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第三章 43 『覚悟』

 お姉様、本当にいい加減にしてください...かなりの緊急事態ですよこれ。



 メロールはずっと困惑していた。突然現れたこのカエルはお姉様の仕掛けでは無いし、何ならこれは大会にいたあのカエルと同じ個体だと思う。

 会場にこれが現れた時はお姉様が何らかの方法で倒したのだから絶対何か知っているはずなのに、この世に及んでまで情報を隠す理由が分からない。


「き、貴様ァ! 一体なんのつもりだ! ここでこのカエルを食い止めなければ王城は愚か、ここにおられる陛下にまで被害を及ぼす事になるのだぞ! 」


「いや....私の魔法が影響する範囲は零か百の結果にしか出来ませんし、私が戦ったらこの場所全てが塵になりますよ? それに、戦いには向き不向きがあるんです。こういった魔物討伐なら《彗星の神子》の面子が得意なので、今から試しに呼び出してみてはどうでしょう? 彼らは魔物への知識もありますし、何より私と違って基本失敗しませんから」



 確かに私が確認できている魔法を思い返してもお姉様は広範囲に効果のある魔法を好んで使っているイメージがある。けど、この部屋が塵になるって....? そんな危険なものじゃなくて、今まで散々見せてきた変身魔法とか使えばいいのに、なんで出し渋ってるのかな。相手がカエルだから? それとも他に何か狙いが...?



「そんなのすぐに連れてこれるかっ! 第一、あの紙の件といい、大会でのカエル討伐実績といい、貴様は絶対に何かを知ってて隠しているはずだ!せめて討伐方法だけでも教えろ! 」


「私は全ての出来事が分かるようなスーパーハイスペ魔導師じゃないのにぃ...うーん.....カエルは基本的に舌に神経が集まっているので、もしかしたら舌を刺せば大きく弱体化するかもしれません。カエルは何かを食べる為には舌がないと物を吸収出来ない体の仕組みをしていますから」


 その言葉を聞いて、カエルの動きを抑えていた騎士達が動き出す。部屋に運んできた適当な食料を餌にカエルの舌を何とか引き出す事に成功し、舌の先端の一部を何とか切り落とした。その痛みからなのかは分からないが、かなりの声量を出しながらカエルが悲鳴を上げている。


「やったか!? 」


 誰かがそのような声を上げ、カエルが藻掻き苦しむ姿を見て誰もが安心する。そして周りで戦っていた者達が相手の体に追加で攻撃を加えた。さっきよりは確実にダメージが入っているように思える。


 ――だが、カエルは落ち着くどころか、むしろ体色を赤色に変化させて動きが更に激しくなった。


「まさか....相手が怒っているのか? 」


「あれぇ....おっかしいなぁ。普通のカエルならこれで動けなくなるはずなのに...」


 念のためお姉様の顔を見るが、彼女の顔は対処法を伝える前と同じく何も考えてなさそうな顔だ。その顔を見ていると本当に何も知らないように見える。そのせいで自分の中にある定義が分からなくなってきた。



 お姉様は絶対に何か知ってるはず、けどさっきのヒントは正解じゃない...でも事件は一度解決してみせたし――これは一体どういう事なんですか?



 そんな変な悩み事に悩まされていると、自分を今最も悩ませている原因であるロジェお姉様が自分の元に向かって歩いてきた。ロッキーの怒号を振り払ってまでもこっちに来るなんて今度は何をするつもりなんだろう....


 すると、お姉様が真面目な顔をしながら私の耳元でこう言った。


「メル、あとはお願いね? あなたが死なないよう私も全力でサポートしてあげるから」


「.....へ? お姉様、それはどういう――」


 ロジェは私の言葉が言い終わる前に口を開いた。


「ロッキーさん、メロールとパステル皇帝陛下の事は私に任せてください! 二人の事は私が死んでも守り切りますので、皆さんは前線に出るようお願いします。こちらから魔法で援護射撃しますので!! 」



 ....? お姉様、さっき自ら戦わないって言いませんでしたっけ。四季彩の森に行った時も思いましたけど本当に何が狙いで現場を混乱させるような発言ばかりするのか私には理解が出来ません...あと、私に向かって『お願い』って言ってたのはどういう意味なんだろう。



