0027
藤堂さんの雰囲気が変わったと思ったらさ。
「武道さん。
アンタぁ、ウチに来る気はないかね?」だとよ。
いきなりヘッドハンティングかよっ!
「っすぅいやぁ!
ダメっすぅ!
ダメっすよっ!
先輩抜けたら、ウチのチーム壊滅っすからぁ!」
おお、後輩から頼られるのは、良いものだ。
「それに」
ん?それに?
「先輩んとこ、遊びに行き難くなるっす!」
それが本音かぁっ!
そんな話しをしていると、和風ドレッシングが掛かった生サラダと煮染めがな。
へんなチョイスだな?
煮染めも美味いが、サラダがな。
野菜が新鮮で質が良いこともあるんだが、このドレッシングがさ。
「青紫蘇に酢醤油、胡麻ペーストも少し。
山椒に七味と和芥子?
分量が絶妙だが…他にも入ってるな。
う〜ん、分からん、分からんが…美味いな、これ」
売ってたらさ、買いたいレベルだぞ!っと。
いや、煮染めも美味い、美味いんだがな。
あちらは基本を外したアレンジは厳しい。
っか、変なアレンジをした煮染めなんざぁ食いたく無いわっ!
ここの煮染めは絶品!
確かに美味い!
良い仕事をしているし、料亭クラスの味だと言えるだろう。
だからこそ、新鮮味はない。
いや、要らないがな。
だがドレッシングはカクテル同様にな、色々とアレンジが利く。
だからな、新鮮な驚きや感動もな。
ホッとする味の煮染めとは、対極と言えるだろう。
って、なんで、このチョイス?
って思ってたらな。
「次、来ましたよ」ってな。
お次は…沢蟹、沢海老と殻と皮を剥いた銀杏の素揚げと…
鳥の唐揚げと鳥天に軟骨唐揚げ。
なんかさ。
「2種類、出て来てね?」っと、思わずな。
したらな。
「社長の嗜好と、アタシらの好みが合わないんですよねぇ。
アタシらはさぁ、もっと洋風が良いですから」
そう桃瀬さんがね。
「ふむ、そちらも悪くは無い。
無いんだがなぁ。
コチラの味の方が、ホッとするってぇ感じでなぁ」
「社長…爺むさいです」
「やかましいわっ!」
「でぇ、武道さんは、どちらが好みなんです?」
そう櫻井さんが尋ねて来るんだが…
「ふむ。
どちらか一方っとなれば、和食か。
だが、俺はさ、両方とも食べたいな」
どちらも美味いんだしさ、無理に選ばなくて良くね?
「まぁ、それでも良かろうよ。
でぇ、さっきの件。
考えちゃぁくれないかい?」
誤魔化せてぇ、無かった、だ、とぉ!
「それって、ヘッドハンティングのこと、ですよね?」
「ああ」
「申し訳ないですか、仲間を置いては無理ですね」
ハッキリ言って、会社には未練なんざぁ無い。
だが、共に仕事をしている仲間を放り出せんしな。
「そうかね。
まぁ、気が変わったら連絡して貰えるかね」
そう藤堂さんは告げると、名刺を。
まっ、連絡することはあるまいがな。
っかさぁ、藤堂さんが提示して来た年収がな、今の3倍って…
いや逆にな、俺の年収聞いて絶句してたよ。
まぁな、一般的な年収っても、業種を考慮せずにっう枕言葉が付く訳で。
俺たちの業種で考えるとさ、かなりの安いかんなぁ。
ただ福利厚生は、しっかりしてるんだよなぁ。
保養施設も充実してるしさ。
使ったこと、ないけどなっ!




