↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/8

◆008◆ボタンの秘密は【警告】の対象

「—— 落ち着いたか?」


 滝から流れる水路で、モクジとエヌが魚を探している所に現れたテツヒトに対して、モクジは視線も送らずに訪ねる。


「それよりも、聞きたい事は無いか?」


 突然に、こんな世界に連れて来られたモクジ達に対して、テツヒトは少しでも自分の知っている情報を与えたいと思ったのだが——


「ん? 特にねーなー…… あッ! エヌ! そっち行ったぞ!」


「行ったって言われても……私……」


 ブスッ!と、テツヒトが側に落ちていた木の枝で魚を突き刺した。


「ありがとう……です……」


「サンキュー! 助かったよ」


 ブスッ! ドス! ドドドス! ドス!


「お、お、おう…… スゲーなおまえ……」


 緊張感のある世界の筈だった。

 命を懸けてやって来た世界の筈であった。

 それにも関わらず、目の前の少年は単純に水路で魚を取る事を楽しんでいて——


 言葉では形容し難い、複雑な感情が溢れて来て。その気持ちを落ち着かせる様に、テツヒトは大量の魚を木の枝で撃ち抜いた。


「これで良いか?」


「怒って……ます?」


「怒ってはない」


「私は…… 気になりますよ、この世界の事」


 エヌは、水に足を付けたまま動けない様子で、必死にテツヒトを見つめて訴え掛ける。『私は、モクジとは違う——』と。


「よし! 飯にするぞ! もうすぐ宝箱もポップすると思うからよ」


 そんな事を気にもせずに、魚をぶら下げて火を焚いていた拠点へと戻るモクジに対して不満を募らせて、エヌは何度も袖を引いた。


「モクジさん…… モクジさん……」


「待て待て、焼いたらちゃんとおまえにもやるから——」


「そんな事を言ってるんじゃ無くてですね……」


   ボ   希   あ

   タ   望   な

   ン   す   た

   を   る   は

   押   場   異

   し   合   世

   て   は   界

   下   2   に

   さ   0   転

   い   0   生

   ↓   秒   し

   ↓   以   ま

   ↓   内   す

   ↓   に   か

   ♡       ?


「私…… どうなったの?」


198


197


196


 エヌは、初めての死を終えて、再び個室に戻って来ていた。


 それまでの一連の事を思い出す。


 通路へと出て、初めて出会ったスライムに近付いた途端に酸を掛けられて殺される。


 痛くて苦しい記憶。


 それでも、エヌはもう一度ボタンを押して外に出る。


ガゴン!!


 外に出たエヌは、分けも分からない世界で必死に抗っていた。

 殺された数は誰よりも多く—— その為に得たスキルの数はモクジを遥かに凌駕するのだが、倒したスライムの数が少ない為にレベルは未だに【レベル3】で。


 それでも【泉の守護者】を凌駕して、セーフポイントへと辿り着いた。


手に入れたスキルは——

【痛覚無効Lv10】

【酸耐性Lv10】

【斬撃耐性Lv10】

【空腹耐性Lv10】

【打撃耐性Lv10】

【恐怖耐性Lv10】

【苦痛耐性Lv10】

【自動回復Lv5】

【自動修復Lv3】

【自動回避Lv1】

【感知Lv5】

【索敵Lv5】

【望遠Lv2】

【隠密Lv1】


称号【慈母】

称号効果▶︎▶︎▶︎

【自動回復】【自動修復】獲得—— パーティーメンバーにも効果が及ぶ


 【自動回避】に関しては、スライムを攻撃出来ずに逃げ続けていたら【回避Lv10】が進化して【自動】が付いたと言うのだから、もしもこの場にケイトが居たらどんな反応をしたのだろうかと—— 笑いながらモクジは、自分の事の様に嬉しそうにテツヒトへ説明している。


 モクジは、ゴブリンに殺されて以降、只管に素手で【泉の守護者】に挑んでいた。

 その結果得られたスキルは【石割り】と、上がったレベルは15で、結局はケイトのレベルに追い付いただけなのだが、それに関しても、兎に角嬉しそうにテツヒトに話して聞かせた。


