↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
31/35

第31話 アラフィフ介護士 何とか生き残る

 戦いの後、俺たちは全員が酷く消耗していた。


「ローザさん、トシ君が目を覚まさないからって、『死なないで〜!』って半泣きで叫んでたのよ?」


 帰還後のささやかな宴で、キョウカさんがニヤニヤしながら、あの時のローザさんをからかっていた。


「……あんたも、最後の回復薬をトシが飲まないからって、無理やり口移しで飲ませてたくせに」


 ローザさんの冷たい一言に、キョウカさんは顔を真っ赤にして、俯いてしまった。


 そのやりとりを隣で聞いていた俺は、どう返していいか分からず、ただジョッキを煽るしかなかった。


 ——そう、俺が目を覚ましたとき。

 何も言わず、ローザさんが強く抱きついてきた。


 顔は見えなかったが、肩越しに嗚咽が耳元で震えていて、見上げると——

 膝枕をしてくれていたキョウカさんが、大粒の涙を流して俺を見つめていた。


 最後の一撃——あのフランケンシュタイナーで、俺は頭をかなり強打していたらしい。


 長時間、意識を失っていたそうだ。


 俺も、回復薬を飲んでやっと身体が動くようになった程度。


 キョウカさんもローザさんも「大丈夫」と口では言っていたが、身のこなしには力がなく、とても長居できる状態ではなかった。


 最低限の確認だけして、三人で互いに手を貸し合いながら砦を後にした。


 それほど複雑な構造でもなかったのが、せめてもの救いだった。


 外に出たとき、東の空には朝日が昇りかけていた。

 夜明けだった。


 街道に出て、近くの集落からギルドへ連絡を依頼し、ようやく正式に街へ帰還する事が出来た。


 遺跡内を簡単に探索した限りでも、オークたちが集まる際に奪い集めたと思しき物品が山ほど見つかった。


 だが、俺たちにはそれらを詳しく確認する余力はなかった。


 この世界では、討伐後に得られた物は冒険者に取得権がある。


 だが、身元不明の品を勝手に持ち帰って、後から盗品として届け出が出ていた……なんてことになれば面倒だ。


 そういったトラブルを避けるためにも、発見物の記録と申告は冒険者の義務となっている。


 俺たちは最低限の品としてサイクロプスの角と、その亡骸から放出された親指大の魔石だけを回収した。


 


「サイクロプスまで居たのか!?」


 これをギルドに提出した瞬間、周囲が一気に騒然となった。

 後日、ギルド内に捜索隊が結成され、現地へ再調査に向かったそうだ。


 発見物の多さから、確認と処理には相応の時間がかかると言う。


 そんな話を聞きながら、キョウカさんがぽつりとつぶやいた。


「今は……オークじゃなくて、お年寄り相手に奮闘したいわ……」


 それが三人の偽らざる心境だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。