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終末の喇叭に泣く君へ  作者: 藥籠ヰナリ


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14/22

EP・13 お弁当

《神裂視点》

昨日の夜、天羽さんに話を濁された翌日、学校に向かおうと家を出ると丁度同じタイミングで天羽さんが出てくる。

何かを隠されているのかと思うと少し気まずい気もするが、まずは挨拶をしよう。


「おはよう、天羽さん。天羽さんもこのくらいの時間なんだね。」


「おはよう。神裂君、そうだよ〜私もこの時間、て言っても学校までの距離一緒だからそりゃね?」


「それもそうか、何せ隣だもんね。」


顔を見合わせ笑い合う。天羽さんは気にしてないみたいだし、これ以上僕が気にしても仕方がないかな。二人で登校しながら色々話す。

学校のこと、授業のこと、あと主に天羽さんが話題にしてたけど、肉じゃが。

そんなに美味しかったのかな…?まあ気に入ってもらえたならいいか。

そんなこんなで学校につき、教室に向かう。教室に入っても、転校してきて二日目の人と、今までずっと交流する気すら見せなかった僕だ。挨拶してくる奴もいない。

うーん、天羽さんに迷惑じゃないかこれ?


「あー、天羽さん?」


「なぁに、神裂君?」


「いや、僕とずっと一緒にいると孤立しちゃうんじゃないかと思って。」


と言ったところ、少しむっとした感じで言い返されてしまう。


「いいの、私が一緒に居たいからだもん。」


「ならいいけど…」


「じゃあぼっち同盟ってことで!」


天羽さん…それそんな胸張って言うことじゃない…

と、そこに名前を呼ぶ声が聞こえた。


「おーい、神裂〜‼︎」


周りをみると丁度教室の入り口から入ってくる中山君を見つける。


「おはよう、神裂、それに天羽さん。」


「お、おお、おはよう。」


挨拶され慣れていないので、びっくりしつつも挨拶を返す。隣で天羽さんも挨拶を返しながら、昨日届いたらしい教材の整理をしている。


「何驚いてんだ?」


「いや、何でもない。てか朝早いね?」


「おう、舞赤に勉強教えてもらってんだ。」


「なるほどね、じゃあ図書室に?」


「ああ、神裂は使ったりしないのか?」


「うーん僕はあまり…かな」


「そっか、じゃあまた後でな〜」


そう言って教材を持ちつつ去っていく中山君を見送る。

なるほどね、中山君、舞赤さんが学年トップ層の理由がわかった気がする。

二人とも努力家なんだな。

と、先ほどから横からの圧を無視しきれなくなり話しかける。


「えー、天羽さん?先ほどから非常に圧を感じるのですが…」


「そうかしら?気のせいじゃない?」


「絶対気のせいじゃないよね⁉︎」


「お友達できてよかったね、神裂さん?」


「なんかすいません…でも天羽さんも挨拶返したりしてたよね?」


グッという音が聞こえそうなくらい天羽さんが言葉に詰まる。


「ふ、ふんっ、別に君がぼっちじゃなくなって寂しいとか思ってないんだからねっ‼︎」


あまりにふざけて見えて、ついつい笑ってしまった。


「あー!今笑ったでしょーー‼︎」


「笑ってない笑ってない‼︎」


そうこうするうち、クラスにも人が集まり始めたので茶番を終わらせ、朝のホームルームの準備をする。

と、チャイムの鳴る数秒前に御玉先生が入ってくる。

こうして、普段より少し騒がしくなった僕の日常が始まった。


      ***


午前の授業が終わり、昼休みを告げる鐘がなった。

そういえば、今日は弁当持ってきたし、どっか行って食べよっかな。ふと隣を見ると天羽さんが涙目だ。

うん、うるうるしてるのもカワイイネ!じゃなくて、鐘が鳴ってから今までの短時間で一体何が…?


「あー、天羽さん?どうしたの…?」


「……昼ごはんどうしよう」


「忘れたの?」


「ううん、購買にしようと思ったんだけどね…」


「けど…?」


「私、お金持ってくんの忘れた…」


何となく想像してた忘れ方の斜め上をきた⁉︎せいぜい弁当忘れたくらいかと…


「奢ろうか?」


「う…」


こりゃ相当迷ってるな…


「なら、立て替えくらいにしとく?」


「うあ……それでお願いします…」


「じゃあ購買行こうか?」


「うん…ごめん…」


結局なんだかんだ購買には行く事になるか…まあいいや僕もなんか甘いものでも買ってくるかな。


      ***


購買に着いた。まあ当たり前ながら混んでいる。正直ここまで購買が人気になるなら四年制で学生数も多い訳だから学食とかにすればいいのに…と思う。


「さて、ここが購買だね。天羽さん何食べる?」


「神裂君決めて…立て替えとはいえ君のお金だし、私メニュー知らないし…」


それもそうか、転校二日目だもんな…ん?


