第24話 アラフィフ介護士 施設改修費を稼ぎに行く①
ファルスの町から王都へ続く街道。その最初の関所へ入る直前、右手に鬱蒼とした森が広がっている。木々の間に続く細い小道を半日ほど歩くと、小さな広場に出る。そこには、ミスティア国成立以前に栄えて滅んだ小都市の遺跡があった。
建築技術が未熟だったのか、都市というより集落跡といった趣きで、複雑な構造の建物は見当たらない。住居跡と思しき窪地が点在し、その奥には粗末な柵に囲まれた、大きな石造りの建物が残っていた。
まるで、かつて俺が勤めていた50人規模の介護施設のようだ。あの施設も、当時は近隣では大きい方だったな。
少し離れた雑木林から砦を観察すると、数人が武器を手に警戒している姿が見える。だがよく目を凝らすと、その体は毛皮に覆われ、上半身は半裸。上唇からは長い牙、鼻はイノシシのように潰れている。
オークだ。恐らく見張りだろう。
俺たちがギルドで受けた討伐依頼の対象でもある。
「観察スキル」で確認すると、以前戦ったゴブリンより明らかに数値が高い。
遺跡のあるこの森は、もともと狩人たちの狩場で、野営地としても使われていたが、ある時からオークが住み着き、森全体を縄張りにしてしまった。
狩人たちは森に入れなくなり、「あいつらを放っておけば森の獣が根こそぎ狩られてしまう!」と冒険者ギルドに訴え、俺たちに討伐依頼が来たのだ。
遺跡はファルスの町からも近く、思ったより早く到着した。太陽は西に傾きかけていたが、まだ日差しは強かった。
「いきなり奇襲ってのは難しいよね?」
俺がキョウカさんに声をかけると、
「うん、無理すれば倒せなくもないけど、中に仲間が潜んでたら危ないからね」
と冷静に答えた。
ミスリル製のワンショルダー胸当て、左手には円形の盾、右手にガントレット。腰には初めて会った時と同じロングソードを下げている。革ズボンにシャツ、スネ当て付きブーツという装備で、シャツの下には薄手の鎖帷子も身に着けているという。
装備の説明を聞いた時、胸が苦しくないのかと、つい余計なことを考えてしまったが、これでも軽装らしく、大掛かりな討伐ではさらに重装備になるとか。
ビキニアーマーはさすがに無いだろう……と思ってギルド関係者に聞いたら、しっかり存在していた。名称こそ違えど、実在していたのだ。
「キョウカさんのビキニアーマー姿……見てみたかったな」
と、不謹慎な妄想に浸っていたその時。
「……養老院の改修、忘れてないでしょうね?」
背後から冷たい声が飛ぶ。ローザさんだった。
手には鉄の杖。ボンテージ風のぴっちりした長袖シャツに、両肩を覆う胸当て。タイトでスリット入りのスカート風装備に、薄手のタイツ、その上から膝上までのブーツ。下手すれば素足より刺激的な出で立ちだ。
「初めての戦闘依頼だし、ちゃんと働かないと」
と俺が応じると、短い作戦会議の末、夜襲を仕掛けることになった。
食事は干し肉と固パンで簡単に済ませ、交代で休憩を取ることに。初めの見張りは俺、キョウカさんとローザさんは仮眠。
三交代制にしようとしたが、ローザさんが「寝てる間にいちゃつかれるのは許せない」と言い出して、二交代に変更された。そんなつもりはなかったが、キョウカさんが真っ赤な顔で「そ、そんなことしません!」と全力で否定した。
……キョウカさん、まさか何か考えてたのか?
美女二人の寝顔を見ながら、俺はそんな事を思っていた。
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ゴブリンは本能と欲望のままに動くが、オークは理性とルールに従って行動する。
体力も戦闘力も上、さらに知性がある分、組織的に攻撃してくる。中には魔術を使う個体もおり、油断したパーティーが全滅した例も少なくない。
「だから慎重に行かないとね」
ローザさんの説明で仮眠から目覚めた俺たちは、再び簡単な確認をする。
夕日が遺跡を照らし、砦の石壁を朱に染めていた――。




