0026
座敷は2階だったんだがな、思った以上に広くて立派な造りにビックリしたよ。
「ここの内装は、ウチの会社が発注して造らせた物でな。
顧客の接待や折衝にも使用してんだわ。
ま、滅多に無いがな」
なぁ〜るほどね、だから豪勢な造りな訳ね。
豪勢ってもな、派手な訳ではない。
良い建材で、丁寧に仕上げられたことが分かる趣きのある内装でな、寛げる空間なんだよ。
飯てぇのはな、美味いだけじゃダメなんだわ。
店員の態度が最悪とか、店がボロボロで汚かったりしたらな、料理が美味くても美味さ激減てな。
その点、この店の趣きは寛げる。
店員の接客も良いな。
これで料理が美味ければ、文句なしなんだがな。
で、お通しが…
「わけぎっと、蛸の辛子味噌和え、かな?」
また定番…んっ?
「いや、これ…ノビルか??
わけぎと違って、この風味が…うん、ポン酒だな。
ビールでなく日本酒が出てきたのは、これのためか」
「ビールは悪くは無いが…何でもかんでもビールてぇのは、嫌いでね。
キリッと冷えた冷酒も悪くはあるまい?」
確かに。
何も考えず、とりビーしてたが…考えを改めるのも…
「いや、藤堂さん。
確かに、冷酒は良い。
蛸ノビルの辛子味噌和えとの相性も抜群だな。
お通しの突き出しに合わせたチョイスってぇのも、分かる、分かるんだが…
初夏の、この季節。
喉がさ、乾っからに乾いてる時に飲む、キンキンに冷えたビールぅっ!
この至福が分からん訳では、あるまい?」
「そうですよ、社長!
だから、生!来ましたよー」
おっ、桃瀬さん、気が利くねぇ。
これ、これ。
このキンキンに冷えたビールぅ!
渇いた喉にさ、ゴキュ、ゴキュゴキュ、ゴキュュってな。
ビールはな、喉で味わうってな!
っぷぅふぁー
もう一杯!
「うわぁ〜
良い飲み振りぃ。
負けられません!」
いや櫻井さん?
何と競ってんの?
えっ俺と?
いや、競わんが?
「いや、ノリ悪いですね?」ってな。
「あのな、櫻井さん。
俺はさ、そんなに若くないのっ!
ノリと勢いで飲む若人と、一緒にしないで貰える?」
「先輩、爺むさいっす」
「じゃがましい!
仕事が終わった後の癒し、自分へのご褒美だっ!
俺と同じくらい仕事してから言えっ!」ったらな。
「無理っす!
あんだけ仕事熟す先輩が可笑しいんっす!
っか、先輩のフォロー抜けたら、ウチのチームはボロボロっすよ!」
てな遣り取りを後輩としてるとだな。
「ほぅ、武道さんは、優秀なんですな。
して、ご職業は?」てなことをさ、藤堂さんが訊いてくるんだが…なんだろね?
だからさ、当たり障りの無い範囲で教えたんだが…
「なんとっ!
同業者、しかも競合会社の方でしたか!
この間、XXX会社のプロジェクトを持って行かれたのは、痛かったですわ。
しかし、無茶な工期だと思ったのに、キッチリと仕上げて納品されたとか。
脱帽ですな」ってことをな。
したら、後輩が余計なことを。
「っす!
それ、僕達が仕上げた仕事っす。
昨日、打ち上げだったっすよ」ってな。
それを聞いた藤堂さんの目がな、なんだかギラリって光った気が…なんだぁ?




