもおかしいかも知れんが無理はするな?」


あ、今日呼ばれたのはもしかして…?


「心配してくださるんですね…ありがとうございます、私は大丈夫です、ルナ様。紅茶とクッキーもおいしいです!」


自分のできる最大限の笑顔を返したつもりだがどこかルナ様はバツの悪そうな顔をする。


「そうか…すまないな。それと別件がもう一つあってな、こっちは任務の話じゃ。」


その言葉でしっかり表情を引き締め続きを聞く。


「ホルが創り出した世界に『神殺し』の異能を持つ人間がいる様なんじゃ。」


神殺し…聞いたことはある、私達天界の住人には普通の対人兵器や能力はほぼ無効だ。

だが、神殺しだけはその力で神や天使を殺せる、と。


「でもそれは伝承や御伽噺の類ではないのですか?」


「ふむ、妾も報告を受けるまではそう思っておったが…」


ルナ様の説明によるとこうだ、

現状の戦況はまだ互角のレベルであるが、いつまでもこんな事をしていてはお互い消耗戦となり、天界そのものに大きな負担となる。

和解し、戦争の早期終結を目指したいが報告にあった神殺しが実在する、しかもそれがホル側の世界に在ると言うのでは和解しようにも危険すぎる、対談の場を設けたくてもそれができないのでは和解など不可能であると。


「ということじゃ。」


「なるほど、確かに神殺しが実在するなら放ってはおけないですね。」


「じゃろ?じゃからおぬしにはその神殺しがいる世界に向かい、神殺しと友好関係を築いて欲しいんじゃ、危険だと判断するなら世界ごと消去しても構わん。妾とて、ホルとの殺し合いなど望んではおらぬ。無理を承知で頼みたいが…どうじゃ?」


正直言って任務なのだから断るつもりはない。


「わかりました」


「うむ、すまんの。では明日より神殺しの在籍しているという学校に転校し、友好関係を築いてくるのじゃ。」


「え、学校…?」


「おろ?言っておらんかったかの?」


「何をですか?」


「神殺しの力を持つのはその世界の学院に通うおぬしと同い年の男子じゃよ?」


「は…え…?」


唖然とする私にルナ様は告げる。


「そこに転校して友好関係を築いてくるのじゃ」


まぁ受けると言った以上行くしかあるまい…


「わ、わかりました…」


「では明日からじゃな。これを持っておけ、神殺しのいる世界の基本情報が載っておる。頭に入れておくのじゃぞ?」


「明日からですか…」


「うむ、頑張ってくるのじゃ!」


「はい…」


もう明日からとか言われてもなぁ。何もかもが衝撃すぎて驚けないよ…。


      ***


ルナ様から下がって良いと言われたので玉座の間をでて自室のある兵舎まで歩く。

男の子か…そういえばあんまり関わったことないかも。

小中までは女子校だったし、高校には戦争が始まって行けていない。どんな人なのかな。仲良くなれるかな?

もしかしたら恋仲になっちゃったりして…な訳ないか。

今まで消す世界の事を知りもせず、いや、知ろうともせずに沢山の人を殺してきた私に…人と仲良くする資格なんて…

今回だって…あくまで任務の為だ。

私の手は沢山の人の血に濡れている。

その手で誰かの手を取るなんて、していい事じゃない。

とにかくまずは、神殺しの人がいる世界の事、少しでも知っておこう。消すことになったら、私自身がせめてもの罰として、もっと苦しむ事になる様に。

考えながら歩いているうち兵舎に着く。自室の見張りに会釈しながら部屋に入る。部屋の鍵を閉め部屋を見渡す、この部屋からも少しの間だけど離れるのか。淋しい…とまではいかない。どうせすぐ帰ってくる。

さて、寂寥感に浸ってる場合ではない。もらった資料読まないと。なになに。


『神殺しのいる世界では全ての人間が異能と呼ばれる力を持っている。世界には異形と呼ばれる怪物が存在しているが、調べによるとこれは世界複製によるものではない。

というよりこの世界には複製された世界に見られるバグ(異常)が見られない。

異能は元から存在しているし、異形については恐らく天界に存在する偽神が流出した可能性が高い。こちらについては原因不明。

しかしこれによりこの世界では異能を用いた文明が栄えている。………』


なるほど。あれ?でもこの書き方だとまるでこの世界は複製されたものでは無いみたいな…。でも珍しい世界だ、バグによる異能の普及ではなく、元から存在する世界。不思議なこともあるものだ。

とりあえず基本的なとこは頭に入れたし、明日の転移に向けて早めに寝ようかな。確か、生活に使う家は学院の近くのマンションの一室が使える様になってるって言っていたしそこに転移すればいいか。

ルナ様が付与してくれた『[[rb:隠理ノ法 > いんりのほう]]』によって私の羽根や光輪は普通の人には見えなくなる。髪色も白銀髪から黒髪、目も青目から黒目でザ・人間になるし。部屋の鏡で見た目の変わった自分を見て思う。


「なんか、私じゃないみたい。」


そう言葉が漏れる。ずっとこのままでもいいかもとも思った。

服装は転校先の制服を貰えたのでそれを着れば良いし。特に準備することもないか。

そう思いベッドに身を投げる。今日はなんだか疲れた。驚きの連続だったからかな。まぁまた明日から頑張ろ。そこで私の意識は途切れた。

作者都合により投稿が遅れてしまい申し訳ないです。

お詫びもかねましてEP3と同時に更新します。これからもよろしく…

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