EP・20 女子会?
《天羽視点》
………んぁ?ここどこだ…?
そう思いながら目を開ける。
「知らない天井……」
う〜ん、頭痛い…何してたんだっけ?
えっと、旧図書館で読んだ本により、具合の悪くなった神裂君を異能部の救急小屋に運んで…入鹿先生に診せて…
だんだん記憶が戻ってくる。あれ、だとしたらなんで私、寝てんだろ…?
「お、起きたか。具合はどうだ?」
「あれ、入鹿先生?神裂君は?」
「ん?あいつの呪いは既に浄化して、帰したよ。」
「そっか、よかったぁ。私のせいで呪い解けなかったらどうしようかと…」
「あー、まぁそうだな。」
「なんでそんな気まずそうな顔してるんですか?」
「やっぱり…なんも覚えてないのか?」
「そうだった、そうですよ先生。なんで私寝てたんですか?」
あ、目逸らした。
「そ、そのだな…」
かなり言いにくそうな顔をしている…珍しいな、あの入鹿先生が…
「あー、先に謝っとくわ、お前と神裂が付き合ってんのかと思ってな。すまん。」
この時点で既に恥ずかしいのだが、その状態の私に事の顛末を話してくれる。
聞けば聞くほど顔が熱くなり、穴があったら入りたい。むしろ自分で掘って入りたい。
そう思えるほどに恥ずかしくなってくる。
「それ…ほんとですか…?」
「あ、ああ。言っとくが行為までは言ってないからな⁉︎俺もそこは止めたからな⁉︎」
「そういう問題なわけあるかぁ‼︎」
つい怒鳴ってしまった。
「ちょ、待て待て待て、悪かったって、俺のせいだ、すまなかったって‼︎枕で殴るな‼︎」
その後心ゆくまで枕で先生を殴り、怒りを落ち着かせる。
「その…天羽…すまなかった…」
「もう知りませんよ、と言いたい所ですけど…まぁ神裂君助けてくれましたし、そっちの原因は私ですから、それでチャラ…ですかね…」
「そうか、お前そんな心配して…やっぱ結構脈あ…」
「何言ってるんですか?」
「おっと、これは失礼、口が滑ったな。」
全く…許した側からまーた軽口…この先生は本当に…
「そうしたら私、これで帰りますね。」
「あー、いや、ちょっと待ちな。」
「なんですか?」
「お前、そのまま帰る気か?」
「え、はい、そのつもりでしたけど…?」
「それはやめといた方がいいと思うぞ?これ、使いな。」
そう言われて、なぜか濡れタオルと、入院時によく用いられる物で、洗濯せずに済むので重宝される、紙製の下着、そして黒のビニール袋を渡される。
「えっと…?何故これを…?」
「あー…股、触ってみ?」
言われるがまま、制服のスカートの中を触ってみると、生温かい。いや、そりゃ生きた肉体なんだから温かいのはそうなのだが…なんと言うか…
「ぐっちょぐちょ、だろ?」
「先生、口に出さないでくださいよ…意識しちゃうから言わなかったのに…」
涙目で言う私に流石に焦ったのか、ちょっと早口になった入鹿先生が言う。
「そ、そんな気にすんなって。仕方ない事だろ。生理現象だ、生理現象。」
うぅ…それはそうだけど…
「ほれ、ここは外から見えないから、さっさと着替えちまいな。後ろ向いてるから。」
これ、神裂君にバレてないよね…?もうやだ…散々だよ今日…
ぼーっとしてても仕方ないので、手早く体を拭き、着替える。変える前の下着はビニール袋に突っ込んだ。
幸い下着以外は濡れたりしていなかったので、少しほっとしつつ、着替え終えたことを先生に報告する。
「よし、終わったか。じゃ、ちょうどいいし、少し授業受けてけよ。」
「授業…嫌な予感がするんですけど…」
「いや、お前は多分受けたほうがいいと思うぞ?保険体育を。」
「ちょ、何言ってるんですか⁉︎なんでさっきの禁書の件の話からそうなるんです⁉︎」
「そりゃあ、お前の呪いとの親和性が高かったからかな?」
「だから、それとなんの関係があるんです⁉︎」
「あ?自分で呪いにかかっときながら分かってなかったのか。まぁ…あんなんじゃ、それもそうか。」
「ど、どういうことですか…」
「あー、要するにだ、さっき伝えた通り、お前さっき呪いですんごい事になっていた訳だが、本来あの本の呪いはそこまで強力じゃねぇ。」
す、すんごい事……はぁ…恥ずかし…
「……つまり先生は、私が隠してるだけで、実は変態とでも言いたいんですか?」
恨みがましく睨んでおく。が、確かに気になる。