「モクジさん…… テツヒトさんの話しを聞きましょう!」


 自分のペースを崩さないモクジに対して、テツヒトは大人の余裕で、その話しを聞いていた。

 本当は、無理矢理にでも黙らせて、先を急ぎたかったのだが、これから先のエリアでは必ずモクジとエヌと、残り二人の協力が必要な事を分かっていたからだ。


 そして、ここに居る人々がどの様な状況で、何を考え、何を感じているのか、今後の攻略を有利に進める為にも観察していた。


「私達は…… 死んだのですか?」


「今際の際いまわのきわ—— そんな所だ」


「どういう事だ?」


 モクジも、この世界に来た時には色々な疑問が浮かんではいた。しかし、そんな事を考えても意味が無いと、途中からこの世界を楽しむ事に切り替えた。

 もしも、異世界だったら、それを楽しめば良いし、あの世でも死なないんだったら怖くは無い。

 しかし、テツヒトはこの世界の事を知っているという。正直、モクジは真実など知りたくは無かった。それが、恐ろしい物である様な気がしていたから。


「この世界を攻略出来れば生き返るチャンスはあるが、諦めれば死ぬ。それだけの事だ——」


「諦めなかったら死なないんですか?」


「期限があるんだ—— それを過ぎれば破棄される」


「破棄って、誰にだ? 神様か?」


「そうだな、神だな」


————警告————


 テツヒトが『神』という単語を出した直後に、上空に赤い文字で【警告】の二文字が浮かび上がり、その後次々に文字が流れた。


————警告————


————警告————


————警告————


————警告————


————警告————


「そういう事だ。俺から言えるのはここまでの様だが、生きてここから出たければ俺の事を信じてくれ」


————警告————


————警告————


「そうだよな。これじゃあ、ゲシュタルト崩壊起こすよな」


————警告————


 意味の分からない返しをするモクジに対して、エヌが首を傾げたタイミングで警告の文字は消えた。


「どうする? あと二人待つか?」


「いーや。先に二人行ってるんだ。だから、追いかけた方が良いと思ってる」


 それから、モクジは二人にケイトとジルの事を話した。自分が最後どうやって死んだのかも。


「成る程な—— 耐久値か。それと、この先で死ぬと、また誰かを待つ必要があるという事か」


「どうしよう…… 私死んだら……」


「大丈夫だ! エヌは死なせねーよ」


 エヌがボタンに手を置いたままに、不安な様子でいると、モクジが笑って見せて先にボタンを押した。


 それに続く形でテツヒトがボタンを押す。


「ありがとう——」


 最後にエヌがボタンを押すと扉が開いた。


 その先のエリアは、一度モクジが死んで戻ってしまった、ゴブリンが居るエリアだ。

 ケイトとジルがセーフポイントへ戻って来ないという事は、さらにその先に向かっているのだろうという事は予測していて。


「次こそは、絶対あの緑野郎をぶっ殺す!」


 気合いを入れて、拳を突き出した先にエヌはゴブリンを目視する。


スキル————

【感知Lv5】

【索敵Lv5】

【望遠Lv2】


 スライムから逃げ惑い手に入れたエヌのスキルが早速効果を発揮する。

 エヌはスキルで得た情報—— ゴブリンの数と武器を知らせる。


「この先に全部で12体です。武器は【鉄の剣】が二本と【鉄の槍】が一本。他は【木の剣】と【木の盾】を装備してます」


「どうだ? テツヒト。行けそうか?」


「あぁ。問題ないだろう」


 エヌに案内され、途中ポップアップするスライムを軽く蹴散らしながら、真っ直ぐにゴブリンの元へと向かった。

 軽く走る速度で約10分—— それだけ離れた距離を視界に捉えていたエヌのスキルの凄さを感じながら、感謝の念を込めてモクジが12体のゴブリンの元へと突っ込んだ。


「あいつ…… 折角の作戦を——」


「多分モクジさんは、良くも悪くも、あんな人なんですよ」


 すぐそこには、圧倒的に数で勝るゴブリンの群れがいるのに、エヌはその時初めて笑って見せて—— 「そうだな」と、テツヒトは呟いて笑い返すと拳を握り締めて、モクジの後を追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。