「....ちっ。この襲撃が終わったらあとでたんまりと話を聞かせて貰うからなッ! 」


 ロッキーが半ば捨て台詞のようなものを吐きながらカエルを止めに行った。その動きと同時に前線の騎士達が一斉に動き出す。


「んー....次は相手の足を固定してください。一瞬動きを止めてくれればこちらで相手を固めるのでお願いします!」


 さっきまで統率の取れていた陣形は、今や半ば勢い任せだった。お姉様の出す指示がめちゃくちゃなせいなのか、はたまたカエルが予想以上に暴れるからなのかは、戦闘初心者のメロールには分からない。だけどこれだけは言える。



 ――このカエルは...きっと只者じゃない。



 同じ結論に辿り着いたのか、お父様ことパルデル皇帝陛下が質問をした。


「おい、ロジェ。お前はこのカエルの対処法を知っているのか? 」


「えっ.....とぉ、一応幾つかは思いついてます。ただ上手く魔法が作用するかは分からないので、やってみるしかないですねー....あははは....」


 赤く変色したカエルは切り落とされた舌の痛みを忘れたかのように、城内の床を叩き割りながら暴れ回っている。その巨体が動く度に空気が震え、壁が軋んだ。


 そして暫くすると、カエルの動きが一瞬止まる。その瞬間を待っていましたと言わんばかりに、髪の先端が薄い紫色に光っているロジェお姉様が腕を伸ばした瞬間、カエルの皮膚の一部が黒ずんでいく。恐らくこれはお姉様の魔法の影響だ。


「……錆ついた? 」


 金属でもないのに。確かに魔法を当てた箇所だけが朽ちたように変質していた。その光景を見て周囲がどよめき、私も思わず息を呑む。


「やった....のか....? 」


「これは驚いた。見れば見るほどに氷結魔法とはまた違った魔法だというのがよく分かる。貴公の魔法は本当に興味深い....」


「お、お姉様....まさか、あのカエルを一人で倒したのですか!? 」


「いや....私は固めただけだから死んではないわ。けど、これで少しは時間を稼げるはずよ。少なくともこの場所が壊れるよりマシってとこね」


「.....確かにそれもそうですね。でも、ここからどうするのですか? このまま固まってるカエルを壊したりしたら、そのまま化けて出ちゃいますよね....? 」


「メル....あんた意外とグロい事を平気で言うのね。けどこの魔法はそんな便利じゃないの。やった事ないから分かんないけど、壊したらそこを始点として体が再生して復活するかもしれない。だからそんな野蛮な事は考えちゃダメよ。あくまでもこれは時間稼ぎだから」



 その方法はダメなんだ.....じゃあどうすればこのカエルは――



 そんな事を深く考え込んでいるとすぐさま戦況は動いた。黒ずんだ部分が音もなく剥がれ落ちていく。そして次の瞬間、カエルの体表が再び赤く輝き、魔力障壁と思われるカエルを纏っていた謎の膜のようなものが以前よりも厚く形成された。


「……あれ? 」


 ロジェお姉様の、間の抜けた声をメロールは捉える。この声は今まで聞いた中でもトップクラスに情けないと言えるような声だった。


「えーっと...これ、相手の魔法耐性が高すぎてまともな時間稼ぎにならなさそうですね」


「そ、そんな...お姉様の魔法でも無理だなんて、どうする事も出来ないじゃないですか」



 だが、お姉様はなぜかこの状況でずっと手元に持っていた小さな袋の中身を探っていた。一体何をするつもりなんだろう。きっと何かこの状況を打開する良い方法が――



「陛下、皇女様! 今すぐそこを離れてください! 」


 そんな事を考えているとロッキーの声が突然聞こえたので、メロールはお父様に連れられるがままにその場を即座に離れる。だが、ロジェお姉様は逃げる事もせず、まるで状況を分かっていないかのようにその場で呑気に袋から取り出したサンドウィッチを食べていた。


そしてカエルは一気にロジェお姉様との距離を詰め、長い舌が床を打って空を裂く。


「ふぇっ!? ばにこれ!!! 」


 ロジェお姉様の間抜けな声が部屋に響き渡ると同時にお姉様の体があっさりと宙に浮き、そのまま頭から腰付近まで捕食された。


「....え、お、お姉様? えっ? ...ん? 」



 お姉様が食わ.....れた? しかも反撃すらもしていなかったように見えたけど...なんで?