「昨日はどうしたの…?」


「昨日はお弁当作ってきたからね…」


「なるほどね、ちなみに好きなものある?これメニュー。」


天羽さんがざっとメニューを見る。すごいな、捕食者みたいな目してる…

食べるの好きなんだな、昨日も肉じゃがすごい美味しそうに頬張ってたし。


「うーん、この中なら…肉じゃが?」


「ブフォェッ‼︎」


「ど、どうしたの…?」


「いや、何でもない何でもない」


危ない危ない、天羽さん、本当に肉じゃが好きなんだな…

昨日の夜食べたばっかなのになぁ、笑いそうになった…


「だったら僕の弁当食べる?今日、昨日の残りの肉じゃが入れてるし。」


「え?」


流石に距離感おかしいか。いやまあ昨日出会って初日で家に呼び、食卓囲んで、過去を話してと色々やってるから今更かな…?


「………の」


「ん?ごめん、聞き取れなかった…」


「ほんとに…いいの?」


その上目遣いは素なのか…?だとしたらなかなか…天羽さん?


「う、うん…とりあえずじゃあ僕のお昼買ってきちゃうね?」


「神裂君…ありがと〜‼︎」


涙ぐんでる天羽さん、かわいい…って何考えてんだ、それにさっさと買いに行かんと僕が昼飯抜きになりかねない。急がないと…


      ***


どうにか昼ご飯確保して当たり前のように屋上へ。


「天羽さん?」


「ふぁい?(はい?)」


「これ校則違反なんだよ?」


「らひひょふ、らいひょふ(だいじょぶ、だいじょぶ)」


「口に僕の肉じゃが詰め込みながら話さない。」


「………」


はて、天羽さんを校則違反常習犯にして良いものか…


「大丈夫だって、神裂君。別に私この学校にな……」


「な…?」


天羽さんがハッとした表情で口を押さえる。


「な……?」


「ごめんごめん、何でもないよ?」


「そう…ならいいけど……」


うーん、昨日濁された事と言い、なんか隠しているような気はするんだけどな…

話したくない事もあるだろうから無理にとは言わないけど…

少しモヤモヤしつつも幸せそうに肉じゃがを食べている姿を眺める。

こうしてみれば、普通の女の子だけれど。

その危うげな瞳はどこか、自分を傷つけることを厭わない瞳で。

そんなことを考えているうちに天羽さんが肉じゃがを食べ終える。

僕は買ってきたサンドイッチを食べ終えているので二人で声を揃え、ご馳走様を言い、少し雑談をする。


「天羽さんはこの学校どう?」


「うーん、勉強は結構難しいけど、楽しいよ。」


「そっか、いいね。ちなみに、こないだ中山君からも言われたけど、異能部とか、部活とかは入らないの?」


「うーん、そうだね…興味はあるけどって感じかな、神裂君は入らないの?入ってみてもいいんじゃない?」


「うん、一旦見学くらいには行ってみようかなとは。せっかく誘われたし、天羽さんも行ってみない?」


「うん、考えてみる…」


少し天羽さんの顔が曇ったような気がしたがそれを確かめる前に予鈴がなった。


「あ、神裂君、チャイムなったよ。教室戻ろ?」


「え、ああ、うん。そしたらお弁当箱貰っちゃおうか?」


「あ、うーん…それなんだけど、ご馳走になった上にそのまま返すのは忍びないから、洗って返すでも良い?」


「弁当箱はいくつか持ってるから全然構わないけど…良いの?」


「うん、明日持ってくるね」


「わかった、よろしくね。」


「うん、そしたら教室戻ろ。」


「そうだね。」


屋上から中に入る扉をくぐり、鍵を掛け直したところで天羽さんが振り返って笑いながら言う。


「そういえば、肉じゃが美味しかったよ!本当にありがとね。」


そう言って教室の方に歩いて行く彼女を僕は引き止められなかった。

その笑顔がどこか歪なものだと感じていながら。

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