第31話 アラフィフ介護士 何とか生き残る
戦いの後、俺たちは全員が酷く消耗していた。
「ローザさん、トシ君が目を覚まさないからって、『死なないで〜!』って半泣きで叫んでたのよ?」
帰還後のささやかな宴で、キョウカさんがニヤニヤしながら、あの時のローザさんをからかっていた。
「……あんたも、最後の回復薬をトシが飲まないからって、無理やり口移しで飲ませてたくせに」
ローザさんの冷たい一言に、キョウカさんは顔を真っ赤にして、俯いてしまった。
そのやりとりを隣で聞いていた俺は、どう返していいか分からず、ただジョッキを煽るしかなかった。
——そう、俺が目を覚ましたとき。
何も言わず、ローザさんが強く抱きついてきた。
顔は見えなかったが、肩越しに嗚咽が耳元で震えていて、見上げると——
膝枕をしてくれていたキョウカさんが、大粒の涙を流して俺を見つめていた。
最後の一撃——あのフランケンシュタイナーで、俺は頭をかなり強打していたらしい。
長時間、意識を失っていたそうだ。
俺も、回復薬を飲んでやっと身体が動くようになった程度。
キョウカさんもローザさんも「大丈夫」と口では言っていたが、身のこなしには力がなく、とても長居できる状態ではなかった。
最低限の確認だけして、三人で互いに手を貸し合いながら砦を後にした。
それほど複雑な構造でもなかったのが、せめてもの救いだった。
外に出たとき、東の空には朝日が昇りかけていた。
夜明けだった。
街道に出て、近くの集落からギルドへ連絡を依頼し、ようやく正式に街へ帰還する事が出来た。
遺跡内を簡単に探索した限りでも、オークたちが集まる際に奪い集めたと思しき物品が山ほど見つかった。
だが、俺たちにはそれらを詳しく確認する余力はなかった。
この世界では、討伐後に得られた物は冒険者に取得権がある。
だが、身元不明の品を勝手に持ち帰って、後から盗品として届け出が出ていた……なんてことになれば面倒だ。
そういったトラブルを避けるためにも、発見物の記録と申告は冒険者の義務となっている。
俺たちは最低限の品としてサイクロプスの角と、その亡骸から放出された親指大の魔石だけを回収した。
「サイクロプスまで居たのか!?」
これをギルドに提出した瞬間、周囲が一気に騒然となった。
後日、ギルド内に捜索隊が結成され、現地へ再調査に向かったそうだ。
発見物の多さから、確認と処理には相応の時間がかかると言う。
そんな話を聞きながら、キョウカさんがぽつりとつぶやいた。
「今は……オークじゃなくて、お年寄り相手に奮闘したいわ……」
それが三人の偽らざる心境だった。