「ロジェ殿が食われた...? おい、大丈夫か! まだ意識はあるか!? 生きてるなら返事をしろ! 」


 お姉様がカエルに捕食された事で相手の動きは完全に止まった。だが、流石にこの場にいる全員が彼女を身代わりにして逃げるほど冷酷な人じゃないのだろう。さっきまで怒っていたロッキーさんが心配そうな声を上げるが、お姉様の声ははっきりと聞こえない。


だが足は元気に動いて暴れているので多分すぐには消化されていないのが分かった。それを見て少し安心したが、彼女が元気であればこの隙にカエルを上手く仕留めてくれるかもしれない。


『.....い.....える? .....だ...! 』


 お姉様の声がうっすら聞こえるがいまいちよく聞き取れない。何とか耳を澄ますが、まだ本格的な消化活動がされてない事だけは分かる。いつものような煽りかもしれないけど、何か重要なメッセージな可能性がある以上は何としてでも聞き取らなければならない。


『....な.......だ.....ん』


「待て。全員一度静かにしろ。何かが聞こえる。彼女からのメッセージかもしれん」


『.......きつ....あ.....めん....を....つけ....え! 』



 きつ....めんだけじゃなくてつけ――はっ、まさか....それって!!!



 メロールは微かに聞こえるお姉様の言葉から、何を言われているのか察した。

 恐らくこれは『例の狐のお面』を付けて戦えという伝言だ。さっきお姉様は「私に任せる」と言っていたし、何度も『きつ』とか『めん』とか意味深な言葉を言っているのが何よりの証拠だ。



 あの時、特に理由を説明せずにこの赤い狐の仮面を渡された理由が今なら分かる気がする。きっとこうなる事をお姉様は分かっていたんだ。だから私にこの仮面を授けてくれた。


︎︎―――全ては私の成長度合いをお父様の目の前で披露する為に...!



「メロール....急に赤い仮面なんて取り出してどうした。何をするつもりだ? 」


「お父様....私、お姉様を今から助けに行きます。きっとこれはお姉様が私の為に用意してくれた魔物なんです。だから....この騒動のケジメくらい私がつけます! 」


「なん...だと? おい、正気か? お前がどうしてもやるってなら止めはしないが、絶対に無茶だけはするんじゃないぞ。その予想が正しいとすれば、これは彼女の悪い癖のだ。今のお前がそれを無理してまで受ける必要はない」


 そもそもこの騒ぎを起こしたのは、服のポケットにカエルが居た事に気付かなかった私の不注意のせいだ。そうである以上は自分に出来ることならなんだってやりたい。

︎︎仮にカエルを倒せなくても、食われかけてるお姉様を助ける事が出来たらそれで十分だ。その身さえ助ければきっとお姉様ならこの場で暴れるカエルですらも何とかしてくれると思う。


「そんな事、私は最初から重々承知してます」


「.....」


「だけど、ここまで活躍の場の御膳立てをされているのに、私がお姉様の課す課題を受けない理由がないのです! 」



 お姉様、私が今すぐ助けに行きますし、これまでの稽古の真骨頂をこの場で盛大に見せつけてあげます!



 メロールはそう決意し、仮面を装着すると今まで通り狐の耳が生えてくる。だが今回は背中中心に何か変わった重みを感じる。



 あれ? 体が前の時よりも軽いし.....今までとは何かが明らかに違う気がする。



△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼



 ――メロールが覚悟を決める少し前、カエルの口の中では....