見た目は普通の人と変わらないが、私は天使だ。呪いへの耐性は高いはず、それにも関わらずあそこまで呪いの効果を受けるとは…
「別にそんな事を言いたい訳じゃねえ。あの手の呪いは、元々肉体にあった欲求を増幅させるものが多いんだよ。」
「じゃあ…やっぱり私が変態だと?」
「違う、ただ単に欲求不満だったんじゃねぇのか?と言ってんだ。前喋った時から思ったがお前、別にそういう知識がない訳じゃないだろ?」
「な、なぁっ⁉︎」
「そんな赤くなるな。別に知ってるからといって、やましい物ではないだろ。むしろ大事な知識だ。」
「それは…まぁ…そうですけど…」
「でだ、多分お前、知識はあっても実際にやって発散した事はないんじゃねぇのか?」
「ひぇ⁉︎そ…それは……」
図星である。私も別にそういう知識がない訳じゃないし、興味だってある。
といっても戦時下の天界で、そんな事してる場合じゃないし、私は男子との関わりがほぼ無い。
何気に、男子と仲良くなるのは神裂君が初めてだったし、仲良くなれて嬉しかったのも事実だ。
優しい彼の事が好きなのも…そうなんだろう。
でもそれは、あくまで友達としてであって、恋人に向ける物ではない。
恋人に向ける物にしちゃいけない。
それなのに…神裂君の事を考えると体は熱くなるし、胸は締め付けられるように痛くなる。ダメだと分かっているのに…
「色々あるみたいだし、事細かに聞くつもりはないが、我慢は体に毒だ。時には発散することも大事だぞ?いいな?」
「はい…」
ここは素直に頷いておく。
「素直でよろしい。うし、こうして話してる間に、後遺症とかもない事は確認できたし、もう帰って大丈夫だぞ。」
って、いつの間に⁉︎以外と授業もちゃんとしてたし…
「まさか先生にここまでしっかり授業されるとは思いませんでした。恥ずかしかったですけど。でも、その…ありがとうございます…」
「言うようになったねぇ。よろしいよろしい。とはいえ、呪いは完全に浄化しちまったから、この先暴走したら庇ってやれないけどな。」
ニヤニヤしながら言われると、やっぱりほんとに腹立つな…
「も、もう大丈夫です‼︎」
「おいおい、図星か〜?呪いに託つけて襲おうとか考えるなよ〜?」
「そ、そんなことしませんから‼︎」
ほんとにこの先生は…
「ま、なんかあったら相談にきな。暇だったら聞いてやるよ」
「……わかりました。」
正直この先生を尊敬できる気は全くしないが、なんとなく気を使ってくれている…ような気もする。
いい先生ではあるのだろう。そう思う事にする。
入鹿先生はまだ仕事があると言っていたので、そのまま救急小屋を後にする。
まあ、ほんとに散々だったが少しだけ、入鹿先生と仲良くなれたのは良かったかな?
と、小屋から少し離れた所で後ろから呼び止められる。
「お〜い、天羽〜‼︎」
あれ?この声は…入鹿先生?
後ろを振り返ると、入鹿先生が追っかけてきていた。
「どうしたんですか?そんな急いで。」
「いや、忘れ物。」
「へ?何か私、忘れましたか?その…下着も持ってますし…」
「違う違う、ほれ、これ。」
そういって差し出されたのは…
「禁書…何故これを…?」
「いや、お前、ほっとくとついつい我慢しそうだろ?さっきみたいに誰彼構わず襲う前に発散させてやろうと思ってな?」
「で、本当はなんですか?」
「持ってると怒られそうだからだな。」
「えぇ…」
前言撤回、この先生とはやっぱ仲良くなりたくない…
「冗談だ。実際、さっきみたいな状態になると、記憶は混濁するわ、何やれば良いかわかんなくなって興奮すれど、発散できずに暴走するぞ?」
「でもそれ、呪いせいですし…それに、解けないのはまずいんじゃ?」
「あ?別にあれ、強制的に解除しなくとも、一人遊びで満足できれば自動で解けるぞ?」
「へ…へぇ…」
なんでそんなこと知ってるの…先生…
「ま、そういうわけだ。実際どうにもお前は我慢する癖でも有るみたいだしな。持っといて損は無いだろ。」
「わかりました…気は進まないですが、貰っておきます…」
「よっしゃ、ありがとな、これで怒られずに済むぜ。」
「やっぱそっちが目的ですか‼︎」
まぁ正直、この先生に正面から食ってかかる事程無駄な事もない。
諦めて禁書を受け取り、戻っていく入鹿先生を見送り、帰り道につく。
なんか疲れたな…それにこの先どんな顔して神裂君と話せば良いんだろ…
とりあえずさっさと帰ろっと…