「カエルの中って思ったより暖かいんだなぁ....多分本当ならめっちゃ臭いんだろうけど.『クリアクリーン』のおかげで全然苦痛に感じないし、快適だぁ.....」


 ロジェは一人、カエルの口の中で快適になりながら諦観していた。薬品鞄(ドラッグバック)が使えれば幾らでも脱出出来る手段はあったのだが、腰付近までカエルの口で挟まれているし、体には舌が巻き付いている以上は鞄に触れる事が出来ない。


オマケにこのカエルは魔法耐性高すぎるせいで大して魔法も効かないので、所謂詰みというやつである。現在ロジェが取れる手段はほとんどないのであった。


「幸いにも手は使えるけど、もう既に体全体がねちょねちょしてるから最悪だよぉ...ここから動かすとカエルの粘液が更に凄い事になりそうだし...とりあえずこの場で叫んだらこのカエルの口から解放してくれたりしないかな」


 運が良いのか悪いのかは知らないが、このカエルはすぐに私を飲み込む気はないらしい。舌でじっくり舐め回すとか、もぐもぐしながら飲み込むと言った行動はされていないのはとてもありがたいけど、いつそういった捕食行為が始まるか分からないので、さっさと解放して頂きたい。


「すうーーー....おー『い』! 聞こ『える』? 私『だ』よ。わーたーしー!」


 分かっていた事だが、カエルに変化があるわけでも、外から声が聞こえるわけでもない。だが、今のロジェは何も出来ない以上、只管外に助けを求めるしか選択肢がないのだ。誰でもいい。誰か一人に自分の声さえ聞こえればこの状況は何とでもなる気がする。


「ホントに『な』にも聞こえないのー? 『メ』ルでもロッキーさんでも誰でもいい『ん』だけどー」



 というかこんな大きな声を出してて大丈夫なのかな。一応ここってカエルの口の中だし、大声出して変にカエルを刺激しなきゃ良いんだけど....



「おーい誰―――!? 」


 引き続き大声で叫ぼうとしたその時だった。あまりの大声にカエルが御立腹なのかは知らないが、舌で捕まえていたロジェの事を一段ときつく縛ってくる。


「え、ちょっと待って、『きつ』いきついきつい! 『あ』、ご『めん』って!!! もう『お』おきな声を出したりしないから! 何か傷『つけ』たってんなら謝るから! 勘弁してえええ!!! 」



 まずい...このカエル、本気で私の事を舌で潰しに来てる。多少の痛みや無酸素空間は、魔力を全力で振り絞れば一時的に誤魔化せるとしても、長時間この状態だと本当に私が死にかねないのよ! !



「ぐぬぬ..こ、こうなれば....エ、エア....ス...トール」


 ロジェはなんとか右腕を伸ばし、自分の九割の体重を代償に風を起こす魔法を使う。正直風なんて起こす気は無いが、少しでも自身の体を軽くすれば潰れるまでの時間稼ぎが出来ると判断した。

︎︎︎︎もしかしたら風を内部から起こした事でこのカエルさんがくしゃみをしてくれれば脱出出来るかもしれない可能性にも掛けている。


「お、おぉぉ...」


 体重が紙切れのように軽くなった事で、するりと舌の拘束から抜け出し、腰から上の部分の体をうまく使って回転して大きな竜巻を内部から起こす。そして動ける範囲で周りを見渡すが――風のせいで何も見えなかった。幸いにも腰は固定されているので喉の奥のほうに飛ばされることはないと思うけど、時間が経てばこれもどうなるか分からないので少し心配だ。


「ふぅ...酸欠で視界が一瞬暗転するし、このまま体が潰れちゃうかと思ったのよ。この私の死因がカエルの舌で窒息死とかいう最高に恥ずかしい死に方なんて絶対の絶対に認めるもんですか! 」


 とりあえず周りを見渡すが、特に使えそうなものは案の定何も無さそうだ。さっきみたいにここから大声を出してもいいのだが、同じ事すると今度は本当に飲み込まれる可能性がある以上はそれをやる気にならない。


「......というか大会前の露店巡り以来何も食べてないから、ちょっとお腹空いてきたわね。家に帰ったら持ち帰ったシュークリームを食べる予定だったのに全部カエルに食われるし、小腹を少しでも満たす為に持ってきてたカツサンドは途中で落とすしで、今日散々過ぎない? 」



 厄介事に巻き込まれるのはいつもの事だとしても、文面に起こせば色々と散々すぎる。神様って全然平等じゃないし、嫌になっちゃうわねホント。



「えーっと....確か保存の魔法もかけたし、容器に私特製のカツサンドを胸ポケットに突っ込んできたんだけど...食べられる前どこにしたったっけなぁ」


 カエルの舌で拘束されていたせいで、阻害ローブがねちょねちょしていて気分が最悪になるが、何とか気合いで色々なポケットを漁る。そして探すこと数分、ポケットに入れていた小さな容器を発見する。


「よし、やっと見つけたわ! どうせ暫くは出られないんだし、体勢が終わってるけどここは一度食べ物でも食べて落ち着くべきよ! 」



 そう言ってロジェは何とか体を上手く使いつつカツサンドを口にする。あの例のフライパンを使っているからなのかは分からないが、とても美味しく感じる。カエルの口の中での食事ってのを除けば最高の気分だ....てか、こんな場所で食事なんて普通出来ないから結構貴重な体験なのでは...? もしかして私、とても運が良いのかしら。



 そんな事を考えながらカツサンドを味わって食べていると、突然大きな揺れが発生する。


「ふぇっ!? ふぁになに? 」


 突然カエルの中で起きた揺れは中々に大きなものだった。一発、また一発と大きな揺れが発生するのでもはや体勢を維持するだけでも至難の業だ。



 もしかして、ロッキーさん達が弱点でも見つけてカエルに攻撃してくれてるのかな....そうだと良いなぁ。こんな変な空間から解放されたいし、早くぶっ倒してくれないかな...あと関係ないけどカツサンドが美味しい。



 何とか感じる大きな揺れに耐えつつ、カツサンドを食べていると、突如として過去一番の大きな揺れが発生する。


「あ.....」


 その揺れと同時にロジェはカツサンドをカエルの喉の奥まで落としてしまった。急いで浮遊魔法をかけようにも揺れがあるせいで中々魔法の標準が定まらない。


「あぁ....私のカツサンドが。あれ、今日持ってきてた最後の一つだったのにぃ....」


 そんな事を考えていた次の瞬間、カエルの喉奥で今までとは何かが違う変な震えが走った。何故かは分からないが、ロジェの体に少しの寒気が走る。


「....なんか嫌な予感がするわね。体が無駄に軽いおかげでこの謎の揺れには慣れてきたけど、変な事が起きなきゃなんでもいっか...」


 そして少しするとロジェの嫌な予感は的中した。何故なのかは分からないが、突然カエルの喉の奥の方が強く光り始め、即座にロジェは外へと吐き出される。


「え? ちょっとおおおお!? 急に吐き出すなんて聞いてないんですけどおおおおお!!! 」


 まだロジェは魔法の効果が継続中なので紙切れのようにゆらゆらと揺れながら地面に着地する。紙のように目の前の景色が揺れるので酔いそうになるが、何とか周りの景色を視界に捉える。


︎︎すると何故か皇帝を除く、ロッキーさんや周りで戦っていた騎士達は全員が地面に倒れ、疲労困憊のように見えた。


「あれ....? ロッキーさん達何があったんですか?」


「........はぁ、もう貴様には......頼らん。あんな指示を出すなんて...一体、なんのつもり....だ? 」



 いやそんな事聞かれましても――私、カエルに食べられてたから何も知らないよ?



 少しすると、突然風のように自分の目の前に現れた人影を捉え、ロジェも何とか戦闘態勢を整える。だが、その対戦相手は見知った顔だった。


「え、メルじゃない。あんた一体何してんのよ」


「......」



 メロールは何も答えてくれなかった。もしかしたら私が抵抗せずにカエルに食べられたせいで、愛想が尽かされてしまったのだろうか? だとしたらお姉様はとても悲しいよ....



「えーっと....その、あなた自慢のお姉様が何も出来ずに食べられちゃってごめんね? だから――」


 言葉を最後まで言わさずにメロールの掌底がロジェの真隣を高速で突き抜けていく。その状況を見て、流石のロジェも違和感を抱いた。



 あれ? メロールが狐耳だけじゃなくて尻尾まで生やして前よりもずっと可愛くなっている。こんなかわいい衣装を私に見せつけてくるだなんて――もしかしてコスプレでもしてるのかな?

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